135神猫 ミーちゃん、テレる!?

 一人でエールを一樽飲み干しましたよ。この人、いや、竜か? 実際の体格からすると微々たるものかな。



「いやぁー、旨かった。ご馳走さん」


「いえ、お粗末様でした。それで、私達を呼んだご用件は?」


「あん? 俺、呼んだ……ような気がするな。そう、あれだ、お前勇者の居た世界から来たんだろ、なんでこの世界に来たんだ? 勇者召喚でもないのによう。それも神の眷属と一緒に、最近来た奴らも知り合いか?」



 いろいろ、ツッコミどころが満載なんですが……。



「どうして、勇者と同じ世界の者だとわかるのですか?」


「そりゃあ、同じ道が開いたからだろう」


「同じ道だと同じ世界と決まってるのでしょうか?」


「あっちこっちに繋がってたら大変だろう。俺だって、とある道を塞いでいるのが役目だしな」



 この超イケメンドラゴンさんは他の道に繋がる入り口の番人と言う事ですか。



「最近来た者とは、全く関係は無いと思います」



 そこで、今までの経緯を話して聞かせた。



「お前ら、間抜けだなぁ」


「ぐっ……」


「み~♪」



 な、何も言い返せない……ミーちゃん、ここ誉められてないからね! なんで、照れてるのかな? いや~んって顔をして前足で顔を隠しているんですけど……か、可愛いです。



「まあ、神の眷属がそこまで懐いているから、悪い奴じゃないのはわかっていたけどな。で、お前は何がしたいんだ?」


「ミーちゃんとスローライフ」


「はぁ?」


「ミーちゃんとスローライフ」


「あ、いや、それはわかった……って、なんでだよ! 勇者目指すとか国を興すとかじゃねぇーのかよ!」


「全く、興味無いです」


「み~」


「マジかぁ……」



 そんな事してたら命がいくつあっても足りないし、忙しくて寝る暇もないなんて絶対嫌だぁー!



「召喚されて来る奴って、たいてい正義感の強い奴なんだがなぁ。今までの勇者はそうだった」


「そもそも、勇者じゃないんで」


「でも、神から力もらってるんだろう?」


「もらいましたけど、この世界に影響を与えるような力は最初から却下されましたよ」


「でもよう、俺にもわからんスキル持ってるじゃねぇかよ」



 はい、猫用品召喚スキルですね。確かにチートと言えばチートですが……これで世界は狙えませんよ。



「み~」



 超イケメンドラゴンさんにスキルの内容を説明したよ。



「……」



 何か言えよ、超イケメン。



「お前……神に文句言った方が良いと思うぞ」



 んっーな事、百も承知だよ! でもな、でもなぁ……このスキルが無いとミーちゃん困るだろうよ!



「み~!」



 ミーちゃんが嬉しそうに顔をペロペロしてくれる。


 そう、これで良いんだ、良いんだよ。このミーちゃんからの愛情を受けられればそれで幸せなんだぁ~よ。



「才能の無駄遣いだな……」



 ふん、言ってろ!



「神の祝福を受け無いで連れて来られた者は、みんな不幸な最後を迎えたって聞いてますよ」


「そうだな……大抵の奴は欲をかき過ぎて自滅してるな。だが、ちゃんと幸せに生涯を終えた奴らだって居るんだぜ」


「その違いは?」


「目的を遂げた後、勇者の名を捨てられた奴らは幸せになってる」



 はぁ……それは、なんとも厳しい現実。頑張った後のご褒美は勇者を辞めてからって事ですかぁ。



「なら、最初から勇者にならなきゃ良いのに……」


「いろいろあるんだよ。誰が最初から自分が自滅するなんて考えるよ。多くの者は純粋に正義感なんかで勇者を始めるんだよ。そこから、どんどん周りに狂わされていき、自制心を保てなくなった奴が自滅する」


「身体は鍛えても、心は鍛えなかったって事ですか……」


「周りからチヤホヤされ、自尊心が強くなり過ぎ周りが見えなくなる。唯我独尊ってやつだ。神の祝福を受けていればそうならないように心が守られる。心を保てなくなった奴は魔王と変わらん」


「そして……倒される」


「そう言う事だ」



 尚更、勇者なんかになりたくないんですけどね。



「だぁー! だから、お前にはその神の眷属がついてるだろう! お前は闇落ちしねぇんだよ!」


「だとしても……猫缶でどうやって魔王を倒すんですか!」


「……」



 おい、そこで黙るな、このイケメン野郎。



「まあ、あれだ。勇者が駄目なら今度来た奴説得して来い」


「なんで?」


「お前、なんか口調変わってきてねぇ……なんでって、話し聞いてたのか? 闇落ちする前に説得して勇者辞めさせるんだよ」


「オークキング、どうするんですか?」


「んなもん、勇者が居なくても人族で協力すれば倒せんだろうよ。今までだってそうやって倒して来たんだからよ」


「今回は近くにゴブリンキングも居ますし、そもそも協力したく無いから勇者召喚したんですよ。無理でしょう」


「そこまで知らん」



 今までおとなしくしていたミーちゃんが腕の中でゴソゴソ動き出して、俺のバッグをテシテシ叩いている。どうしたの? 何か欲しいの?


 バッグを開けると、ミーちゃんは顔を突っ込んで何やら咥えてきた。神様がくれたハウツーブックだね。



「み~」



 あぁ成程、いつぞやみたいに最後のページを増やして、何か書いて来たのか。ポンコツ神様だけに不安しかないよ。



「み~」





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