139神猫 ミーちゃん、神猫商会の代表が板についてきた。

 餅つきをする為に宿の庭を支配人さんにお借りしました。


 厨房でもち米を蒸かしてもらってる間に準備をする。



「何するにゃ?」


「餅つきだよ」


「餅つきにゃ?」


「そう、餅つき。絶対にペロは喜ぶと確信しているね」


「本当にゃ! 楽しみにゃ!」



 庭にテーブルを用意してもらい、片栗粉、餡子、きな粉、黒砂糖入り醤油も用意した。杵と臼、水の準備も万端。つき手はアレックスさんにやり方を説明してお願いし、俺は餅の手返しをする事にする。小さい頃、ばーちゃんちで見たことがあるだけだけど、まあなんとかなるでしょう。


 アレックスさんにはくれぐれも、本気でやらないでねと言っておいたよ……。


 料理長さん自ら蒸しあがったもち米を持って来てくれ、興味がおおありのご様子。臼にもち米を入れて最初は俺が杵でこねて見せる。だいぶ餅っぽくなってきた。


 さて、始めますか。アレックスさんにゆっくりお願いしますと言ってつき始めてもらう。正直、怖い。目の前で杵が振り降ろされ餅をついていく、何度か手水で手を濡らし餅を返していく。もち米のつぶつぶが無くなり艶々の餅に変わってくるのがわかる。


 アレックスさんに終わりと言って、片栗粉をまぶしたテーブルに載せて、小さくちぎって皿に載せていく。ミーちゃんとセラ、ルーくん、ラルくんには更に小さくちぎってお皿に載せてあげる。


 料理長さんに支配人さん、メイドさん二人に、アレックスさんにクラウディアさん、そしてペロに餅の載った皿を渡す。



「好きなものをつけて食べてください」



 ミーちゃん達には餡子をつけてあげる。ハムハムと言うよりクチャクチャと食べ難そうだけど、美味しそうに食べてるから良いのかな?



「これが人族の食べ物か……」


「お、美味しいですわ……」


「ネロ~旨いにゃ~。くにゅくにゅとはまた違ってもちゅもちゅして、これがまたなんとも……いくらでも食べれるにゃ。ペロも餅つきしたいにゃ!」



 料理長さん達も初めての味、食感に驚いてるね。あっという間に完食です。ミーちゃんは半分以上お餅を残して餡子だけ食べてた……。残したお餅はペロが美味しく頂いてましたよ。


 そうしてる間に、第二陣のもち米が蒸しあがったので餅をつく。今度は返し手をクラウディアさんにやらせてみた。二人の動きが見えません……。あっという間に餅がつき終わったね……。


 表でワイワイやっていたので、他の泊まり客も出てきて見てたようです。せっかくなので、みなさんにもご馳走しましょう。一昨日、ペロ達と遊んでくれたお子ちゃま達も居たからね。


 三度目の餅つきは返し手をクラウディアさん、つき手はいろいろな人がやって楽しんでたけど、ペロが大はしゃぎで杵を振り回す姿は見てるこっちが冷や冷やだった。


 流石にみなさんお腹一杯になり半分以上残したので、料理長さんに残りの餅が入る箱を用意してもらい、片栗粉を餅に多めにまぶして箱に入れておく。明日になれば固まっているはず、これはこれで楽しみ。


 餅の掴みはOK、十分にこの世界でも通用する味だと思う。後はどうやって広めるかだろう。考えなきゃならない事が多くて大変だよ。




 厨房に寄って料理長さんに醤油と味噌を十瓶分売りました。一瓶八千レト、もう少し安くしても良いのだけど、量が作れないので世間に広まるまではこの値段にする。大量生産できるようになれば自ずと値段は下がると思う。


 部屋に戻るとラルくんはみんなと打ち解けてじゃれあっている。見た目が犬っぽいから、ルーくんと並んでも違和感がない。と思う……?



「がう?」


「きゅ~?」



 きゅ~ってのが犬らしくないかな。まあ、みんな仲良くなれて良かったよ。



「二人は、今日の宿は決まってる?」


「いや、決まってない」


「なら、少しの間ここに泊まれば良いよ。部屋空いてるし」


「良いの?」


「但し、二人一緒の部屋ね」


「問題無いわ」



 ここは王宮持ちだけど、大公様なら文句は言わないでしょう。お土産とかも渡してるしね。


 お茶を一杯飲んだら、商業ギルドに行ってみよう。みんなはどうする? ミーちゃんは俺と一緒に行くのは決定事項、何と言っても神猫商会の代表だからね。



「み~」


「ペロ達は外で遊んでるにゃ」



 さっきのお子ちゃま達と遊ぶ約束をしたそうです。ラルくんとスミレのご対面もさせておいてね。



「わかったにゃ」


「にゃ」


「がう」


「きゅ~」



 ペロにミーちゃんクッキーをいくつか渡しておく。みんなで食べてね。じゃあ、よろしくね。



 ヴィルヘルムの主要な建物は王宮へと繋がるメイン通りにある。特にギルド関係は、西門と東門を繋ぐ道と交差した街の中央区に固まっていて、道の交差した角々にハンターギルド、商業ギルド、職人ギルド、薬師ギルドの大きな建物が個々に建っている。



「本日はどのようなご用件ですか?」


「納税と商会の支店を置く建物を探しに来ました」


「それでは、ギルド証と納税する契約書の提示をお願いします」



 ギルド証と料理長さんとの売買契約書を受付の方に渡した。それから、納税免除だけど神猫商会の実績になる大公様との契約書も提示する。こうする事で、神猫商会の信用が上がっていくのだ。商人は信用が大事だからね。


 受付の方が契約書を見てギョッと目を開き、急に立ち上がり奥に走って行ってしまったよ。またですか……。何度、このパターンを経験すれば良いんでしょう、疲れるね。



「み~」



 あらあら、流石神猫商会の代表、寛大でいらっしゃるじゃないですか。ミーちゃん、キリリっとしたお仕事モードの顔になってますよ。黒真珠のネックレスをつけてあげましょう。良くお似合いです、また一段と凛々しさが増しましたよ、代表。



「み~!」



 奥から、ご年配の男性が汗をフキフキやって来る。



「神猫商会様、ようこそおいで下さいました。あちらに部屋をご用意しましたので、どうぞ」



 だそうです、代表。アレックスさんにクラウディアさんは全くついてこれてない様子。しょうがないけどね。


 じゃあ、行きますか。



「み~」






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