112神猫 ミーちゃん、ネロ君はお子ちゃまだと思う。

『グラン・フィル』は大賑わいです。


 蒼竜の咆哮と暗闇の牙のみなさんに、ハンターギルドの酒場のマスターサイクスさんの師匠のお店だと言ったら納得してました。


 ミーちゃんとルーくんは、既に食事を終えてみんなにモフモフされてます。ペロとセラはまだまだいけそうですね。


 先程、セリオンギルド長も合流して、更に賑わってきました。



「ミュラー、お前達はこの後どうするんだ?」



 暗闇の牙のケヴィンさんがミュラーさんに聞いている。俺も興味があるね。



「蒼竜の咆哮は今日で一旦解散だ」


「本気か?」


「嗚呼、ミランダとユーリが今日でハンターを引退する」



 へぇ、ミランダさんの話はなんとなく聞いていたけど、ユーリさんも引退するんだ……。



「私は治療院を開くつもり。でも、当分はギルド長からの依頼でギルド専属の治療士をやる事になるわ。治療院を開くのはこの戦いが終わってからね」


「私はセリオンギルド長の勧めで、王都のハンターギルドの買い取り主任補佐として王都に行きます。この戦いでは私では余りお役に立つ事はできませんので……」



 成程、ユーリさんは鑑定持ちだし熟練度も高いから適材適所だね。でも、ユーリさん程の弓の名手なら十分ここでも役に立つと思うけど。



「成程、成程、王都にはネロ君が居るからね~。いやぁー、熱い、熱いね~」


「シャ、シャイナ! な、なに言ってるんですか!」



 ん? なんで、俺の名前が出てくるの? 王都まで乗っけて行って欲しいのかな?



「みぃ……」



 な、なに……ミーちゃん。また、残念な子を見る目をしてるけど……ため息までしてるし……。



「ネロはお子ちゃまだにゃ」


「にゃ」


「がう」



 ちょ、ちょっと! 君達まで……一体何なのさ!




「我々は、当分は個人で動く事になる。ゴブリンとの戦いは個人依頼だしな」


「そうじゃな。他の依頼を受けるより、ゴブリン相手に戦っとる方が儂は性にあっとる」


「あたしはどうしようかな~。弓隊にでも入れてもらおうかしら?」


「俺もどうっすかな~。まあ、ちょっと休んで考えるわ」



 その後も、ギルド長を交えて話は続いた。



「ギルド長。今度、土スキル使っている所見せてください」


「構わんが、明日王都に行くんだろ」


「また、来た時にでもお願いします」



 王都に行くので、ユーリさんに明日、出発しますが乗って行きますか? って、聞いたら頬を上気させコクコク頷いていた。


 荷物はミランダさんとシャイナさんが梱包して、後で王都のハンターギルドに送ってくれる事になったようです。明日の九の鐘に門の前で待ち合わせにして、今日はお開きになりました。とても楽しいひと時でした。


 当分、このお店に来れないのは残念で仕方がないです。



 翌朝は、出発前にペロの鎧を取りに職人さんの所に向かう。



「できてるぜ」



 ペロに職人さんが着け方を教えていく。黒光りする鎧に赤マント。ペロがちょっと格好良く見えてしまったよ。



「軽いにゃ!」


「軽いが頑丈だ。ソルジャーアントの皮にグランベアの皮を裏地に使っている。間違っても矢は刺さらんよ。余った素材で兜も作った」



 うーん、兜と言うより仮面? 怪盗ペロ仮面、参上! って感じ? 或いはニャントマンかな……。


 ペロにミーちゃんの手鏡で自分の姿を見せてあげる。



「オォ~! ニャンダホ~!」



 相当気に入ったようです。俺なら拒絶するけどね……。



「姫~! ありがとうにゃ~」


「みぃ……」



 珍しくペロがミーちゃんを抱っこして、チュッチュッしたら黒豹に戻ったセラに前足で踏みつけられ牙をむかれてる。



「ふぎゃー。セラにゃん、なにするにゃ~」



 倒れ込んだペロに、ルーくんが後ろ足で顔に蹴りを入れて追い討ちをかけている。哀れ、ペロ。



「みぃ……」



 ミーちゃん、困った顔してる。気にしなくて良いと思うよ。



「みんな冷たいにゃ……」



 愛情の裏返しだよ、ペロ。そう、思いなさい……。



 ユーリさんとの約束の門に着くと、蒼竜の咆哮のみなさんも集まっていた。



「ネロ君、ユーリを頼むぞ」


「任せてください」


「いやぁー、モテル男は言う事が違うねぇ。この、この~」



 ルーさん、頭を小突くの止めてください。王都まではスミレならすぐですよ。野営もするつもりは無いですからね。



「みぃ……」



 ミーちゃん、なんで首を振ってるのかな? ヤレヤレって感じに見えるんですけど……。


 ユーリさんはみんなと抱き合って別れを惜しんでいます。


 さて、出発しますか。ペロは猫化でお願いね。スミレはユーリさんを知っているので、乗せてと頼んだ時もすんなり承諾してくれた。


 今日の目的地はセストかな、まあ、セッティモでも良いけどね。



「それじゃあ、みなさんまた会いましょう」


「み~」


「またにゃ~」


「にゃ」


「がう」



 蒼竜の咆哮のみなさんに別れを告げ出発する。みんな見えなくなるまで、手を振ってくれた。


 しかし、毎度の事ながらスミレはフリーダム。手綱は持ってるけど、使う事は無い。手綱を使うより喋った方が早いしね。



「は、速いですね」


「しっかりとつかまっててくださいね」


「はい」



 ひしっと、ユーリさんがしがみついてくるけど、間に余計なペロが居る。俺もユーリさんも鎧着けて無いのに……。残念です。



「暑くるしいにゃ……」


「みぃ……」






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る