95神猫 ミーちゃん、ゴブリンの集団と遭遇する。

 さあ、出発です。女将さん達総出でお見送りしてくれました。


 女将さんとミーちゃんはしっかりと抱き合って、頬と頬をスリスリして別れを惜しんでる。ドガさんが袋を渡してきた。お昼のサンドイッチだそうです。一抱えあるね。



「次に来た時はもっと旨いもん食わせてやる」


「楽しみにしてます」


「無理せず、気を付けるんだよ」


「女将さん達もお元気で」



 別れは辛いものです。ですが、ここからまたお互いの新しい道が始まるのです。それがまた、交差する事もあるでしょう。だから、寂しくはありません。多くの新しい道を作り多くの人達と道を交差させていく、それが人生&猫生。


 それがわかっていても、何度も振り返って手を振った。やっぱり、寂しいかな……。



「みぃ……」




 門を出てスミレに乗るのに、ペロに猫化してもらった。



「ねぇ、ネロ君。この子ってバトルホースよね。どうしたの?」


「とある調教師さんに譲ってもらいました。スミレと初めて会った時、酷い病気だったので秘伝の万能薬でやっと回復したんです」


「そうなんだ……」



 パミルさん、なんか遠い目をして現実逃避気味。さあ、全員乗ったね。スミレお願い。



「は、速いぃー!」


「ちゃんとつかまっててくださいよ~」


「は~ひぃ」



 まあ、俺も最初は同じようなものだったからね。何も言えない……いや、今もさして変わらないか?


 途中、時計を見るとお昼になっていたので昼食にする。パミルさんは崩れるようにスミレから降りて原っぱに倒れ込んでる。


 スミレの水と飼い葉を用意してから、すぐ横にシートを敷いてドガさんの作ってくれたサンドイッチを食べる。中にあんサンドも入っていたけど、餡子部分だけミーちゃんに食べられました。パンの部分はペロが美味しく頂いたようです。



「ネロ君……ここはどこ?」



 パミルさんはなんとか起き上がり、サンドイッチを食べながら周りをキョロキョロ見てます。



「もうすぐ白亜の迷宮ですかね」


「本当に一日半で着くのね……」


「そうですね。無理すればクイントに着くとは思いますが、無理せず手前の村で一泊しましょう」


「ネロ君に任せるわ……」



 お昼を食べ終わり、のんびりしてから出発。



「これで良いのかしら……」



 そう言われても、いつもの事なので何とも。



 白亜の迷宮に向かう道とクイントに向かう道の別れ道を少し越えた時



「ゴブリンにゃ!」



 どうやら、荷馬車隊がゴブリンの集団に襲われているようです。ハンターも応戦してるけどゴブリンの数が多いようだ。



「スミレ止まって! ペロ! セラ!」


「任せるにゃ!」


「にゃ!」



 ペロとセラが猫化を解き、装備を整えてゴブリンに向かって行く。俺もスミレから降りて、ミーちゃんの入ったキャリーバッグとルーくんをパミルさんに預ける。



「みぃ……」


「がぅ」


「パミルさんは降りずに、そのままでこの子達をお願いします。スミレ頼んだよ」



 スミレはぶるるっと任せてって肯定してくれた。パミルさんはまだ理解が追いついてないようだ。


 スミレの鞍に付けていたホルスターからライフルを引き抜き、ゴブリンに狙いを定めて撃つ。ヒット! 続けざまに撃っていく、弾が無くなり予備のシリンダーに交換して撃ち続ける。致命傷になったのは半分、残りはペロやセラが止めを刺してくれた。


 ライフルをホルスターに戻し、腰からリボルバーを抜きレーザーポインターのスイッチを入れてゴブリンに近づく。ゴブリンがペロとセラの間を抜けて、二匹迫ってくる。片方のゴブリンの顔にレーザーを当て狙いを付けると、レーザーを嫌がり手で顔を覆ってしまった。急遽、隣のゴブリンに狙いを変え瞬時に撃ち倒す。


 再度、隣のゴブリンに狙いを付けて撃つ。神様仕様の猫じゃらしレーザーポインターも良し悪しだとわかった。


 ゴブリンが一匹身を隠しスミレの方に回り込ん出るのが見えた。ゴブリンに狙いを定めようとすると、急に武器を落としてダラーンとなってしまった。鑑定すると、魅了となっているルーくんの魅了眼だろう。魅了眼、怖ぇー。その後、スミレに蹴り飛ばされたね……。



「済まない。助かった」


「まだ終わってません。動ける人は後方の援護に」



 ハンターさんに声を掛けられるけどまだ終わってない。こちらに居たゴブリンは粗方片付けたので、俺達も後方の支援に向かおう。


 ペロとセラを引き連れ後方のゴブリンを倒していく。全弾を撃ち尽くしたので、再装填が必要になった。



「ペロ! 少しの間、俺の守りをお願い!」


「任せるにゃ! 今日の虎徹は良く切れるにゃ!」



 リボルバーのシリンダーと二つの予備のシリンダーにホローポイント弾を詰める。これでまた、戦える。



「ペロ! こっちは準備ができた。行くぞ!」


「わかったにゃ!」



 ペロもセラもバッタバッタとゴブリンを倒していく。俺も二個目の予備のシリンダーに交換したところで立ってるゴブリンが見えなくなった。



「楽勝だにゃ」


「にゃ」



 セラが足元にやって来たので撫でてやる。ペロもセラも強いね。



「その黒豹は君のか?」


「俺の仲間ですから安心してください」


「助かったよ。この荷馬車隊の護衛のリーダーでエルマーだ」



 荷馬車は全部で七台、ハンターさん達も十四人いるそうだ。俺達が間に合ったので、死者は出てないけど怪我人は出たようだ。仕方ないので白亜の迷宮まで一緒に行く事にする。スミレの元に戻ると、ミーちゃんとルーくんが飛びついて来て、顔をペロペロされまくったよ。



「ネロ君! 大丈夫なの!」


「えぇ、終わりました」


「ご、ごめんなさい。こんな経験初めてで……」



 ハンターギルドの受付なら、普通経験しないから仕方ないと思います。


 荷馬車が移動を始めた。倒したゴブリンはそのままにするそうなので、全てもらう事にしてミーちゃんバッグに収納をお願いする。



「み~」



 走り回って回収したら四十六匹だった。残念ながら、魂の器は成長しなかったようだね。


 パミルさんに今日は白亜の迷宮で一泊になる事を伝えた。



「ネロ君に任せているから、問題ないわ」



 荷馬車の最後尾に着いてスミレを歩かせていると、遠くに中東のモスクのようなの白い建物が見えて来た。あれが白亜の迷宮なんだろ。綺麗だね。



「み~」






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