115神猫 ミーちゃん、餡子は別腹です。

 ランチはポークチャップ。ここのマスターもなかなかの腕前、やりますなぁ。



「ほんとに食ったな……」


「デザートは別腹にゃ」



 あぁ、ペロ余計な事言うから、ミーちゃんがジ~イと俺を見てるよ。ジ~イとね。



「今食べたら夜は無しだからね」


「みぃ……」



 そんな悲しい顔しても駄目です。クッキーと餡子どっちにするの?



「みぃ……」



 クッキーを出してきたね。餡子はゆっくり食べたいみたいです。


 お皿にクッキーを出してお茶を注文する。ミーちゃん達はカリカリ食べてる。俺もご相伴に預かりますが、これがまた美味しんだよね。もちろん、ジンさんとユーリさんにも勧めたよ。



「話って何ですか?」


「個人依頼が入った。国からだ」


「それが何か?」


「俺だけじゃない。あの件に関わった者の中で腕の立つ者にもきている」


「で?」


「で、ってよう……。なんとも思わねぇのか?」


「今から王宮に行きますから、一緒に行って聞けば良いんじゃないですか?」


「お、王宮って……俺がかよ?」


「他に誰が居るんですか……」


「……」


「あの宰相様に目を付けられた以上、逃げるには得策じゃないですよ」



 と言う事で、駄々をこねるお子ちゃまのようなジンさんを連れて王宮に行く事になった。



「ユーリさんはどうします?」


「わ、私は、え、遠慮しておきます」


「じゃあ、宿だけ取っちゃいますか。後、ユーリさんにお願いがあるのですが……」


「なんでも言ってください!」


「このリストの概算で良いので値段が知りたいです」



 コボルト族のパトさんから預かった素材のリストを渡した。値段が全くわからないので困っていたのだ。ユーリさんならハンターだから知ってる素材も多いだろうし、なにより信頼できる人だからね。



「任せてください。得意分野です!」



 前に泊まっていた宿に部屋をとって、馬を用意したジンさんと連れだって王宮に向かう。


 門番の兵士さんに手形を見せるとニーアさんと馬丁さんが来て、いつも通りスミレは我が物顔で馬丁さんの元に歩いて行く。馬丁さんも慣れたものでスミレをなでなでして可愛いがっている。今日はもう一頭いるけどね。



「ネロ様、そちらのお方は?」


「竜爪のジクムントさんです。宰相様がよくおわかりかと」


「承知しました」



 ニーアさんは近くの兵士さんと何か話しをしてから



「それでは、ジクムント様はこちらの兵士がご案内致します。ネロ様は私とご一緒に」


「お、おい、ネロ!」


「大丈夫ですよ」


「ジンは小心者にゃ~」



 ペロがそれを言うか……。宰相様に会ってビビッていたのは誰でしょうか?



「な、なんの事かにゃ~。ペロ覚えてないにゃ~」


「みぃ……」



 ニーアさんにいつものテラスに案内される。



「ぺろしゃん! み~しゃん! せらしゃん! る~きゅん!」


「みゃ~」



 ルカを抱っこしたレーネ様が走って来てみんなに抱きつく。セラは抱きつかれやすいように黒豹姿に変わっていた。流石です。



「み~」


「姫様、久しぶりにゃ」


「にゃ」


「がう」



 ミーちゃんもルカに会えたのが嬉しいようでルカをペロペロしている。



「ネロ君、元気そうでなによりね」


「王妃様もご健勝のようでなによりでございます。いつ、お会いしてもお美しく……って、口が回らない……」


「フフフ……ネロ君らしいわね。いつも通りでよくてよ」


「ハァ……所詮は平民。申し訳ありません」


「気にしないで、貴族の戯言は聞き飽きてるから」


「それじゃあ、お言葉に甘えまして。そう言えば、エレナさんはどうしたんですか?」


「あら、エレナの事が気になるの」


「そう言う意味で言った訳ではないのですが………」


「エレナは定期的にブロッケン山に行ってるわ」



 中継地作りもだいぶ進んでいるだろうね。


 地図を描く為に王妃様に大きな机と大きな紙を用意してくれるように頼むと、王妃様がニーアさんに目配せし、ニーアさんが控えている侍女さん達に指示を出す。


 その間に王妃様が自らミーちゃんの元に行き、ミーちゃんを抱っこして戻ってきた。一言言ってくれれば連れてくるのにね。



「ミーちゃんはいつ見ても可愛いわねぇ」


「み~」



 王妃様らしからぬ行動でミーちゃんとほっぺ同士をスリスリさせている。ミーちゃんも嬉しそう。



 ニーアさんがお茶の用意を整えたのでミーちゃんクッキーを出した。ミーちゃんがクッキーを食べるのを見て王妃様が



「あら、美味しそうね。食べてみても良いかしら?」



 って、聞いてきたので一枚食べて見せる。王妃は豆乳味のクッキーを食べる。



「美味しいわ……。ミーちゃんの舌は本物ね」



 偽物の舌なんてあるんかい! とは、間違っても突っ込みませんよ。


 レーネ様とルカもやって来て一口食べてみる。もちろん、ミーちゃんクッキーにご満悦。ミーちゃん自らルカにクッキーを分けてあげてる姿はお姉ちゃんだね。


 そんな姿を王妃様が見ながら



「ルカはレーネと仲良しだから、奪う訳にはいかないのよ。ねぇ、ネロ君。私にもミーちゃんみたいな可愛らしい猫が欲しいわ」


「本気ですか?」


「本気よ。陛下もルカを撫でてると、心が安らぐと仰ってるわ」


「わかりました。ペロに言って探してもらいます」


「ペロちゃんが探すの?」


「ペロは猫の言葉がわかりますから、ちゃんと周りに説明して納得してもらってから引き取って来てもらいます。要望があれば、直接ペロに言った方が早いと思います」



 そう言ってる間に部屋の方にテーブルと紙が用意されたようです。ニーアさんに連られ部屋に入り、紙にマップスキルから描き写しを始める。紙もペンも一級品、描き心地が全然違うので滑るように描けている。


 描き終わったので王妃様に見てもらおうと戻ると……ミーちゃんのお口周りが汚れていて、これぞ至福の時って顔をしてるねぇ。そう言えば、ミーちゃんにとってここはパラダイス。



「ミーちゃん。今日はもう餡子お預けね」


「み、みぃ……」





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る