96神猫 ミーちゃん、白亜の迷宮でお泊まりする。
白亜の迷宮、そこは要塞でした。
モスクのようなの建物をぐるっと石の防壁が囲み、迷宮自体の建物の他にも多くの建物が建ち並んでいる。新しく建てられた建物もあり、今も物見やぐらが建設中だ。小さい村クラスはあるんじゃないだろうか。
「これは巡察使殿。いささかお早いお着きでは?」
俺に気付いた騎士団長のベルンハルトさんが、建設中の物見やぐらからこちらに歩いて来て声を掛けてきた。
「クアルトからの帰り道に荷馬車隊がゴブリンに襲われている所に遭遇しました。加勢した後怪我人もいたので微力ながら護衛に加わることにしました」
「!?」
「騎士団も着いたばかりだとは思うのですが、できるだけクイント側の街道の巡回をして頂けませんか?」
「それで、状況は」
「荷馬車は無事です。死者はいませんが怪我人がいます。ゴブリンは五十匹前後でほぼ倒しました」
「承知した。巡回の行程を組みましょう」
「お願いします。それから、どこか場所を貸して頂けませんか?」
「お泊りでしたら部屋を用意させましょう」
「いえ、私的な旅の途中ですのでお気になさらず」
「わかりました。案内させましょう」
ベルンハルトさんは部下を呼んで指示を出し、一人の兵士を連れてきた。
「団長! こいつです。このバトルホースに見覚えがあります! 我々騎士団の横を挨拶せずに警告も無視して走り去った無礼な奴ですよ!」
「控えろ。こちらは巡察使殿だ。貴様の方が無礼者だ。ネロ殿、失礼した。許されよ」
「じゅ、巡察使だって……お、終わった……」
「どうぞ、お気になさらずに。騎士団の巡察に来た訳ではないので」
「ネロ殿を、案内せよ」
「ハッ!」
迷宮の建物の横に案内された。中心部なのでベルンハルトさんは気を使ってくれたんだろう。井戸の場所の教えてもらった。
パミルさんは何が何だかわからないと言った顔をしている。
パミルさんにスミレから降りてもらい、ミーちゃんとセラとルーくんの相手をしてもらってる間に、スミレの世話とテント張りをペロと終わらせる。
「ねえ、ネロ君。説明してもらえる?」
「うーん。無理かな。もう、ハンターギルド職員じゃないんで」
「そう、なら友人として聞かせてくれない?」
それを言われると痛いとこだね。ミーちゃん達は走り回りながらじゃれあっているけど、セラがいるから大丈夫だろう。ペロはテントの中でグースカ寝てます。
「じゃあ、話せる範囲で」
簡単にクイントに来てからの事、王都に行った事、そこで宰相様に会った事を話した。王妃様の事は内緒だよ。
「それで、巡察使って?」
「それは言えませんね」
「危険じゃないの?」
「危険のないようにって言われてますが、この状況下で危険じゃないとこなんて無いですよ」
「そうね、でも気を付ける事に越した事はないわ」
「善処します」
夕食にはまだ早いので、銃の手入れをする。それほど汚れては居ないね。軟金属のカスとかあると思ったけど綺麗なものだ。
「ゴブリンを倒す時に使ってたようだけど、それは何?」
「大気スキル持ちの秘密兵器です」
「大気スキルってあの大気スキル?」
「そう、役立たずと言われてる大気スキルですよ」
地面に絵を描いて、簡単に悦明すると吹き矢の強力版とすぐに理解してくれた。流石、王都のハンターギルド統括主任補佐になるだけの事はあるね。
「面白い使い方ね。ネロ君が考えたの?」
確かに考えたのは俺だけど、そう言う知識をもってるからね。この程度なら知識があれば誰でも思いつくんじゃないかな。
「考えたのは俺ですけど、形にしてくれたのはゼルガドさんって言う職人さんです」
「ゼルガドってあのゼルガド?」
「どのゼルガドですか?」
「イカレ頭のゼルガドよ。荷物頼んだでしょう」
「そのゼルガドさんです」
イカレ頭ってどこの世界でも天才って認められないんだね。って事は後世に名を残すんじゃないのゼルガドさんって。
「大気操作スキルと大気スキル持ちって結構いるのよねぇ。朗報に違いないわね」
「クイントに戻ったら講習会を開こうと思ってます。どれだけ集まるかわかりませんが、ギルド長も協力してくれるそうなんで」
「それは良い事だわ。広く広まれば良いわね」
陽が暮れ始めたので、夕食の準備でもしますか。みんな~戻っておいで~。
「み~」
「にゃ」
「がう」
ミーちゃんに薪を出してもらって火をつけ鍋でお湯を沸かす。ぶつ切りの魚を入れてアクを取って野菜を入れて牛乳を入れ、温まったら塩で味を調えて小麦粉でとろみを出す。完成です。うん、旨そう。
パンとドガさん特製ポテトサラダも出して頂きましょう。
「いただきます」
「み~」
「いただきますにゃ」
「にゃ」
「がう」
「いただきます……」
ルーくん、骨に気をつけて食べてね。セラは骨ごとガリガリ食べてる。そう言えば、骨も十分に熱を加えれば柔らかくなるんだよね? ルーくんの残した骨を水スキルで実験してみる。骨から蒸気が出てきたと思ったらカリカリの骨煎餅ができあがった。やり過ぎたね。次は蒸気が出始めたところで止めると骨が柔らかくなっている。成功です。骨煎餅も柔らかくなった骨もルーくんが美味しく頂きました。
ペロが皿に残った骨を渡してきて、骨煎餅を所望してきたので作ってあげた。
「おぉー。パリパリでにゃんとも心地よい歯ごたえ。それでいてお魚の良い味わい。美味にゃ!」
結局、全ての骨を骨煎餅にさせられた……。
「パミルさん。お口に合いませんでしたか?」
「違うの、なんか贅沢過ぎてこれで良いのかなって」
「うちはいつもこんな感じですよ」
この後、デザートタイムも残ってるしね。ねぇ、ミーちゃん。
「み~」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます