84神猫 ミーちゃん、王宮に泊まる。
エレナさんは直接王宮に向かうようなので、夕方ですが俺達も王宮に向かう。
先にエレナさんが着いていたので、門はすんなり通され通用口ではニーアさんと馬丁さんが待っていてくれました。
スミレはいつも良くしてくれる馬丁さんに素直について行く。疲れたろうからゆっくり休んでね。
俺達はニーアさんに連れられいつものテラスではなく奥の部屋の方に案内された。
「ぺろしゃん!」
「みゃ~」
レーネ様がルカを抱っこして走って来たけど、少し手前で立ち止まって固まってしまったよ?
「ねこしゃんにわんわん!」
「みゃ~」
そう言う事ですか、黒猫と子狼が増えてますからね。
「だいぶ早く戻って来たわね。ネロ君」
「スミレがだいぶ本調子に戻って来たのと、戻りはモンスターを気にせず帰って来れましたので」
王妃様はソファーに座り対面にはエレナさんが座っている。こうしてみると、髪の色は違うけど顔立ちが似ているのが良くわかる。
ニーアさんに大公様の手紙と短剣、手形を渡したら、何故かミーちゃんも連れて行かれた……。
「ミーちゃんは、いつ見ても可愛いらしいわね」
「み~」
「新しい子も増えたみたいね。後で抱っこさせてね」
「その事で、後程ご相談があります」
「相談? わかりました。後で伺いますわ」
王妃様はミーちゃんを抱っこしたまま、大公様の手紙を読んでいる。
ニーアさんにエレナさんの横に座るよう促されたので座る事にする。立ったままでも良いんだけどね。ニーアさんがお茶をいれてくれたので、レーネ様達が戯れているのを見ながらお茶を飲む。
「みゃ~」
足元にルカがやって来たので顔の位置まで抱きあげた。
「ルカ、元気そうだね」
「みゃ~」
「ネロ君、その子は?」
エレナさんが聞いてきたので、ルカを渡して母親を亡くしたルカをレーネ様の友達にして欲しいと頼んだ事を話した。
「小っちゃいペロちゃんみたい」
「みゃ~」
「ルカは人懐っこいので王宮内でも人気者でございます」
ニーアさんがドヤ顔してるのは何故?
「レーネ様、良いな~。ネロ君、私にも~猫欲しい~」
「宿舎で飼えるんですか?」
「無理……」
「じゃあ、諦めてください」
「ぐすん……」
王妃様が手紙を読み終わったようです。
「エレナ。この後の状況は?」
「はい。ブロッケン山に数日中には中継地が作られます」
「エレナはブロッケン山の主に会ったのかしら?」
「会いました」
「どう思って?」
「害意は感じられませんでした。バロンもおとなしかったです」
「そう……ネロ君、さっきの話を伺いましょうか」
セラとルーくんを呼んでセラは元の姿に戻ってもらう。王妃様は驚いていたけど、レーネ様は喜んで抱きついていた。レーネ様は将来大物になると思うね。
「この子が白狼族の長の子でルディでルーくん。この子が黒豹族の長の孫でセラです。彼らは人族との争いは望まないと言っています。ブロッケン山の街道の安全も約束してくれました。まだ、話を詰める必要はありますが、これは人族とっても良い話だと思います」
「ネロ君はどちらかと言うと政治家向きのようね。正式にうちで働かない? アーデルベルトの下で働けば未来の宰相も夢じゃないわよ」
勘弁してください。あんな怖い人の下で働くなんて嫌です。
「御冗談がすぎますよ。私は平民で、それも捨て子です。貴族の仲間入りなんて無理ですよ」
「これから大掃除が始まるのよ? どこかの貴族の庶子って事にして、新興貴族として成り上がる事だって可能よ。それだけの功績は十分にあると思うわ」
「貴族になれば、こうして友人としてお会いする事はなくなるでしょう。今のままが気楽で良いですよ」
「まあ、残念。でも、ネロ君ならそう言うと思っていたわ。残念なのは本当よ」
「冗談はさておき、本題に入らせて頂きます。できれば、宰相様も呼んで頂きたいのですが……」
「あら? 今までの話より大事な事なの?」
真面目な顔で頷くと、王妃様も何か感じたらしくすぐにニーアさんに宰相様を呼びに行くよう指示を出してくれた。
「至急のお呼びとか……成程、君が戻って来ていたのか」
「アーデルベルト。ネロ君が大事な話があるそうです」
「ゴブリンキングが生まれたそうです」
「なに!?」
「隣国では、オークキングも生まれているそうです」
「それの情報をどこで?」
「最初はペロやスミレ達が何かを感じて、その後ブロッケン山で知り合った白狼族の長に確認した所、ゴブリンキングとオークキングの存在を教えて頂きました」
「私もその場に立ち会っています」
「貴女は確か……」
「
「成程、厄介ですな。このまま掃除を続けますかな?」
「続けます。どうせ前線に出しても役に立たないでしょう」
「それでは近々、第二陣も派遣させましょう」
「問題ありません。騎竜隊の方もそれまでには準備できましょう」
王妃様はそう言って、大公様の手紙を宰相様に渡した。
「成程。ブロッケン山ですか、考えましたな」
「愚か者が兵を集めここに来るまで、早くともひと月は掛かるでしょう。時間は十分にあります。できる限り炙り出しなさい」
「ロタリンギアについては如何致しますかな」
「周りの国に情報を流しなさい。それ以上は無用です」
「承知しました。では」
宰相様はギロリと眼鏡越しに俺を見てから下がって行った。だから、怖いって……。
ちなみにロタリンギアと言うのはルミエール王国の隣国の事でロタリンギア王国と言ってオークキングの生まれた国だそうで、俺も知らなかったです。
「ネロ君。今日はもう遅いわ」
「はい、そろそろお暇致します」
「何を言ってるの? 部屋を用意します。泊まっていってね。エレナもよ」
「お気遣い無用、帰りますので!」
「私も兵士宿舎で結構です。王妃様」
「二人共、つれなすぎるわ。まだ、セラちゃんとルーくんを抱っこしてないのよ。エレナも昔のように姉様って呼んで欲しいわ」
「「いやいや……」」
結局、王妃様とレーネ様に押し切られる形になりました。王妃様が、ペロちゃんに美味しい物を一杯食べさせてあげると言い、レーネ様もうんうん頷いたので
「ネロ! 今日はここに泊まるにゃ!」
王妃様はうちの胃袋を抑えこむ作戦で見事勝利を勝ち取ったのです。
でも、俺のメンタルが……。
「み~」
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