116神猫 ミーちゃん、お姫様認定される。

 絶望の淵に落とされたような顔をしているミーちゃんの顔を拭いてから、王妃様に地図を見てもらう。



「えぇっと、ネロ君。これは何かしら?」


「頼まれていた最前線の状況の地図ですが?」


「私……そんな事、頼んだかしら?」



 王妃様はニーアさんを見ている。そのニーアさんは首を横に振ってるね。あれ?



「前線を見てきて欲しいって言われた気がしたんですけど……」


「確かに言いました。でも、これは最前線どころか敵陣の中の事のように見えるけど……」


「ですが、支度金って金貨二百枚頂きましたよね……」


「ネロ様、報酬と支度金と申し上げたと存知あげます」


「報酬と支度金の割合は……」


「報酬金貨百五十枚、支度金五十枚です」



 やっちまったな……。違うの、違うんですか? 報酬が金貨百五十枚なんて、庶民の感覚では無理ですよ……。俺の考えでは報酬金貨二十枚、支度金百八十枚だと思ってましたよ……。



「「「……」」」



 王妃様、ニーアさん、俺三人が顔を見合わせて何も言葉を発しない。金銭感覚のズレに今気付いたようです。



「ホホホ……ネロ君、無事で帰って来てくれてなによりです。大事な友人を失うところでしたわ」


「私が説明を怠ったばかりにネロ様に危険に晒させてしまい、誠に申し訳ありません。どのような罰もお受け致しますので、王妃様を責めないでくださいませ」


「いやいや、罰だなんて……。勘違いした俺が悪い訳ですから」


「それにしても、これネロ君が調べたの?」


「優秀なハンターを雇いました。それにマップスキル持ちなんで」


「取り敢えず、アーデルベルトと第一騎士団の団長ウィリバルトを呼びましょう」


「アーデルベルト様は来客中でございます」



 ニーアさんがチッラっと俺を見る。



「ネロ君のお知り合いかしら?」


「竜爪のジクムントさんです」


「あら、それなら会ってみたいわ。ニーア、みなをお茶にご招待して。もちろん陛下もよ」


「承知しました」



 ハァ……宰相様だけでなく、国王様まで……本気ですか?



「あら、前にゆっくり会いたいって言ってなかったかしら?」



 それは、国王様が仰った事で俺じゃないですよね。



「まあ、良いじゃない。これは凄い情報よ。ご褒美期待できるわ」



 ご褒美は欲しいけど……胃が痛くなってきた。


 侍女さん達が大急ぎでテーブルや椅子の準備を始めている。


 そんな中最初に現れたのは騎士様と執事さんを連れた、いつぞやお風呂であったイケメンさn……もとい国王様ですよ。


 跪こうとしたら、アンネリーゼの友人なのだから必要ないと言われた。そう仰るなら気にしない事にします。



「私は第一騎士団を預かるウィリバルトと申す」



 初老に差し掛かった、これぞ軍人の鏡と言った方です。ダンディーなおじさんって感じかな。握手を交わした。ごっつい手ですね。歴戦の強者ってオーラを発しているはず。おそらくね、俺には見えないけど。



「ネロです。この子がミーちゃん。向こうに居るのがペロとセラにルーくんです」


「見てください。ユリウス様。この子がミーちゃんですわ」


「み~」



 王妃様が俺からミーちゃんを奪って、国王様に見せている。


 ミーちゃんもサービス精神旺盛なのか、相手がイケメンだからなのか、いつも以上に可愛らしくしているよ。国王様の手をペロペロしたりスリスリしている。



「本当に可愛らしい子猫だね。ルカも可愛いがこの子は何かが違うな」



 一瞬ドキリとする。モンスターの中にはミーちゃんが神の眷属とわかる者が居るのは牙王さん達を見てわかっているけど、人の中にも何かを感じられる人が居るのだろうかと思ってしまった。



「なんと言うか……気品を感じさせるな。猫のプリンセスと言うところかな」


「み~」



 ミーちゃん照れてます。プリンセスオブキャットの称号を得ました。なんてね。


 ニーアさんと執事さんがお茶を用意してくれ、ミーちゃん談議に花を咲かせている。ウィリバルトさんもミーちゃんを微笑ましく見ているので、可愛いものは嫌いじゃないと見える。触りたいけど国王様がミーちゃんと戯れて居るので、我慢しているといった様子かな。


 そんな所に宰相様とジンさんがやって来て宰相様は臣下の礼を取ったけど、ジンさんは何が起きてるか理解できずに立ち尽くしている。



「ジクムント殿、陛下の御前ぞ」



 宰相様の声で我に返ったジンさんは今度は土下座して動かない。ジンさん程の人でもこうなるのかぁ。どうしようか? でも、今さらだよねぇー。気にしない、気にしちゃ駄目だ。



「成程、君が戻っていたのか」



 宰相様がいつもの如く、眼鏡をずらしてギロリと見てくる。怖いんですけど……。


 何とかジンさんを椅子に座らせたけど、口をパクパクさせ目が虚ろです。大丈夫かな?



「それで、ここに我々を呼んだのは、お茶会と言う訳ではないのだろ。アンネリーゼ」


「フフフ……ただのお茶会ではご不満かしら? ユリウス様」


「宰相にウィリバルトまで呼ぶのだ。例の件かな?」


「そちらとは別件でございますわ。今日はネロ君のお披露目と、ネロ君が持ち帰った情報のご褒美を頂きたいのですわ」


「巡察使の件ですかな?」


「そう、ちょっとだけ考えの行き違いがあったけど、とても重要な情報を持ち帰ってくれましたのよ」



 侍女さん達がみなさんのお茶を片付け、テーブルにさっき描いた地図を広げる。



「これは?」


「ネロ君、説明お願いね」



 と言う事で、説明を始める。


 ミーちゃんは国王様にモフられて気持ち良さそう。


 俺は、この国のトップに囲まれ胃が痛いです。



「み~」





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