み~ちゃんの異世界放浪記 その陸

 ハンターギルドの中は喧騒に包まれている。


 これだけのギルド職員とハンターがいる中で、みんなのアイドルモフモフちゃんが行方不明になれば当然の事であると思われる。


 最初は擦り付け合いだった女性陣も、冷静になり順序だって分析を始めだす。



「あなたの次にルーくんをモフモフしたのはカネリアさんって事?」


「はい。結婚後の顔見せに来たんだと思いました」


「その後、ルーくんを見た人は?」


「「「……」」」


「カネリアが黒ってことね」



 カネリアと言う人物は以前ハンターギルドの受付嬢をしていた女性で、最近寿退社したとネロに説明される。



「ルーにゃんがにゃんの抵抗も無しに連れて行かれるにゃん?」


「キャリーバッグがなくなっているから、中に入れられて連れて行かれたんだよ。防揺れ、防音付きの神様仕様が裏目にでたね」


「みぃ……」


「にゃ……」



 取り敢えず、犯人の目星が付いたのでカネリアの住所を聞きネロ達は行ってみる事にした。


 ネロ達が教えられた場所に来たが、その場所は既にもぬけの殻。既に引越しをした後のようだった。



「うーん。これは計画的犯行かな?」


「み~?」


「誰がルーにゃんを攫ったにゃ?」


「にゃ?」


「おそらくだけど、こないだ来た貴族かな」


「あれ? ネロさん、こんなところで何してるんですか?」



 年の頃は十二、三才の少年がネロ達一行を見つけて声を掛けてきた。



「やあ、ヤンくん。ちょっと人を探していてね」


「み~」



 話掛けてきたヤンくんは、以前ネロ達によりハンターギルドの規則のせいで多大な借金を背負わされそうになっていたところを助けられた少年である。



「誰を探してるんですか? お手伝いしますよ。この辺は僕の家の近くなので」


「カネリアって言う、元ギルドの受付嬢なんだけど知ってる?」


「カネリアさんですか? もちろん知ってますよ。最近引越したようですね」


「どこに引越したか知らない?」


「うーん。僕は知りませんが誰か知ってる人がいるかも知れません。今から調べてみますね。わかったらネロさんが泊まってる宿に行きますので」


「助かるよ」



 ネロ達一行は王都での土地勘もないうえ、知り合いも少ない。ヤンくんの申し出は非常にありがたい申し出であった。ひと先ず、ヤンくんからの報告があるまで宿で待機する事に決めた一行である。




 とある貴族の館のとある一室。


 身なりの良い男に、執事風の男、目が淀んだ護衛風の男が居る。



「この中に居るのが例のモンスターか?」


「はい」


「クックック……こいつを使ってブロッケン山を我が物にするのだ」


「また、資金が必要になりますが……」


「金などいくらでも借りれば良い。ブロッケン山を手に入れれば金などいくらでも湧いて出てくる。ダスク、お前が指揮を取れ。必ずブロッケン山を手に入れ、あいつらを見返すのだ!」


「お任せください。成功の暁にはお約束をお忘れなく……」


「わかっている。我が辺境伯になれば思うがままよ。ワハッハッハッ!」


「……」




 ネロ一行が宿でヤンくんの報告を待っている時、ネロがある事に気付いた。



「あっ! 品物が増えてる。なになに、ネズミラジコン 忍び込みマウス、偵察用カメラ付き。破壊不可なのでミーちゃんのおもちゃにもってこいだと……」



 召喚してみると、本物そっくりな灰色ネズミとモニター付きプロポが出てきた。ネロが電源を入れてプロポで操作すると、ネズミがさも生きているかのように動き出す。モニターにはネズミの視線での映像が映し出され、視線の操作も可能になっている。余談であるが、チュウチュウと声が出るボタンまで付いている無駄に高性能な神様仕様である。



