41神猫 ミーちゃん、レアモンスターを見つける。

 二階層に入ると、ロックリザードと言う大きなトカゲが出てきた。ミーちゃんはおっかなびっくりしながらも、キャリーバッグからロックリザードを眺めている。


 ミュラーさんは何事もなく倒しているけど、なんとも思わないのかな? なんて考えてしまった。ごめんなさい、大変失礼な事を考えてしまいました。反省します……。


 二階層は広い、一階層の四倍くらいの大きさになると、マップから予想されるね。今回も外周を左回りで探索している。なので、中心部は全く探索していない。



「ふう。広いな」


「一気に広くなったのう」


「二階層でロックリザードって言うのも異常ね」



 普通はこんな感じじゃないみたいだね。



「二階層でロックリザードだと、三階層行ったら何が出てくんだ?」


「ですが、浅い層でロックリザードが出るのは嬉しい誤算ですよ」


「そうね、本来なら十層以上降りないと出て来ないものね」


「それだけ、この迷宮は貴重と言う事だ。ギルドでは、昨日ネロ君に描いてもらった地図を元に、過去の流れ迷宮と一致するか調べてるはずだ」



 流れ迷宮はいろんな場所に出現する。そんな流れ迷宮はどこかで出現し時が経って消えた後、場所を変えてまた現れる事が多いらしい。ギルドは過去に現れた迷宮の地図を保管しているので、昨日調べた地図と比較して同じ迷宮がないか調べていると言う訳だ。同じ迷宮があれば過去に探索した時の地図が使える事になる。



「おそらく、この迷宮は未発見の迷宮じゃろう」


「だろうな」


「み~!」



 ん? ミーちゃんどうしたの? また、なんか見つけた?



「み~」


「すみません。止まってもらって良いですか?」


「飯にはまだ早いぞ」


「トイレじゃない?」



 こ、この人達って……俺をなんだと思っているんだ! お子ちゃま扱いですね。はい、わかっていますよ言われなくても……。



「ミーちゃんが、何かを発見したみたいなので調べて良いですか?」


「隠し部屋か?」


「うーん、違いますね。マップには何も反応がありません」


「……わかった。危険だと思ったらすぐに声を掛けてくれ」



 と言う事で、ミーちゃんな~に?


 ミーちゃんちゃんは通路の向こうをじっと見ている。慎重に進んでみるとT字路になっていて、ミーちゃんは左の方をじっと見ている。何かあるんだろう。


 ゆっくり覗いて見たけど何も無い。それでもミーちゃんは緊張した面持ちでじっと奥を見ている。試しに通路を鑑定してみる。何も無いと思われた通路の奥に、ジュエルリザードと出ている。出ているのに見えない。と言う事は擬態でもしているのかな?


 ミュラーさんの所に戻って事情を説明する。



「ジュエルリザードじゃと!」



 ドワーフのおっちゃんが驚いている。



「確かか!」


「見えませんが、鑑定したら出ました」



 ジュエルリザードはとても珍しく、外皮がとても貴重な素材で皮鎧にすると剣すら弾じくと言われる、ハンターさん憧れの装備の素材なんだそうだ。レアモンスターって奴だね。


 エルフのお姉さんがミュラーさんを見るとミュラーさんは頷く。エルフのお姉さんが確認しに行ったようだね。



「居ました。光に反応しないので寝ているようです」


「距離は?」


「曲がり角から十二メル」


「距離があるな、仕留めれるか?」


「難しいわ。相手が見えないのでは狙いようが無いもの」


「一気に間を詰めるか」


「無理じゃろう。お主も知っておるじゃろ、奴の逃げ足を」


「挟み撃ちは無理かしら」



 ミュラーさんが俺を見る。



「向こう側のマップがないのでなんとも……時間を頂けるなら探しますが、俺一人では無理ですよ」


「パーティーを分ける愚は犯さんよ」


「ならどうする? せっかくのチャンスだぜ!」


「あのう……駄目もとで良ければ、俺に一つ策がありますが……」


「策?」


「要するに、近くまで誘き寄せれば良いんですよね?」


「そうね。近くまで来るか、姿を現すかしてくれればなんとかなると思う」



 俺の考えた作戦はこうだ。T字路にミーちゃんの猫缶の中身をばら撒いて、大気スキルで匂いを向こうに送ってやる。ミーちゃんのご飯だから美味しいに決まっている。迷宮のモンスターが食事をするかは知らないけど、やってみる価値はあるんじゃないかな。匂いに誘われて寄って来るかもしれない。



「わかったやってみよう」



 ミーちゃんの猫缶の中身をT字路の左側のちょっと先にバラ撒く。ミーちゃんが興奮してたけど、ごめんね無視させてもらうよ。後でちゃんとご飯あげるから、今は我慢してね。



「みぃ……」



 離れてそよ風程度の風をスキルで起こし、匂いをロックリザードの元に送ってやる。どうでしょう?



「動いた」



 斥候役の猫獣人のお兄さんが、小さい声でみんなに声を掛けた。近くまで来ると流石に俺でも何かを引きずるような音がするのがわかる。全員が固唾を飲んで武器を構えたまま見守っている。


 T字路から覗くとジュエルリザードは全くこちらに気付いた様子もなく、無心にミーちゃんのご飯を貪っている。流石、ミーちゃんの猫缶。でも、なんか笑える。


 ミュラーさんの合図で二本の矢が放たれる。



「硬い」



 矢は刺さったものの致命傷になっていない。流石のジュエルリザードも気付いて逃げ出す。その大きさに似合わず、とんでもなく早い動きです。


 ミュラーさん達が距離を詰めるより早く逃げ去ってしまいそうだ。二の矢が放たれ一本が足に刺さったけど、何のそのとばかりに走って行く。


 俺も短剣を投げたけど硬い外皮に弾かれたね。俺って役立たず?



「畜生!」



 猫獣人のお兄さんが吐き捨てる。全員が逃げられたと思ったんだろけど、生憎俺は諦めは早いが足掻きはするタイプの人間でして、走り去るジュエルリザードに向けて圧縮空気大砲を三発お見舞いしてやる。



 ドン! ドン! ドン!



 通路が揺れるかという音と共に衝撃波がジュエルリザードに向かって飛んで行く。


 俺は走ったよ。体力無いけど走ったよ。途中でミュラーさん達に追い抜かされたけど……。


 三十メルぐらい走ると右への曲がり角になっていて、圧縮空気大砲の衝撃波で壁にぶつかったのかジュエルリザードがひっくり返っていた。予想通りの展開だ……いや、本当だって!


 猫獣人のお兄さんが、ひっくり返っているジュエルリザードに止めを刺した。


 ミーちゃんがキャリーバッグから飛び出して、曲がり角の先に走って行き振り返ってこちらに向かって鳴いている。ミーちゃん、なーに?



「み~」


「安全地帯だな」



 そこで俺とミーちゃん以外が微妙な表情になっている。今度は、なーに?



「無理する必要がなかったって事だな……」


「それは結果論です」


「どうでも良いぜ。仕留めたんだからよ」



 モンスターは安全地帯に入れない。要するに最初から袋のネズミ状態だったのね……。



「け、結果オーライだよね……?」


「み~」





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