131神猫 ミーちゃん、大公様の依頼を受ける。

 さて、中継地への配達も終わりやる事はやった。王都に戻るか、ヒルデンブルグに行くか、どうしますかね。



「お魚が食べたいにゃ!」


「にゃ!」


「がう!」



 お魚ですか、となるとヴィルヘルムに行くしかないね。ミーちゃんは、それで、良い?



「み~」



 よし、じゃあヴィルヘルムに行ってお魚一杯買いましょう!


 マーティンさんに別れを告げ、中継地を出てスミレを走らせる。スミレに頑張ってもらって、ニクセの街までは行きたいね。


 陽が暮れるギリギリでニクセの街の門に着き、翌日の夕方にはヴィルヘルムに着く事ができた。


 門に着くと何故か、衛兵さんに呼び止められ詰所に連れてこられた。何かやったかな?



「なんにゃ~。お腹減ったにゃ~」


「にゃ」


「がう」



 ミーちゃんをモフモフして待ってると、大公様の所で会った執事さんが部屋に入って来た。



「ネロ様、ミー様、大変ご迷惑をお掛けしました。無礼無きよう対応しろと、厳命したのですが末端まで届かなかったようでして、全ては私の不徳の致すところ、重ねてお詫び申し上げます」


「み~」



 気にしなくて良いよ~って、ミーちゃん執事さんに笑顔を見せてます。ミーちゃん良い子や~。



「まあ、それは良いのですが、俺達何かしました?」


「いえ、特には何も。陛下がネロ様をお連れしろと仰っておいでと言う事以外は」


「どうして、俺達が来た事を知っているんですか?」


「ブロッケン山の騎竜隊の者から、ネロ殿がこちらに向かったと報告を受けており、更に巡回中の騎竜隊から凄い速さで走るバトルホースが公都に向かっていると報告がありましたので」



 確かに上空を飛龍が飛んでたね。そこから報告が行ったのかぁ。騎竜隊の人から見れば、緊急の使者と思ってしまってもおかしくないか。



「それで、俺達はどうすれば良いのでしょうか?」


「前回と同じ宿をご用意しておりますので、ご自由に滞在ください。陛下の元へは明日お越しくださればよろしいかと」



 おぉー、またあの宿に泊まれるのかぁ。ラッキーだね。


 執事さんをこのまま手ぶらで帰すのもなんなんで蒸留酒を一樽渡し、大公様にお渡しするようお願いしておいた。もちろん、明日伺う事もね。


 詰所を出て前回の宿に向かうと、宿の扉の前にみなさん並んでいて歓迎してくれてます。VIP気分です。



「み~」



 ミーちゃんもまんざらでもない顔をしていますね。スミレは厩務員さんにスリスリしている。良くしてくれたのを覚えてるんだね。ゆっくり休んでね。


 荷物は無いけど、支配人さんとメイドさん二人に部屋に案内された。急な泊まりと言う事で食事の用意に時間が掛かるそうなので先にお風呂から入る事にする。


 メイドさんも前回と同じ方達ですので心得たもの、みんなをテキパキ洗っていきます。そう、そして洗われています……そ、そこは自分で洗いますから~!



「み~」


「姫の言う通りにゃ。洗ってもらえば気持ち良いにゃ」



 うるさい! ここは守らねばならぬ聖域。絶対、死守!


 メイドさん二人もやっと諦めてくれたけど、だからそのチッって言うのやめてくれません?



 空腹は最高の調味料とペロが言ってたけど、美味い料理が更に美味く感じるね。メインは魚料理だけど、いくら食べても飽きさせない工夫がされている。甘さの後に酸っぱさがくるようにしてあったり、果物をソースに使ったりと素晴らしい腕前ですな。



「うまうまにゃ」


「にゃ」


「がう」



 うちの腹ペコ魔人の本領発揮、見ていて気持ち良いを通り越して胸やけがする……。



「みぃ……」



 彼らの無限胃袋は、ミーちゃんバッグに匹敵するじゃないだろうかとさえ思えてしまう。デザートまで完食し終わった時には十の鐘がなっていたよ……。みなさんご迷惑おかけして申し訳ありませんです。



「みぃ……」




 翌朝も、何事も無く朝食を食べて宿を出る。昨日の料理はもう消化されたのだろうか。恐るべし、無限胃袋。


 港から王宮まで大きな道が一本でーんと通っている道を、王宮に向かってスミレを歩かせる。公都のうえ港街と言う事もあり、この街は活気にあふれていてその道を多くの人や荷馬車が往来しているのはこの地が安定してると言う事の証だろう。


 王宮の門で名前を告げると、すぐに執事さんが来て大公様の執務室に案内された。


 ソファーに座ってお茶を飲んで、大公様が来るのを待つ。ペロ、セラ、ルーくんは侍女さん達にモフモフ、ちやほやされてる。ふん、俺にはミーちゃんが居るんだからね。



「み~」



 なんて、ミーちゃんをモフっていたら、大公様が部屋に入って来た。



「ネロ君、よく来た。無理を言って申し訳ないな」


「いえ、お気になさらずに。少々困惑気味ではありますが……」


「ワッハッハッハッ! なに、誰も取って喰おうなどと思っとらんよ。ネロ君達がエレナの依頼で中継地に食料品などを運んだと聞いてな、正式に依頼しようかと思っただけじゃよ」



 執事さんが書類を渡してきた。


 内容は神猫商会への依頼になっていて、中継地への食料品等の買い付けと運搬になっている。契約期間は二年毎の更新で二ヶ月に一度の搬入になっているね。


 契約金が年金貨四百二十枚と多いような気がするけど、それはミーちゃんとスミレありきの話。もし、どちらかが行けなくなった場合、商隊を組んでハンターさんを雇い、道中の宿泊、食事の用意をしなくちゃならなくなる。それに、帰りは空荷の非効率。年六回で割ると七百万レト、食料品などの買い付け代は別の支払いだけど、赤字覚悟。ミーちゃんとスミレが居なければ、ハイリスクローリターンだね。


 うーん、代表どうします?



「み~!」



 代表はやる気満々のようです。パトさんとの取引と一緒にすれば問題は無いと思う。駄目な時は諦めて赤字覚悟で商隊を出すしかないね。これは神猫商会にとってはチャンスなんだと思う事にしよう。ヒルデンブルグ大公国と取引があると言う実績にはなる。損して得取れだね。もちろん、損するつもりは毛頭ありませんがね。




「み~!」





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