「み~!」


「うにゃ!」


「にゃ!」



 テッシ! っとセラの前足で払われ宙を。いつもおっとりなミーちゃんが見事なジャンプをみせ、宙に舞うマウスをカプリ。


 シュタっと床に舞い降り、ネロに向かってお口にマウスを咥えたままドヤ顔。


 ネロ、困惑。



「おぉー。姫やるにゃ~」


「にゃ」


「おもちゃなんだけど……おもちゃじゃないんだよ」



 それから、ネロは操作に慣れる為に練習。ミーちゃん、ペロ、セラは狩猟本能に火がつき、マウスを追っかけ回す。


 そんなドタバタの中、一人の少年が部屋を訪れて来た。



「や、やあ。ヤンくん、よく来たね」


「みぃ……」


「つ、疲れたにゃ……」


「にゃ……」


「だ、大丈夫ですか?」


「ま、まあね……。それよりどうだった?」


「はい、見つかりました。今から行きますか?」


「頼むよ」


「み~」



 ネロ一行はヤンくんと連れだって西区にある居住区に足を運ぶ。そこは西区でも裕福層が住む区域にあり、立派な建物の三階にある住まいだった。



「ありがとう。ヤンくんはここまでで良いよ」


「わかりました。それじゃあ、またなにかあったら声を掛けてくださいね」


「ああ、頼りにしてるよ」


「えへへへ……それじゃあ、また」


「み~」



 ネロ達は一応何があっても対応できるように準備を整えてから呼び鈴を鳴らす。鳴らしてから、しばらくしてドアがそっと開き女性が顔を出した。



「どちら様ですか?」



 ネロは応える前にドアの隙間に小剣を突っ込みドアを閉められないようにしてから、女性に対してニッコリと笑いかけ



「いやぁー、探しましたよカネリアさん。ルーくんを返して頂きましょうか」


「ど、どうして……」



 女性とのやりとりの間に、ドアの隙間からセラが侵入し女性の背後を取り黒豹の姿に戻る。



「ヒッ!」



 背後のセラに気付いた女性は小さい悲鳴をあげ腰を抜かして座り込んでしまう。



「み~」


「ルーにゃん、どこにゃ?」


「にゃ」



 ミーちゃんとペロが部屋の中に入って行きルーくんを探すが見つからない。



「みぃ……」


「居ないにゃ」


「にゃ……」


「カネリアさん。あなたがルーくんを攫ったのはわかっています。ルーくんはどこですか?」


「わ、私は指示されただけ……うっぅぅ」



 カネリアと言う女性は泣きはじめてしまい話を聞く事ができなかった為、ネロは仕方なく泣きやむのを待ち事情を聞く事にした。


 泣きやんだカネリアは観念して全てを語り始める。結婚してギルドを辞めたのは良いが、その後結婚した相手に賭博による多大な借金がある事がわかった。なんとか借金を返しながらそれまで貯めていたお金でやり繰りしてきたがとうとう普通に生活する事さえ困難になった時に、借金借りていた相手であるマフィアから今回の件を指示されたと話す。


