137神猫 ミーちゃん、味噌と醤油を買う。

 時計を見ると、二時近くになっている。ミーちゃん、そろそろ帰ろうか。船長さん達待ってるかも。



「み~」


「なんだ、もう帰るのか」


「船が待ってますからね」


「また遊びに来いよ」


「ははは……なかなか簡単に来れる所じゃないですね」


「そりゃそうだ。ハッハッハッ!」



 神殿の外に出るとペロとセラ、ルーくんが走って来たよ。スミレはゆっくり歩いてくる。



「大丈夫だったにゃ?」


「にゃお~ん」


「がう」


「ぶるる」


「大丈夫だよ」


「み~」



 セラとルーくんの顔をムニュムニュして安心させる。さあ、帰ろうか。





「待ってたぞ。もう良いのか?」


「はい、お待たせしました」



 船の荷卸しも終わっていたようで、俺達が乗り込むと船長さんの号令のもと船が動き出す。


 ヴィルヘルムの港に戻るまでの間に甲板で遅めの昼食をとっているけど、セラもルーくんも食欲がないようです。船酔いなのか烈王さんの気にあてられたのかはわからない。ペロは普通に食べてたけどね。



「それにしてもにゃ。凄かったにゃ。あれはペロでも無理にゃ」


「にゃ……」


「がぅ」


「姫やネロはドラゴンの姿見たにゃ?」


「見てないよ。人の姿だったね」


「み~」


「怖いけどにゃ、見てみたかったにゃ~」



 ペロにゴブリンキングの気配とドラゴンの気配どっちが怖いと聞いたら、怖いのはゴブリンキングで強いのはドラゴンだそうです。


 夕陽の中、船が港に着いた。船長さんにお礼を言って、スミレに乗って王宮に向かう。





「どうであった」


「凄い気さくなドラゴンでした」


「ほう。気さくとな」


「人の姿で現れてくれて、お酒を飲みながらの談笑でした」


「なんと! 人の姿じゃと……真かそれは」


「普通に神殿の部屋でソファーに座って話してました」


「信じられん……」



 大公様は困惑した顔で頭を横に振っている。いつもは違うのかな?



「大公様とお会いするのと違い、私と会うのに見識張る必要がないと思ったのではないでしょうか? 私だと盟約とか関係ないですし」


「うむ。ネロ君の言う事にも一理あるが、では何故ネロ君が呼ばれたのじゃ?」


「それはですね。白狼族と黒豹族を連れているからです。牙王さんは烈王さんの事知ってましたから」



 本当の事は言えない……言える訳がない、よね?



「み~」


「成程のう。確かにそうなるとネロ君が適任じゃな。それで、どんな事を話したんじゃ」



 ロタリンギア王国の勇者召喚についてと説明して、勇者と会って話をして欲しいと頼まれた事を大公様に伝えた。



「闇落ちか……」


「でも、どうやって会えば良いのか……」



 全く見当もつかないよ。ロタリンギア王国とルミエール王国は決して仲の良い国ではない。国交はあるようだけど、オークキングやゴブリンキングの件がなければ、戦争になっていてもおかしくないと聞いている。


 そんな国に単身で乗り込んで大丈夫なんだろうか? 逆に利権が絡まないから選ばれたとも考えられる。



「行商人としてロタリンギアに入るのが一番じゃろう。こればかりは、儂もアンネリーゼも手が出せん」



 ですよねぇー。国家間の問題に発展しかねないよねぇ。神様頼むのは良いけど報酬や経費の事考えてくれてるのかなぁ。困ったもんだよ。


 夕食の時間も近いので宿に帰る事にする。大公様にいつでも遊びに来いと言われ、王宮を後にした。



 翌朝、支配人さんに誰か訪ねて来たら部屋で待っててもらうようにお願いしておいた。ドラゴンさんが来るかもしれないからね。


 港の市場に行き魚を買い漁る。干物や珍味も買っておく。いくらあっても困る事はない。海から離れると余程の事がないと海の魚なんて食べれないから、売るのも困る事はないと思う。ミーちゃん様様です。チュッチュッしちゃうよ。



「み~」



 さて、本日のメインイベント醤油と味噌を買いに行こう、開始です。門を出てスミレを走らす事十数分、村に到着。見渡す限りのどかな田園風景、癒されます。


 村に入りお婆さんの家を歩いていた第一村人に聞くと案内してくれた。



「あんれま、本当に来たんだねぇ」


「来ましたよ。買い取り契約したいので代表の方を紹介してください」


「代表ねぇ。村長に話すかねぇ」



 ミーちゃん以外は村のお子ちゃまと遊んでいるようです。ミーちゃんは俺にしっかりとしがみついて離れません。相当、村のお子ちゃまにトラウマを持ってしまったようだね。



「あんたが醤油と味噌を買いたいと?」



 村長さんに商業ギルド証を見せ



「定期的に購入したいと思っています」


「どの位欲しいんだね」


「みなさんの生活に支障をきたさない程度、ですかね」


「本気かね」


「はい」



 村長さんが村で管理している蔵に連れて来てくれた。蔵は二つ並んでいて、醤油と味噌で分かれているようだ。



「これが村全体で作っている物だ」



 中に案内されると大きな木桶が並んでいる。ほのかに醤油の香りが漂う、心落ち着く場所です。



「一度に売れるのは、この一桶分だな」


「どの位の量になりますか?」


「五リル(一リル=一リットル)の瓶で三百だな」


「一瓶おいくらです?」


「四千レトと言いたいところだが、三百全て買ってくれるなら三千レトで良いぞ」


「買います。味噌もお願いします」



 味噌蔵に移動するとこちらは味噌の匂いがします。当たり前か。醤油蔵と同じで大きな桶が並んでいる。これ全てが味噌かぁ。



「乾燥させた味噌とそのままの味噌があるが、どうする」


「どちらも買います」



 村長さん宅に戻り売買契約を交わす。他にも常時一定量の買い取りをする年契約も交わしたよ。他にも村長さんと話をしていたら、なんともち米を作っているそうです。もちろん、これも契約しました。餡子餅、磯部餅……海苔がない……。



「そんなに買って大丈夫かね?」


「任せてください。必ず、醤油と味噌の認知度を上げて見せますよ。その時は増産お願いしますよ」


「嗚呼、期待せずに待っとるよ。もし、あんたが言うようになれば、村の者は喜ぶだろう」



 そうなれば、この村も特産品作りで活気が出るだろうね。ミーちゃん、頑張ろうね。



「み~」





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