40神猫 ミーちゃん、共同浴場の常連客です。
買い取りカウンターで通常業務を終えて、蒼竜の咆哮の男性陣にお酒をご馳走してから共同浴場に向かった。早くお風呂に入って疲れを癒したい。
いつもの時間とは違うけど、いつものおばさんが番台に居た。
「よく来たね。子猫ちゃん」
「み~」
まあ、結局このパターンになるんだよね。おばさんはミーちゃんを抱っこして、何も言わず俺に木札三枚を渡してくる。もちろんお金は払いましたよ。ミーちゃんのおかげで常連客扱いだね。
お風呂を堪能してあがると番台の辺りが姦しい。日中と違い女性客も多いようで番台のおばさんの膝の上でお客さんに愛想を振りまいている、ミーちゃんの話で盛り上がっているようだ。
番台に行くと、もう帰るのかいゆっくりしてけば良いのに、なんて若い女性に言われればドキっとするような言葉も、明らかにミーちゃん目当てのおばさんに言われても嬉しくないです。
宿に帰る途中にあった食堂で夕食を済ませて宿に戻る。
この部屋とも今日でおさらば、明日からは良い宿に移れる。どこの宿かは、まだ聞いて無いけど……。
「みぃ……」
ミーちゃんも感慨深かげな表情をしてる。
部屋でキャリーバッグの掃除をしていると中に光る物を見つけた。なんだろう? 宝石の付いたネックレスだね。
「ミーちゃん、これどうしたの?」
「み~!」
何故か、どや顔をしてますね。そんなミーちゃん、とても可愛らしいです。
「もしかして、迷宮で拾ったの?」
「み~」
ミーちゃんがキャリーバッグから出ったのは……隠し部屋かぁ。砂を蹴ってたのはトイレじゃなくて、これを見つけたんだぁ。
「どうして、その時言ってくれないのさ~」
「みぃ……」
どや顔から一転ごめんなさい顔になっちゃいました。でも、やっぱり可愛い。
「もしかして、気に入っちゃったの?」
「み~」
ミーちゃんも永遠の五ヶ月歳とは言え、女性だったって事だね。
鑑定してみると、品質高 鍵 となっている。鍵? よくわからん。
「取り敢えず、明日ミュラーさん達に相談して譲ってもらえるか聞いてみようね?」
「みぃ……」
こればかりはどうしようもない、戦利品はみんなで分けるのがルールだからね。
翌朝は早朝からの出発だ。ハンターギルド前には既に木材などを積んだ荷馬車が集まっている。
「おはようございます」
「ああ、おはよう。これは昨日の取り分だ」
ミュラーさんが小袋を渡してきので中身を確認すると金貨二十枚も入っていた。
「そんなに実入りがあったんですか?」
「隠し部屋で拾った武器防具は良い物だった。うちのメンバーが欲しがる程のな。後、拾った金貨の中に珍しい金貨が混じっていてな。あれはコレクターに高く売れる」
「そうなんですか。あのう……ご相談があるのですが」
「なんだ?」
「昨日の隠し部屋でミーちゃんがネックレスを拾っていたみたいで、なんか気に入ってしまったみたいなんですよ」
「物は?」
「これです」
「みぃ……」
ミュラーさんに渡すと、ミュラーさんはエルフのお姉さんに渡す。エルフのお姉さんは鑑定持ちだ。
「品質は高いようですが、美術品としての価値はたいしてありません。ミーちゃんの報酬には丁度良いかと」
「だそうだ。昨日の隠し部屋を開けた報酬だな」
「み~!」
うーん。ミーちゃんは喜んでるけど、エルフのお姉さんは鍵ってのは見えなかったのかな? くれると言ってくれてるから、余計な事は言わないでおきましょう。もちろん、ミーちゃんの為ですよ。
「ミーちゃんよかったね。みんなにお礼を言ってね」
「み~」
蒼竜の咆哮の女性陣にお礼のスリスリをしたら、モフモフされまくっている。
その間にスミレを連れて来る。だんだん毛艶も良くなって来ているし、全快まではもう少しだね。全快したら乗せて欲しいなぁ。乗馬なんてした事ないけど。
荷馬車が出発したので、俺達もワイワイ、ガヤガヤと迷宮に向かった。
迷宮前では作業が始まっていて、仮組だけどなんとなく形は見えいる。迷宮を完全に囲むように防壁を作り、迷宮の入り口を覆うように小屋を作っている。迷宮に入るハンターさん達を管理する為のハンターギルド出張所らしいです。
「今日は二階層の探索がメインだ。できれば安全地帯を見つけたい」
「今日は目一杯潜るんだろ?」
「そのつもりだ。二階層がどれだけ広いかわからんが、昼の一の鐘の時間までは探索を続ける。一階層の残りの探索は我々とは別のパーティーが入る事になっているから気にしなくて良い。ネロ君、問題あるかな?」
「いえ、問題ありません」
「よし、準備ができたら出発だ」
スミレを自由にさせて、荷馬車の御者さんにスミレが戻って来た後の事をお願いすると快く引き受けてくれた。
キャリーバッグにランプをセットして、ミーちゃんを入れて首を通して肩から下げる。準備万端整いました。
二階層に降りる最短のルートをとるけど、モンスターは復活しているのでどうしてもその分は時間が掛かる。それでも三十分程で二階層に降りる坂道に着いた。
「迷宮のモンスターって外に出ないんですか?」
「不思議な事に出ない。階層の移動もしない。どうしても倒せなければ、逃げればなんとかなる。安全地帯もあるしな」
安全地帯。それは迷宮の各階に必ず一つあり、必ず泉が湧いている場所。その場所にはモンスターが絶対に入って来ないので安心して休める事ができる。
下層に行けば行く程重要になる場所で、そこまで潜るハンターさん達はポーターを何人か雇って拠点化して探索するそうだ。ミュラーさんのように収納スキルを持っている人がいるパーティーであっても、下層の探索ではポーターを雇う。食事の用意やモンスターの必要な部分だけを取ったりと雑務をこなしてくれる重要な存在なんだそうだ。ポーターが居ないと収納スキルではすぐに一杯になってしまうし、パーティーだけでは長期間迷宮探索ができない。
ミーちゃんバッグは反則だね。
「み~?」
ミーちゃん悪い子? みたいな顔をされちゃった。すぐに誉め言葉だからねって言って、頭を撫でてあげた。ミーちゃん、様様だからね。
「み~」
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