 上手く事が運べば借金を棒引きしてやると言われて、悪い事と知りながらも背に腹は代えられずに指示に従ったと言う。


 ルーくんは既にマフィアの手に引き渡されカナリアは知らないと語った。



「ハァ……ジンさんの所に行こうか」


「みぃ……」


「拷問にゃ!」


「にゃ!」



 ハンターギルドに着いたネロ達をジンも丁度探していたところだった。



「ネロ! 話は聞いたぜ。見つかったか?」


「駄目でしたが、攫ったのはマフィアのようです」


「その裏で糸を引いてる奴がいるぜ」


「貴族のゾルムス家ですか?」


「なんだ、知ってたのかよ」


「ルーくんを譲ってくれって来てたんですよ」


「で、どうするよ? 貴族じゃ簡単には手が出せねぇぞ」


「忍び込みますか……」


「おいおい、本気か?」


「今夜決行します」


「はぁ……仕方ねぇ。一緒に行くかぁ」


「助かります」


「み~」



 その後、ネロ達とジンの間で打ち合わせをおこない、日没後に貴族街入り口の門で待ち合わせする事になった。


 陽が暮れ、ネロ達が貴族街の門に集まる。



「どうやって、貴族街に入るつもりだ?」


「堂々と入りますよ」


「堂々とってよう……」



 ネロは門の前の居る衛兵に何かを見せて話をしている。何度か衛兵とやりとりした後、門を通る許可がおりた。



「マジかよ……賄賂でも渡したのか?」


「まさか、王宮発行の手形を持ってるんですよ」


「おいおい、そっちの方がおかしくねぇ? なんで、そんなもん持ってんだよ」


「細かい事は気にしない。さあ、行きますよ」


「み~」



 ゾルムス家の場所はペロが、王都のNNNねこねこネットワーク通称ニャットワークを駆使して事前に調べあげていたのであった。



「結構な数が居やがるぜ」


「表に十人、裏に十五人にゃ」


「マフィアだけじゃなく、闇ギルドの連中も居るな厄介だぜ。中にも居ると考えるべきだな」


「取り敢えず、建物の中の様子を調べましょう。ペロ、猫化してこれを建物の中に置いて来て」



 ネロが取り出したのは、そう神様仕様のネズミラジコン 忍び込みマウス。ペロが猫化してマウスを咥えれば、猫がネズミを咥えてるようにしか見えない。加えてペロは鍵開けスキル持ち、裏口のドアや窓を開けるのは得意中の得意。



「任せるにゃ」



 ペロはそう言って堂々と屋敷の庭に入って行く。当然、護衛の者達に見つかるが、敢えて咥えたネズミを見せびらかすように歩いて行く。護衛の者達はまさか、侵入者と思う訳もなく逆に微笑ましくネズミを咥えたペロを見送ってしまい、中には頭をなでなでする者まで……。



「な、なんてあざといやり方だ……俺でも見逃すと思うぜ」



 しばらくすると、何故か干し肉を咥えたペロが戻ってきた。



「ネズミを捕ったご褒美にくれたにゃ」


「「「……」」」



 プロポの電源を入れると裏口のドアの近くだとわかる。



「ネロ、そいつは何なんだ?」


「偵察用の秘密兵器です」


「なんでそんな物持ってんだよ! お前は一体何者だよ!」


「迷宮で見つけたAFですよ」


「おっ、成程……」



 ネロは思った。ジンが単純な人で良かったと……。


 ネロがネズミラジコンを操作して内部を調査する。何度か屋敷の使用人に追いかけ回されたりして苦労するが一階の捜査は粗方終わった。



「一階には居ないようです。護衛らしき者が複数いますね」


「乗り込むか?」


「それは、ルーくんを見つけてからです。二階の捜索を開始します」



 貴族街の中でも一、二を争う大きな屋敷である。十セン程度のネズミラジコンで捜索するには時間が掛かる。


 そんな中、黒ずくめの集団が屋敷に入って行くのが見えた。



「ありゃ、闇ギルドの者達だな」



 ネロは操作しているネズミラジコンで二階に上がって来たその男達の後を追う。



「どうやら、隠し部屋のようです。二階のあの辺になりますね」



 そう言ってネロは屋敷の一角を指差した。



「何を話してる?」


「残念ながら音は拾えないんですよ。ですが、キャリーバッグが見えます」


「み~」


「ビンゴだにゃ」


「にゃ」


「しかし、どうするよ。俺達だけで突入するには相手が多すぎるぜ……」


「うーん、仕方ないですね。ペロ、セラ、王宮に行って王妃様か宰相様にこの事を伝えて兵を出すようにお願いしてきて」


「宰相は嫌やにゃ……」


「いいから、さっさと行く!」


「み~」


「行くにゃよ……」



 ネロは手形をペロに渡し、ペロは猫の姿のまま黒豹姿に戻ったセラの背中に乗ると、全く音をたてずにセラは走り出した。



「王宮の兵を動かすつもりかよ……動くのか?」


「ルーくんはブロッケン山の主の息子です。ルーくんに何かあれば黙って無いでしょう。ブロッケン山はヒルデンブルグ大公国との間の要所。国の国益を考えれば、貴族を取るか……国益を取るか、決まっているでしょうね」


