85神猫 ミーちゃん、王宮で食事をする。

 俺はミーちゃんと厨房に向かう。宮廷料理長にお土産のお魚を渡す為にね。



「なんだ、戻って来てたのか?」


「夕方に着いたばかりで、今まで王妃様と宰相様にご報告してました」


「それで、どうした? 欲しい物でもあるのか?」


「いやだなぁー。お土産持って来たんじゃないですかぁ」


「土産だと? 出してみろ」



 厨房の調理台に生魚の他にも手に入れた海産物を並べていく。



「ほう。新鮮だな。取ったばかりのようだ……生でもいけるな。おい! メニューを少し変えるぞ!」



 宮廷料理長の御目に適ったようだね。



「問題は残りをどうするかだな」


「凍らせましょうか?」


「凍らせるたって時間が掛かるだろう、せっかく新鮮な魚がもったいない」



 この世界、冷凍庫はあるけどそれほど冷えるものじゃないので、急速冷凍なんてある訳ない。と言っても俺も水や果物以外やった事ないんだよね。なので試しに一匹やってみる。


 一点ではなく全体を範囲に入れるイメージでやる。範囲から外れると凍らないのは実証済み。水分子よ~止まれ~。魚に霜が付きカチカチに凍りついた。



「凍ったな……で、どうやって解凍すんだ?」


「さあ、そこまでは考えてないので、お任せします」


「……」



 魚自体を凍らせた物と、水の中に入れて水ごと凍らせた二種類を半々にやってみた。宮廷料理長には後で、解凍方法や状態の感想を教えてくださいとお願いしておいたよ。こう言う事は本職に任せるのが一番だからね。


 ついでに、お駄賃にミーちゃん用に餡子もらっておきました。



「み~!」


「夕飯は旨いもの食わせてやる。ちゃんと舌に覚えさせとけ」



 ははは……だから、俺は料理人じゃないんですってば。でも、宮廷料理長の料理は楽しみです。


 みんなの居る部屋に戻ると、モフモフパーティー状態。


 王妃様はセラを撫でては、うっとりとスベスベねぇなんて言ってるし、エレナさんはルーくんにチュッチュッしてる。レーネ様とルカはペロにべったりだね。この場の雰囲気に耐えられないかも。


 それでも我慢してお茶を飲んでると、侍女さんが食事の用意ができましたと呼びに来た。


 正直、緊張のせいで心臓が張り裂けそうです。


 連れて来られた部屋はこじんまりとした部屋、ちょっと拍子抜け。てっきり、王様や他の第二婦人なども一緒に食事をするのかと思っていました。後で聞いた話では、余程の事がないと全員で食べる事はないそうです。



「陛下はどうなされました?」


「まだ、公務があるゆえ先に済ませよ、と仰せでございます」


「そうですか。公務であれば致し方ありません。先に頂きましょう」


「おとぅしゃま……」


「みゃ~」



 レーネ様は寂しそうだね。ルカがレーネ様をペロペロ慰めてる。さあ、こんな時こそ腹ペコ魔人ペロの出番だ! この場をペロの胃袋で明るくしてくれ!


 ミーちゃんにはいつも通り猫缶にミネラルウォーターを用意して、ルーくんとルカのお皿にも猫缶を分けてやり、別の皿にミネラルウォーターも入れておいた。二人は育ち盛りだからね、栄養価の高いご飯と健康の為にミネラルウォーターを飲ませておく。


 ミーちゃんとルーくん、ルカは仲良く食べてる。


 さて、問題は腹ペコ魔人の二名だ。王妃様やレーネ様、エレナさんは品良く食事をなさっている。ペロとセラには一人ずつ給仕の方がついたようだ。置かれた料理が瞬く間になくなっていく。セラに至っては元の黒豹の姿に戻って食べてるね……。


 宮廷料理長が作る料理だと言うのに、味わって食べなさい! もったいない。


 メインディッシュのお魚料理だけは、王妃様とレーネ様、ルカ優先で頂いてもらった。



「このお魚はネロ君のお土産なの?」


「ヴィルヘルムの市場で買って来た物です」


「とても美味しくて、それでいて懐かしく感じる味ね。ありがとう、ネロ君」


「おいちぃでしゅ!」


「みゃ~」


「ウマウマにゃ」


「にゃ」


「喜んで頂けて、買って来た甲斐がありました」


「み~」



 ミーちゃんも喜んでいますよ。



 いやぁ、食べたね。ペロとセラが……。最後は二人の独壇場でした。流石に王妃様とレーネ様は開いた口が塞がらないようだったね。



「ネロ君、お金に困ってない?」



 王妃様に変な気を遣わせてしまったようです。ははは……。


 食事の後は部屋に戻ってティータイム、優雅です。若干二名動けない者がいますが。ミーちゃんは餡子を舐めてます。満面の笑みで。


 王妃様達にもう一つのお土産を渡す。サンゴのアクセサリーだよ。



「ネロ君、本当に買って来たの?」


「値段は聞かないでください」



 王妃様には赤のブレスレット、レーネ様には赤と白のお魚のブローチ、ニーアさんには青の涙型のペンダント。



「かわいぃ!」


「私にも頂けるのですか?」



 ついでに、黒真珠を見せた。



「この黒真珠、私の故郷では白真珠より貴重な物として扱われるのですが、こちらでは違うみたいですね」


「そうね。やはり真珠と言えば白じゃないのかしら? どう思う、エレナ」


「最近は白の上にピンクもあるようです。この黒真珠、どうするつもりなの?」


「どこかのアクセサリー屋でミーちゃん用のネックレスにしてみようかと」


「み~?」


「それでは、私の知り合いの職人に頼みましょうか?」


「ニーアさん、それは助かります。ぜひ、お願いします」



 ニーアさんは、ミーちゃんの首周りを測り始めた。セラが羨ましそうに見て来るけど、セラは黒豹だから色がね……。今度、リボンでも買ってあげるね。



「にゃ」





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