134神猫 ミーちゃん、お船に乗る。

 待ち合わせ場所に行くと、執事さんが待っていました。どこの執事さんも神出鬼没だよね。職業の必須スキルなんだろうか?



「お待ちしておりました。ネロ様」



 執事さんに案内された船は周りの船と比べても大きく頑丈そう。見るからに軍艦といった感じの船。執事さんから船長さんを紹介され乗り込む。執事さんはここまでのようです。



「帰りは王宮にお寄りください」


「了解です。では、行って来ます」


「み~!」


「行って来るにゃ」


「にゃ」


「がう」


「行ってらっしゃいませ」



 船首でわくわく船が動くのを待っています。ミーちゃん、念願の船に乗れて大興奮。周りをキョロキョロ見ながら、興奮気味にキャリーバッグをテシテシ叩いている。ペロとセラも興味津々なのに対して、ルーくんは俺にしがみついて離れない、あら意外。スミレもマストの所から動こうとしないね



「帆を張れ!」


「ヨーソロー」


「面舵に進路を取れ!」


「ヨーソロー」



 船が帆を張って出発します。って面舵? 宜しく候?


 ルミエール王国とヒルデンブルグ大公国の先祖の勇者はやっぱり日本人なのか? それとも、そう言う風に言語変換されて聞こえてるだけなのかな?


 海原を滑るように船は走り、船と並走するように海鳥が飛んでいる。試しにミーちゃんクッキーを四等分にして空に投げると、海鳥達がうまい具合にかっさらって行く。



「み~」


「面白いにゃ。ペロもやりたいにゃ!」


「にゃ……」



 あれ? セラの調子が悪そう。もしかして、船酔いですか? まだ、港出てから少ししか経ってないよ。大丈夫?



「み~」


「がう」


「にゃ……」



 ペロにミーちゃんクッキーを渡して、セラには皿にミネラルウォーターを出してあげる。船酔いも異常状態だから万能薬で治るでしょう。


 セラがミネラルウォーターを飲んでいる間、ミーちゃんがセラをペロペロしてあげてる。だいじょ~ぶ? って感じかな。ルーくんは俺の胸に引っ付いたまま離れようとしない。そんなに怖い?



「がぅ」


「にゃははは! 面白いにゃ! ネロ、クッキー」


「もう、終わり。やりたいなら、自分のドライフルーツをやりなさい」


「にゃ、にゃんですと……」



 ペロは悩んだ末、自分のドライフルーツを海鳥達に投げはじめた。余程、気に入ったようです。


 出発してから二時間程で竜の住む島に到着。船は思った以上に速かった。島はちゃんと港も整備されていて兵士が常駐する建物もある。許可の無い者が侵入しないように警備してるそうです。


 で、俺達どうすれば良いんですか?



「この道を真っ直ぐに進んでいけば良い。途中から竜が案内してくれる。君達が戻るまでは出発しないから安心したまえ」



 そうですか、じゃあ船長さん行って来ますね。


 スミレもセラもルーくんも地面に降りれて、ホッとしてるようだ。じゃあ、スミレお願い、急がなくて良いからね。セラが黒豹の姿に戻って、スミレと並走しながら言われた道を進んで行く。


 森に入った訳でもないのに急に影がかかったので上を見ると、ドラゴンでした。飛龍じゃない、明らかにドラゴンです。体型が全く違いがっちりした体格をしている。


 ミーちゃんもキャリーバッグからドラゴンを見上げて興奮しながらキャリーバッグをテシテシしている。また、乗りたいとか言わないよね……?



「み~!」



 乗りたいんだ……。


 俺が見た事を気付いたのかドラゴンは少しスピードを上げ、ついて来いと言ってるようです。スミレ、あのドラゴンについて行ってね。


 少し走ると大きな神殿のような建物が山の中腹に見えてきた。あれが目的地のようです。案内してくれていたドラゴンがどこかに飛び去って行ってしまった。後は、自分で行けって事らしい。


 神殿前でスミレから降りて、スミレの桶を出して水を入れておく。ちょっと行ってくるね。ぶるるっと、粗相のないようにねって仕草をされた。スミレは相手が誰かわかってるようだ。


 神殿の入り口から中に入る。ペロ、歩き難いから離れろよ。



「だってにゃ……怖いにゃ」



 ペロとルーくんはビビりまくっているし、ミーちゃんとセラは緊張しているようです。うーん、何も感じない俺って鈍感系?



「よく来た。神の眷属よ」



 どこからともなく、声が聞こえる。



「すみませ~ん。どこに行けばよいですか~」



 俺の緊張感の無い間の抜けた声が神殿内に響く。



「ふむ、俺がそっちに行こう。待ってろ」



 そう、声が聞こえると、奥から黒髪の超が付く程のイケメンが歩いて来たね。流石にここまで整った顔だと嫉妬を覚えるより違和感を感じてしまう。本当に、ここに存在しているのだろうかって……でも、プレッシャーは半端ないけどね。


 ペロが俺の背中でガタガタ震え、セラは伏せの態勢になっている。ルーくんはキャリーバッグの中に隠れてしまった。



「ん? どうした? これでもだいぶ抑えてきたんだがなぁ。ケットシーはまだしも、白狼族も黒豹族も駄目か?」



 超イケメンさんは困った顔をしている。うーん、俺もよくわからない。ペロ、セラ、ルーくんにスミレの所で待っててもらうように言う。



「わ、わかったにゃ……」


「にゃ……」



 ミーちゃんを抱っこしてルーくんの入ったキャリーバッグをペロに渡したら、スミレの所に逃げるように走って行ってしまった。



「ほう。お前はなんともないのか?」


「そうみたいです」


「面白い。ついて来い」



 超イケメンさんに応接室のような部屋に連れて来られた。



「まあ、座れ」



 対面のソファーに腰を下す。フカフカで良いソファーのようです。



「なんか飲むもの持ってないか?」


「お茶ですか、それともお酒ですか?」


「おぉー、酒があるのか?」



 ミーちゃんにエールの樽を出してもらいジョッキに注ぎ水スキルで冷やしてから、超イケメンさんの前に置きついでに市場で買ったおつまみになるような物も出す。



「良いのか?」


「どうぞ」


「み~」



 ゴクッ、ゴクッと良い飲みっぷりです。



「ぷっはー。うめぇー、もう一杯!」



 ミーちゃんも俺もこの超イケメンさんが誰かはわかっている。いるんだけど……こんな軽くて良いんでしょうか?



「み~?」





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