「何気にあのちび助、大物だったんだな……」


「俺にとっては大事な仲間でしかないですけどね」


「み~」



 そうこう言ってる間にも、屋敷に堅気と思えない者達が多く集まり出している。



「マフィアまでお出ましだぜ。昼間の失敗の火消しに来たと見える。ネロは人気者だな」


「むさい男に好かれても嬉しくないですよ」


「み~」



 時計を見れば零時になっている。月が雲に見え隠れする夜半、寝静まった貴族街でこれから起こる大捕り物の事など予期する者など誰も居ないだろう。



「行って来たにゃ」


「にゃ」


「それで?」


「ニーアさんが王妃様に取り次いでくれたにゃ。ちゃんと説明したにゃ。もうすぐ、宰相が兵を連れて来るにゃ」


「宰相様が直々に来るのか……」


「相手が貴族だからにゃって、王妃様が言ってたにゃ」



 一時間程経った時、護衛を連れたアーデルベルト・フォン・ヒューデンバーグ宰相が姿を現した。



「君は私を過労死させるつもりかね」



 彼の癖ともいえる、眼鏡をずらして相手をみる仕草をネロに向ける。



「そんなつもりはありませんが……相手が貴族なので仕方なく。それにこの件でルーくんに何かあれば、ルミエール王国にとっても不利益になりますから」


「ふむ、致し方ない事だと?」


「違いますか?」


「違わんな。ならばさっさと片付けようではないか。これ以上睡眠時間を減らされては敵わんよ」


「ルーくんは私達が救出しますので、他の者達をお願いします」


「君達だけで大丈夫かね」


「竜爪のジクムントさんがついていますので」


「ほう。貴殿が竜爪のジクムント殿か。なら、任せるとしよう」


「へ、へい」



 宰相が手を上げると、隠れていた兵が一斉に館を取り囲む。



「では、始めよう。首謀者並びにその家族は生かして捕えよ。それ以外の抵抗する者は生かす必要はない。かかれ!」



 館の方でも既にこの異常に気付いたようで、まさか国の兵とわからないまでも身構えている。兵士達は宰相の合図で一斉に矢を射かけ、すぐに抜剣して館の護衛達に襲い掛かった。


 ネロ達はその隙に敵を倒しながら裏口に周り内部に侵入する。多くの闇ギルドとマフィアの者は表の兵士に気を取られそちらに回っている為、内部は意外と敵が少ない。少ないとはいえ居ない訳ではないが、ジンとペロ、セラの前では相手になっていない。加えてネロの銃による援護で危なげなく二階の隠し部屋に向かって行く。



