117神猫 ミーちゃん、ちょっとだけ腹の虫が収まる。
目が虚ろだったジンさんも復活し、ここに居る全員が地図を凝視している。
「どうやって、この情報を得たのかね。君に依頼したのは前線の状況確認だったはずだが?」
「えぇっと、そこが考え違いだったところで、頂いたお金がほぼ支度金と勘違いしまして……前線を見てくると言うのを、敵の情報を調べてくると勘違いしました……」
「それで」
「クイントのハンターギルドで優秀なハンターを二パーティー雇い調査に行った次第です」
「ネロ君と言ったね。騎士団の者は連れて行かなかったのかな?」
騎士団長のウィリバルトさんはやっぱり気になるよね。
「第三騎士団長ベルンハルト殿に頼まれましたので連れて行こうとは思ったのですが、残念ながら適材適所と言う言葉があるように当日に不適格と判断し同行は拒否させて頂きました」
「騎士では役に立たないと?」
「全ての騎士がそうではないと思いますが、品格、人格、能力全て不適格でした」
「……その者の名は?」
「確か、アイクと言ってましたね」
「第三騎士団のアイク……」
「コンラディン候の倅にそのような名がありましたね」
宰相様とウィリバルトさんがコソコソ話しています。ミーちゃん、ちょっとは腹の虫が収まったんじゃない。さりげなくチクってやったよ。
「み~」
そうでしょう、そうでしょう。
「ところでネロ君、このモンスターと話をして一時的な同盟関係を結んだと言う事だがどうやったのかね?」
「モンスターの高位の者には人の言葉を理解する者もいます。実際に私の連れのセラの祖父やルディの父親は人の言葉を喋ります」
「ブロッケン山の主の事だね。アンネリーゼから聞いている。その虫系モンスターのリーダーも喋ったのかね?」
「言葉は理解していましたが喋る事はできませんでした」
「ならどうやって同盟関係を結んだのかな」
「ケットシーのペロはモンスターとある程度意思の疎通ができますので、仲介に入ってもらいました」
「ケットシー、妖精族か……」
宰相様がギロリと睨んで
「それを我々に信じろと」
「彼らもゴブリンに攻められ守りに必死、守るだけなら何とかなるという状況。共闘はできずとも背後気にせず戦えるのは、我々にとっても彼らにとっても大きな益と考え、勝手ながら不戦関係を持ち掛け向こうも了承しました」
「にわかには信じられないですな」
「ですが、ゴブリンに襲われた際も助けてくれましたし、彼らのテリトリーで野営した時も一切襲われませんでした。信じられないと言うのはわかりますが、わざわざこちらから攻撃して敵を増やす必要はないと思いますが」
「……」
「確かにネロ君の言う通りですな」
国王様とウィリバルトさんは納得してくれたみたいです。
「して、ネロ君はこの状況をどう見るかね」
「ウォルフガング殿にも同じ事を聞かれお答えしましたが、鼻で笑われた素人考えですがよろしいですか?」
「構わぬよ。しかし、ウォルフガングがなぁ」
ミーちゃん、またまたチクってやったぜ。もっと後で言ってやるつもりだよ。任せとけ。
「み~」
ウォルフガングさんに説明した事をそのまま説明した。
「ふむ。確かにこのままでは、砦化したとはいえ、落ちるであろうな」
「支えきれないか?」
「ネロ君の言う通り、今のままでは厳しいですな。すべては時間ですな」
「アンネリーゼ。お父上の力は借りれぬか」
「こうなると、馬鹿貴族が本当に邪魔ですわね。本拠地の攻撃はお願いしてみますわ。丁度ブロッケン山に部隊がいますので、ですが馬鹿貴族とかち合わないようにしなければなりませんね。アーデルベルト、どうなっていますか?」
「多くの者が参加するようですな。名ばかりの貴族から一代貴族まで手当たり次第に声を掛けていますな、ヴィッテルスバッハ候は」
「それで、どうしますか?」
「領地に戻って軍を率いるのは、殆どが息子達。彼奴らは王都に残り内部より蜂起する手筈。こちらはジクムント殿達の手を借り情報を集めます。実際に事を起こすのはゴブリンとの戦いの火蓋が切られた後と考えております。ジクムント殿、よろしいな」
「はひっ! お、お任せくだせぇ……」
「ジクムント殿、お願いしますね。事が起こるまではまだ時間がありそうです。アーデルベルトとウィリバルトで話を詰めなさい」
「「承知しました」」
「最後に、ネロ君。前線を見た、率直な意見を聞きたいわ」
言って良いのかな? オブラートに包んだ方が良いのかな?
「何を言っても罰する気はないから安心したまえ、君が見たそのままで構わない」
まあ、国王様がそう仰るなら、そうしましょうかね。
「第三騎士団は貴族の集まりと言うのもあり一般常識に欠けます。第二騎士団はエリート意識が強く、他人の意見に耳を貸そうとしません。ハンターギルドもその事を知っているので連携を取る気はないと思います。そこに傭兵部隊が加われば……」
「加われば?」
「もう指揮系統は無いにも等しいでしょう。ゴブリンに良いように攻撃され敗退。と言うところでしょうか」
「ゴブリンに負けると?」
「ゴブリン達にはキングを頂点とした厳格な指揮系統があります。一匹一匹は脅威にならなくとも統率された十万のゴブリン相手に……今の状態で勝てるとは思えません」
「求心力が必要と言う事ね。今の状況では一番難しいものね……」
みなさん悩んでいるね。いっその事、ミーちゃんを旗頭にしちゃえば誰も文句を言わないんじゃない?
「み~?」
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