111神猫 ミーちゃん、共同浴場でみんなと会う。

 ゼルガドさんの工房に来ています。


 ゼルガドさんはカチャカチャとさっきから、ライフルに望遠鏡らしき物を取り付けている。



「よし、出掛けるぞ。そこに用意した物持ってついて来い」



 ミーちゃん、収納お願いします。



「み~」



 ゼルガドさんの後をついて歩き、街の端の防壁の下まで来た。



「ここなら、風の影響を受けん」



 ミーちゃんに収納してもらっている荷物を出して設置していく。ライフルを固定する台に百メル先に大きな的を設置した。



「ライフルの上に付けたのが望遠鏡だ。伸び縮みするようになっている。最大に伸ばした場合が百五十メル用、最小の場合が百メル用。取り敢えず百メル、百五十メルの調整を済ませる。その間の距離は勘で何とかしろ」



 ライフルを台に固定して、望遠鏡スコープを覗くとぼやけてる。



「手前のつまみでピント調整できるぞ」



 スコープのピントを調整する。四から五倍くらいなのかな? 的の中心にくるようにライフルを固定して撃つ。


 ヒュンッ!


 左右にブレは無く、狙った場所より上に着弾し穴を開ける。



「だいぶ上に当たってます」


「わかった。ちょっと待ってろ」



 カチャカチャと設定を変えてる。



「よし、もう一度撃ってみろ」



 ヒュンッ!


 狙った場所よりほんの少し下に着弾。一センくらいかな? もう一度、ゼルガドさんが調整する。


 再度、撃つ。今度はど真ん中です。



「百メルはこれが基準になるからな。次は百五十メルだ」



 的を五十メル下げ、スコープを伸ばしピント調整して撃つ。今度はだいぶ下に着弾した。



「まあ、当然だな。調整する」



 何度か調整を繰り返し基準の場所を見つける。



「これで良いだろう。工房に戻るぞ」



 は~い。みなさん撤収ですよ~。


 工房に戻りゼルガドさんが作業している間、裏庭で日向ぼっこ。野良猫さん達も寄って来たので、ミーちゃんクッキーを出してあげた。みんな仲良く食べている。ペロだけハムスター状態だけどね。


 ゼルガドさんの作業が終わり、呼ばれたので工房の中に入る。


 先程は、円形のスコープが着いていただけだったのに、今は四角いカバーが着いている。使わない時はレンズ部分を保護するようになっているようだね。



「それだけじゃねぇ。雨の中でも使える、防水の役目もある」



 成程、考えてますなぁ。スコープ自体もライフルから取り外し可能にもなっている。



「こいつを付ける事によって、命中精度は格段に向上する。が、その場所の天気や風向きで精度が変わるのを忘れんな。雨なら飛距離が落ち、雨上がりの後の良い天気なら飛距離は伸びる。百メルと百五十メルには固定できるようにしてあるが、固定を外せば自由に調整できるようにもしてある。後は自分で身に付けな」



 スコープ代は百万レト、予備のシリンダーと弾で百万レト、前金で百万レト払っているので残りを渡す。



「こないだ、銃を注文してきた奴がいたぜ。叩き出したけどな」



 気が早いハンターが居たもんだよ。まだ、使えないって言ったのに……。


 以前、試作品で作った物で試しにやらせたそうですが、全く駄目だったそうです。



「でもよ。今すぐは無理でも、いつか花が開く時が必ずくるぜ。その時は稼ぎまくるぜ! ガッハッハッハッ!」



 頑張ってください……イカレ頭のゼルガドさん。


 みんな、帰るよ~。


 ハンターギルドに戻ると蒼竜の咆哮と暗闇の牙のみなさんが戻って来ていた。ギルド長室に向かい依頼の完了を告げる。ついでに、馬代などの諸費用の清算もした。


 ギルド長が気を利かせて打ち上げ場所に、サイクスさんの師匠のお店『グラン・フィル』を予約貸切にしてくれたそうです。できる男は違うねぇ。


 一旦宿に戻ってスミレの世話をしてから共同浴場に向かう。久しぶりのお風呂ですフルコースでお願いしたね。ペロも今回始めてフルコースに挑戦。ミーちゃん、セラ、ルーくんは当然女風呂に拉致される。


 おや?、中に入ると蒼竜の咆哮と暗闇の牙のみなさんが居る。みなさんはお風呂だけのようで、俺がフルコースを頼んだと知り興味を持ったのかみなさんもフルコースを頼みに行っていた。



「こんなに気持ち良いとは思わなかったな」


「人に洗われるなんぞ信じられん、などと思っておったが間違いじゃったな」


「マッサージも良かったよな、ペロ」


「くすぐったいにゃと思ったにゃけど、だんだん眠くなるほど気持ち良かったにゃ」


「今まで、俺達損してたんだな。ケヴィン、ティム」


「心に余裕ってやつを持たないといかんな。俺達は」


「そうだな……」



 確かに、このフルコースを知ってる知ってないでは、共同浴場を半分しか楽しんでないと思うね。


 風呂を上がるといつも以上に女風呂の方が姦しい。いつもの番台のおばさんに女性客に加えて、蒼竜の咆哮と暗闇の牙の女性陣が居るようです。ミーちゃんは特等席の番台のおばさんの膝の上で、お客さん達に営業スマイルで接客。セラとルーくんは体を張っての接客営業中。みんな働き者です。


 みな、思い思いに風呂上がりを楽しんでいる中、俺とペロは用意しておいた果汁水を凍らせてアイスキャンディーにして舐めている。ペロのアイスキャンディーをルーさんが虎視眈々と狙っていてペロが必死に死守しているのはお約束?


 さてと、『グラン・フィル』に移動しますか。


 打ち上げ自体は多少不安ですが、食事は大変楽しみです。


 ミーちゃん、そろそろ帰るよ~。



「み~」





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