110神猫 ミーちゃん、調査が終わり一安心する。

 やっとの事、白亜の迷宮に戻って来ました。


 これで一安心できる……なんて言ってもいられない。戻った早々だけど第三騎士団長ベルンハルトさんに部屋と大きな紙を用意してもらう。


 ミーちゃん達はスミレの所に行っている。俺も行きたいけど優先順位がね……。


 一メル四方の紙にマップスキルを合わせて描き写していく。これがなかなか大変。同じ物を二枚作る。この場所用とギルド長に渡す分、王妃様に渡すのは王都に戻ってから描けば良いや。


 描き写し終わった後、ベルンハルトさんに言って指揮官クラスを集めてもらう。まだ、歩兵部隊や傭兵部隊、後続の第二騎士団が着いていないのでそれ程人は居ない。それでも、ギルド側数人とハンターの代表が数人集まった。


 こちら側は俺とミュラーさん、ケヴィンさんに出席してもらう。


 中央のテーブルに地図を広げて説明していく。説明していく度に全員の顔色が悪くなっていくのがわかる。予想を遥かに上回る規模、それに西側は調べていないので情報が無い状態。不安になるのは仕方がない。



「そんな数、この砦では防げんぞ」


「それより、半日足らずの場所に集落がある事が問題なのでは?」


「敵の本拠地までの道が無いのも問題だ……」



 騎士団、ギルド問わず意見が相次ぎ飛び出す。今後の作戦に関しては、俺が関与すべき事ではない。本職の者が考える事だろう。



「この東側の赤線が引かれた場所は何かな?」


「そこは、今現在ゴブリンと争っている虫系モンスターのテリトリーです。虫系モンスターのリーダーらしき者と話ができまして、ゴブリンと争っている間は人と虫系モンスターはお互いに争わないと話を付けて来ました」


「そんな話、信じられるか!」


「高位のモンスターは人語を理解しています。ゴブリンジェネラルも人語を喋ると聞いています。おかしなことではないと思いますが?」


「それとこれとは話が別だ!」



 騎士団の方は本当に頭が固い……。



「だが、実際に私の仲間がゴブリンに襲われていた所を助けてもらっている。今回の調査中、二日程虫系モンスターのテリトリーで野営したが監視はされたが襲われる事はなかった。彼らも人と組もうと思う程、必死なのではないか?」



 ミュラーさん、ナイスなフォローありがとうございます。



「虫系モンスターは自分達のテリトリーを守るので精一杯です。テリトリーから出てくる事はないでしょう。これは我々にとって東側を気にしなくて良いと言う事でもあります。ですが、テリトリー内の虫系モンスターを一体でも倒したら、この話は無くなります」


「「「……」」」


「軍監の方はおられますか?」


「ここに」


「今回の戦いの規律に新しい一文を増やしてください。東側の虫系モンスターのテリトリー内でゴブリン以外のモンスターに手を出した者は厳罰に処す。これより即時発布とします。発令元は宰相様です。急いでくださいね」


「し、しかし……このような前例無き事、簡単には……」


「今のは私が宰相様付き巡察使とわかっていての発言ですか?」


「ぐっ……」


「ギルド側は問題ありますか? 明日にはセリオンギルド長と話をしますが」


「……ありません」


「では、私からの話はこれで以上です。何か他にありますか?」



 全員が顔を見合わせている。



「十万を超えると言う事だが、巡察使殿が自ら見たものか?」


「私が実際に見ました。正直、目を疑いました。どうやってこの短時間にここまで増やせるのかと……」


「ゴブリンキングが生まれている可能性があるのではないか……」


「「「……」」」



 いやぁー、その通りなんですよ。わかりやすく誘導したのだけどね。これで少しは警戒するだろう。早く第二騎士団来て欲しいです。第三騎士団では不安です。



 話し合いが終わりスミレの所に行くと、珍しく甘えた仕草でスリスリしてきた。もしかして、寂しかった? って、言ったらプイっと横を向いてしまった……。機嫌を直してもらう為、ペロと一緒に念入りに世話しましたよ。スミレはツンデレさんだなぁ。


 ミーちゃんは終始スミレの頭に乗ってだら~ってしてます。ミーちゃんもスミレと会えて安心したのかな。


 翌日は、蒼竜の咆哮と暗闇の牙のみなさんには自分達のペースで帰ってくださいと言って出発する。何故なら、スミレが張り切り過ぎているから……俺には止める自信がありません。門を出ると他のみなさんなど眼中に無いと言う程の猛ダッシュ。だから。怖ぇーよ。


 二時間かからずクイントに着きました……。バザーの近くの宿をとり、スミレの世話をしてからハンターギルドに向かいます。


 まだ、ハンターギルドは閑散としていて、フェル、パル美猫親子はカウンターで受付のお姉さん達にモフられていたのでミーちゃん達も参加してもらった。



「み~」



 美猫親子にミーちゃんが挨拶すると、フェルままとパルちゃんはミーちゃんをペロペロしてくれる。仲が良いのは良い事です。


 エバさんがこちらに気付いたのでギルド長に取り次いでもらう。



「予定通りで無事に戻ったようだな。他の者はどうした?」



 スミレで一足先に戻ったと伝える。



「それ程、急を要すると言う事か……」



 確かに重要な話ですが、スミレの件はちょっと違うかなぁ。単にスミレの欲求不満解消とは言い難い……。


 目を泳がせながら、ギルド長の机に地図を広げ説明する。



「既に、そこまでか……。モンスターと話をしたのはネロ君なのだな?」


「はい。ペロが間に入っていますが、十分に意思の疎通は取れました。共闘とまではいきませんでしたけど」


「いや、それでも十分だ二勢力を相手にしなくて済む」



 その後もギルド長と話を続ける。



「この後はどうするんだ?」


「明日、王都に戻ります」


「パミルも王都に出発した。どこかで追い抜くだろうな」


「歩兵部隊や傭兵部隊もまだ着いてないですよね。第二騎士団も来る予定なんですけど……」


「そうだな、早く来て欲しいものだ」



 ギルド長室を後にして、サイクスさんの所でお昼にする。何も考えずにご飯に集中できるのは久しぶりだよ。


 みんな~ご飯だよ~。



「み~」


「ご飯にゃ!」


「にゃ」


「がう」






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