「何が起きている!」


「何者かの襲撃を受けている模様です」


「だから! 何者なんだ!」


「不明でございます」


「えぇーい! いつもいつも役に立たぬ! 貴様の顔など二度と見たくないわ!」


「承知しました。これでやっとお暇できます」


「き、貴様……消えろ! ダスク! どうなっている!」


「不味い状況ですな。一旦、ここから離れる必要がありますな」


「ば、馬鹿な事を言うな! この件にどれだけ掛けてると思う!」


「その狼さえ、我々の手の内にあればどうとでもなるでしょう」


「ぐぬぬ……致し方ないのか……」



 そんなやりとりをかき消すように、隠し部屋の扉が蹴り破られる。



「何者だ!」


「ほう。誰かと思えばダスクじゃねぇか。お前、生きてたのかよ」


「ジクムント! 何故、貴様がここに!」


「ダスク……どうやって生き延びたかは知らんが、今度は確実に俺が殺してやろう……あいつらの為にな」



 ダスクと言う男、淀んだ目のまま顔を引きつらせつつも腰の剣を抜き構える。



「ネロ。悪りぃーが、手を貸せるのはここまでのようだ。後は自分で決着つけろや」


「ジンさんも気を付けて、そいつのスキルが見えません。隠蔽スキル持ちのようです。何か隠し玉を持ってる可能性があります」


「嗚呼、知ってるぜ。こいつの事は良く知ってる。なぁ、ダスク」


「……」



 無言のまま剣撃をジンに放ってくる。ジンは難なく受けているが、ダスクと言う男相当な腕前のようだ。ジンは敢えて部屋の外に誘導するように受けに回っている。



「さてと、ルーくんを返して頂きましうかね。それとも抵抗します?」


「み~?」



 ペロが虎徹を相手に向け、セラが牙をむいて威嚇する。執事風の男は両手を肩の所まで上げ、首を横に振り抵抗する気が無い事を示す。



「き、貴様! 我が誰か知っての狼藉か!」


「さあ、知りませんね。俺にはどうでも良い事ですよ」


「貴族に対してこんな事をしでかして、只で済むと思うなよ」


「これ、な~んだ」



 ネロは相手に見えるように、一つの手形を見せた。



「宰相付きの巡察使……」


「ば、馬鹿なありえん! 偽造するなど大罪ではないか!」


「一応、本物ですよ。下に本人居ますのでご自分で確認してください」


「だ、誰が居るだと?」


「宰相様ですよ。誰がここに兵を送ったと思ってるんです? この場所に、こんな時間に兵を送れる人って他に何人いるんでしょうね?」


「「……」」



 ネロがそう言って机の上のキャリーバッグに近寄ろとした時、ゾルムス家当主がネロより早くキャリーバッグを取り中からルーくんを掴みだして短剣をルーくんの首元に押し付ける。



「がぅ」


「みぃ……」


「ルーにゃん……」


「にゃ……」



 ネロはジッとルーくん見つめてから



「この状況でどうするつもりですか?」


「近付けばこいつを殺すぞ! こいつを殺せば、ブロッケン山の親が黙ってないだろう。良いのか?」


「ふむ、どこでそれを知ったのか知りませんが、その子偽物ですよ。本物は目の周りが黒いんです。どこで入れ替わったんでしょうね?」


「嘘をつくな!」



 ゾルムス家当主はそう言って子狼の顔を覗き込む。途端、握っていた短剣を落として、ニヘラ~っとした顔になった。これがゾルムス家党首の野望が潰えた瞬間である。



「はい、ルーくん。良くできました」


「がう」


「み~」


「ルーにゃん」


「にゃ」



 ルーくんがゾルムス家当主の腕から抜け出して、ネロに飛びつきネロとミーちゃんの顔をペロペロ舐め回す。そんなルーくんとミーちゃんをペロとセラの元に降ろし、ネロは執事風の男に話しかけた。



「あなたはどうしますか?」


「この男がしでかした事ではございますが、私も加担した事には違いありません。罪を償います」


「……」



 ニヘラ~っとボーっとルーくんを見ているゾルムス家当主をロープで縛り上げ、既に争いの音の消えた一階へ降り外に出る。



「くっ……俺とした事が逃げられちまった……」



 ジンは頭(こうべ)を垂れた状態で苦い顔をし両手を握りしめている。



「ゾルムス家当主だな。どう言う状態なのだね」


「ちょっとした、異常状態です。少しすれば元に戻ります」


「ふむ、ならば問題無い。後で話を聞かねばならぬからな」


「全ては、私がお話致しましょう」


「貴公は?」


「ゾルムス家に仕えていた者……と言っておきましょう」



 国の兵士に怪我をした者は居たが死者は出ていない。反面、ゾルムス家に加担した者の殆どが討ち取られた。唯一逃げ延びたのはダスクと言う男のみである。ジンとの戦いのさなか、突然砂塵が巻き上がりジンを含め兵士達の視界が奪われ砂塵がやんだ時には既に姿をくらませた後だったと言う。



「後の事は、我々に任せてもらおう」


「よろしくお願いします。今日は大変助かりました。どうか、王妃様に良しなに」


「自分で言いたまえ」


「……はい。みんな帰ろうか」


「み~!」


「お腹空いたにゃ~」


「がう!」


「にゃ!」




 これにて、み~ちゃんの異世界放浪記その陸 おわりである?

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 その後、ネロ達一行はクイントに発つ前に今回のお礼に王宮を訪れ、王妃様やレーネ様、ニーアさんを含めた侍女さん達におはぎを大量に作り差し入れした。


 その時のミーちゃんは、大変恨めしそうな顔をしていたと言う。


 その時に聞かされた話によると、ゾルムス家は破産寸前の借金まみれの状態で、そんな時にルーくんの話を聞きブロッケン山を己の私欲の為に支配しようと企んだと言う事だ。ルーくんの事に関しては情報が漏れた事はこちらに問題があったと、王妃自ら頭を下げネロ達に謝罪した。


 当のゾルムス家については当主は死罪の上お家取り潰し。家族は本家の辺境伯預りになった。もちろん、この事は公にされず当主ははやり病で急死、家族も重病の為療養と公表された事は暗黙の了解である。



 余談ではあるが、ネロは宰相にミネラルウォーターを小瓶に分け十本程差し入れしたそうだ。




 おわり

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