86神猫 ミーちゃん、一人でお泊まりする。
侍女さんに大きな部屋に案内された。俺一人。
うちのメンバーは、ミーちゃんが王妃様とペロはレーネ様とセラとルーくんはエレナさんと寝るようです。ミーちゃん一人でお泊まり大丈夫? って、聞いたら
「み~」
と、大丈夫だよ~って顔してました。ニーアさんにはペロは寝相が悪い事は伝えてある。夜中に何度か侍女さん達が見に行くそうなので問題ありませんと言われた。正直、心配です……。
それにしても、一人で寝るなんて久しぶりだ。その前にお風呂に入りましょうか。王妃様から王族用のお風呂に入る許可を頂いたんだよね。この時間に入る人は居ないから自由に入って良いって言われてる。
侍女さんに案内してもらって風呂に行く。侍女さんも一緒に入って来ようとしたので、丁重にお断りさせてもらったよ。お風呂は誰も気にせずゆっくり入りたいからね。
脱衣所で服を脱いで、お風呂セットを持っていざ出陣。
ひ、広いねぇー。共同浴場とまではいかなくても、いったい何人入れるんだろう。取り敢えず、体と頭を洗ってしまおう。
うーん、何か視線を感じるのだけれど……。体と頭を洗い流して浴槽に向かうと人影が……。
「気にせず、入りたまえ」
「そ、それでは失礼します」
まだ、若いイケメンだよ。ここに居るって事は王族って事だよね。どーしよう……。 凄く気まずいです。
「君の名を聞いても良いかな?」
「ネロと言います」
「アンネリーゼの新しい友人の名だな。確かレーネにルカを連れてきた者何だな。そう言えば、食事を一緒にと言われていたな……」
これはヤバいです。この方が誰かわかってしまいました。逃げ出して良いでしょうか……?
「私はアンネリーゼの夫でユリウスと言う。よろしく頼む」
がっびーん! やっぱりこの国の国王様だよ~。ひょえぇー。ネロは麻痺状態に落ちいった。
俺が固まっているのを見て、苦笑いしながら
「気にせず、普通にしてくれ。そうでなければ、風呂に入っていても気が休まらない」
まあ、確かに風呂に入ってまで気を使ってたら疲れが取れないよね。
「陛下がそう仰るのであれば」
「うむ。そうしてくれ」
そう言うと国王様は近くにあった呼び鈴を鳴らした。奥から執事さんらしき人が現れる。居たのなら俺が入る時に止めてよね……。
「私はエールを、君はどうする?」
「果汁水でお願いします」
執事さんが一礼して下がって行った。
「君の事はアンネリーゼや宰相から聞いている。なかなか、やり手のようだね。宰相が珍しく誉めてたよ。それで、何が目的だね?」
「目的……ですか? 逆に聞きたいですね。何故、自分を巻き込むのかと」
「面白い事を言うね。全て君が持ち込んだ事だろう?」
「結果的にそうなっただけですけどね」
執事さんが戻って来て、エールの入ったジョッキを国王様に渡そうとしたので、俺が一旦預かる。
「この者は私が信頼する者の一人だ。毒など入っていないよ」
「あぁ、すみません。そう言うつもりではないんです」
水スキルでエールをキンキンに冷やして国王様に渡す。国王様は冷えた陶器製ジョッキに驚いている。そのジョッキを執事さんにも触らせ、執事さんも驚いている。
「もともと、冷やしてあるものだが、ここまで冷えたエールは初めてだよ。うん、旨い」
執事さんがグラスに果汁水を入れて渡してくれる。これも過冷却状態にしてから、わざと二人に見えるようにしてグラスを指で弾く。
「!?」
二人共、驚いているのを尻目に、飲んで見せる。風呂で飲むフローズン、サイコー。掴みはOKってところかな?
「君は異能持ちなのか?」
「いえ、持ってません。これは水スキルですよ」
国王様は執事さんを見るけど、執事さんは首を振っている。
もう一つあったグラスに果汁水を入れてもらい、過冷却状態にして執事さんに渡して、指で弾く仕草をしてみせる。執事さんが恐る恐るグラスを指で弾くと徐々に凍り始めた。
驚くと言うより喜んでるね。国王様も飲みかけのジョッキを差し出してきて、やってくれって言ってくる。エールはやった事ないけどやってみた。国王様にジョッキを返して、国王様がジョッキを覗き込みながら指で弾くと笑顔になったのでうまくいったみたいだね。
国王様はフローズン状のエールを美味しそうに飲んでいる。
「さて、そろそろ戻らないとな。君とはいずれゆっくり話をしたい。先程の件についてもだ。だが、楽しい時間だった礼を言う」
そう言って、国王様は風呂からあがって行ったよ。疲れました……ブクブクブク……。
部屋に戻るとニーアさんが待って居て、フローズンを作ってくださいとお願いされたので作りましたよ。前に一度作ったから覚えていたのか、それとも甘味に目覚めたエレナさん辺りだろうか?
疲れた……寝よう。
翌朝、起きて侍女さんに昨日夕食を食べた部屋に案内され、朝食を食べた。みなさん良い顔をされています。ミーちゃん、ちゃんと寝れた?
「み~」
飛びついて来て、スリスリしてくる。ミーちゃんをモフモフしながら食後のお茶を飲む。良い朝です。
「ネロ君、昨日ユリウス様とお会いになったそうね」
「はい。ばったりと」
「今度、ゆっくりお話がしたいそうよ」
勘弁してください。小市民の俺が何故、雲の上の国王様と話をしなくちゃいけないんですか……。
「それから、ネロ君の当面の予定はどうなってるの?」
「そうですね。王都で少しやる事がありますが。その前に、一度クイントとクアルトに戻ろうと思います。ハンターギルドの件もありますので」
「そうなの……。せっかく行くなら様子見もお願いしようかしら? 行ったついでで良いから、ネロ君が危険じゃない程度に前線を見てきて欲しいわ。それから、ブロッケン山の件は大掃除が終わってからになるけど、よろしくて?」
「はい。お任せ致します。前線を見てくれば良いんですね?」
「えぇ、お願い。利権の絡まない目で見た状況が知りたいの。人選はまかせるわ」
「こちらが新しい手形になります。こちらは今回の報酬及び支度金です。ご確認ください」
そう言ってニーアさんが、手形とお金の入った袋を持ってきた。金貨二百枚入っているそうで、手形には巡察使と書いてあり、発行元は宰相様になっている。最初から行かせる予定だったと言うところかな……。
やはり、一度、クイントに戻るしかないようだね。その前にハンターギルドに寄ってゼストギルド長と話をしてみるか。何か情報を持ってるかもしれないしね。
やる事が多いな。少しゆっくりしてから出発しようね、ミーちゃん。
「み~」
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