129神猫 ミーちゃん、実はブロッケン山の主!?

 パッパカ、パッパカ走ってます。スミレさんは走るの大好きです。周りの事など気にしません。スミレさんは走るの大好き、パッパカ、パッパカ走ってます。



「み~♪」



 ねぇスミレ~、少しは周りに気を使おうよ……。モンスターは別に良いよ。でもね、ハンターさんもビックリして動きが止まるんだよ。そのせいで怪我したらハンターさんに悪いでしょう。ハンターさんだけじゃないよ、商隊のバムもビックリして急停止してたよね。下手したら乗ってる人が怪我しちゃうよ?


 ぶるるっと、そんなの私のせいじゃないわよ! フンって仕草を見せてるね。スミレさん、お手柔らかにお願いしますよ~。


 セストに着いて宿をとった後買い出しタイム。飛龍の中継地に持って行く物を買って行く。もう、店じまいの時間なので、どんどんまけてくれる。野菜に果物、根こそぎ買ってもお店の人は喜んでるので問題ない。


 残念ながら時間が無いのでいつもの武器などの物色はできなかったけど、必要な物は全て揃った。だいぶまけてもらったので予想以上の量になってしまった。少ないなら不味いけど、多いなら文句はないでしょう。


 お酒は明日フォルテ地方で以前お酒を買った村に寄って買う予定。牙王さん達も喜ぶしね。


 朝早く出発して以前エールなどのお酒を買った村に寄って、お酒を大量に買う事ができた。これも商業ギルド証のおかげです。少しばかりですが、日用品などを売ってあげたら村の人達が喜んでくれ、特別に数の少ない蒸留酒も譲ってくれましたよ。ラッキーです。


 蒸留酒は造るのが面倒なので出回る事が少ないのですが、お酒の好きな人からすると喉から手が出る程欲しがるそうです。


 今回で神猫商会を覚えてもらったので、次に来た時も売ってくれると言ってます。この村は大事にしないと駄目だね。次来る時はいろいろこの村の役に立ちそうな物を揃えて来よう。


 ブロッケン山の麓のワインを造ってる村も同じでした。ブロッケン山を通って行く商隊が減ったせいで、村に寄る商隊が減ってるそうです。ブロッケン山を迂回してヒルデンブルグ大公国に行くので、できるだけ日数を掛けたくないらしいね。その逆のルミエール王国に来るのも同じだろうしね。


 困ったもんだね。早いとこ、牙王さんとの話を詰めてもらわないと、みんなが大変だよ。未だにハンターさん常駐してるし。




「よく来たな、ミー様。歓迎するぜ」


「ようこそおいでくださいました。ミー様」


「み~」



 ミーちゃんはでーんと構えています。実はブロッケン山の主ってミーちゃんじゃないの?


 冷やしたエールを出す。牙王さんもロデムさんもニンマリだ。


 ミーちゃんのところには白狼と黒豹のお子ちゃま達が、わんさか集まってきた。何かもらえると思っているんだね。その期待にお答えして、ミーちゃんクッキーを出してあげたよ。


 ミーちゃんおチビちゃんに囲まれペロペロに大忙し、セラも頑張ってるけど多いからね。その中にルーくんとペロが混じって大騒ぎ状態。珍しくスミレが地面に座ってお子ちゃま達の相手をしている。



「今日来た理由はあれか?」


「あれって何ですか?」


「東に現れた強い気配です。全部で五つですね」



 どうやら、ロタリンギアの勇者召喚のようだ。それにしても、五人も呼んだのか? 牙王さんとロデムさんに勇者召喚の話を聞かせた。



「うーん、勇者ってあんなものなのか?」


「聞いていた話と違いますね」



 ん? どう言う意味です?



「それほど、大きい気配じゃなかったぜ」


「一人一人はオークキングの足元にも及ばないでしょう」


「勇者は魔王が恐れおののくなんて聞いていたが、デマだったんだな」



 うーん、どうだろうか? ゼストギルド長の推測通りなら改変された後、初期化された可能性がある。俺みたいにね。まあ、俺の場合は一から造られたんだけど。



「伸びしろが大きいのでは?」


「ふむ、ネロ殿の言う事には一理あるかもな」


「そうですね、そうじゃないとプチっと潰されますね」



 プチなんですね……プチ……。ルーくんが俺の膝の上に乗って来た。遊び疲れたのかな?



「我々がゴブリンの方に偵察を出しました時、キラースパイダークイーンから神の眷属を連れた人族と手を組んだと聞きましたが、ネロ殿ですかな?」


「そうです。今はお互いに争ってる場合ではないですからね」


「確かにな、あそこを抜けられると、次の標的が俺達になりかねん」


「我々も彼女達と同盟関係を結びました。当面は守るだけですが」



 昨日、騎竜隊がゴブリンの本拠地に攻撃を仕掛けたはず。どうなったんだろうね。



「奴ら街道を挟んだ西側の魔王にも攻撃してるぜ。手当たり次第って感じだ」


「せっかくおとなしくしている魔王に攻撃するなんて、大きな戦いにならねば良いのですが……」


「下手すりゃ、南の魔王達も動くぜ。迷惑な話だ」


「ヒルデンブルグに知らせた方が良いですかね?」


「まあ、どっちでも良いんじゃねぇか。向こうのドラゴンも気付いているだろうしよ」



 ヒルデンブルグ大公国は竜と盟約を結んでいるから、とうに気付いていると言っている。



「それで、ネロ殿のこちらに来たご用件は?」


「パトさんとの取引です。誰かに頼もうかと思ったのですが、そうもいかないようで」


「それは良い事だ。俺達と違って妖精族は苦労してるからな」


「牙王さん達は必要な物はないのですか?」


「無い! 俺達はこの山があれば、なに不自由しないからな。強いて言うなら酒が欲しいな!」


「たまに妖精族から頂くくらいですから」


「わかりました。それを対価として頂きましょう」


「おぉー、できるのか!」


「ブロッケン山を安全に通れるようにするのですから、充分に対価を要求できます。飛龍の中継地だって貸してるんですから」


「ネロ殿、よろしくお願いします。できれば、ネロ殿が使っておられた毛布なども頂けると助かります。今の時期は過ごしやすいですが冬になると、チビ達には厳しいものがありますので」



 どうやら、考えれば他にもありそうだね。少し考えてみようか。



「がう」





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