30神猫 ミーちゃん、クイントでもお仕事に熱心です。

 お風呂から上がり着替えてミーちゃんを引き取ると、ちょっとしっとりとして綺麗になっている?


 番台のおばさんに聞くと、女湯の女性の三助さんが暇だったのでミーちゃんをお風呂に入れてくれたらしい。それはそれは、良かったねミーちゃん。



「み~」



 五日ぶりのお風呂は最高ですね。気分爽快さっぱりした。何でも来いって感じかな。でもこの街じゃ知り合いも居ないし、する事も無い。なので時間は早いけどハンターギルドに向う事にした。


 ハンターギルドに併設されてる酒場でジュースを頼み、ミーちゃんにはお皿にミネラルウォーターを出してあげる。


 猫獣人のウエイトレスさんが仕事を忘れて、ミーちゃんとじゃれあっている。ある意味、同族だから気持ちはわかるけど、厨房の方から睨んでるマッチョなおじさんが怖いですよ。お姉さん!


 そんな視線を見て見ぬふり、紙にリボルバーとライフルの簡単な絵を描いていく。これを元に大気スキル用の武器を作ろうと思う。信管式じゃないからハンマーは必要ない、トリガーも不要、シリンダーは欲しいね。バネがあるなら、オートマチックでも良いなぁ。


 なんて考えてたら、あっという間に仕事の時間になっていた。


 ミーちゃんに、お仕事着のピンクのリボンにレースのスカーフを巻いてあげる。良くお似合いでございますよ、お嬢様。



「み~」



 エバさんの所に行くと、すぐにミーちゃんを奪われてしまう。ウエイトレスさんがミーちゃんと戯れているのを見た女性陣が、早く抱かせろと抗議の声が上がったらしい。それで俺はどうすれば良いのよ……。



「君がネロ君かい? 私は買い取り主任のヘンリー。短い期間だがよろしく頼むよ」


「はい。よろしくお願いします」



 捨てる神あれば拾う神あり。ヘンリーさんはすらっとした体型だが、二メルくらい身長がある。デカい。それから、お願いしていたコアのリストを渡してくれた。



「コアは任せて良いかな?」


「破損してる物やリストにない物は、わかりませんのでお願いします」


「了解だ。それじゃあさっそく頼むよ」



 まだ、買い取りカウンターはまばらだけど、もうすぐ、ミーちゃんの手を借りたい程忙しくなるんだろうな。少しでもお役に立てるよう頑張ろう。


 渡された箱に入ったコアを鑑定して、分別しメモに記載していく。いつも通りの内容。終わった物からヘンリーさんに渡していく。その繰り返し。順調な滑り出しだね。


 されど、場所は変われどハンターさんの気質は変わる事なく、罵詈雑言が飛び交い始める。



「うるせぇ! 黙って並んどけ! 買い取りしてやんねぇぞ!」



 ヘンリーさんは見かけによらず、熱い人のようだ……。


 八の鐘いっぱいまで忙しかった。この街の方がハンターさん数が多いのかもしれない。獣人族やエルフ族、ドワーフ族、竜人族などクアルトの街より多い気がする。ハンターさんの実力も高いようだね。鑑定してたら、一人だけだけどゴブリン二百匹分の強さって竜人のハンターさんも居た……凄いよね。



「いやー、本当に助かったよ。こんなにスムーズに終わったのは何年振りだろう……」



 ヘンリーさんの言葉に、周りのお姉さん達や他の買い取りの職員さんがウンウン頷いている。これでスムーズっていつもはどんだけぇーって感じだよ。明日も必ず来てくれるようにお願いされた。そんな風に言われると嬉しいもんだね。ガンバっちゃう?


 さて、ミーちゃんはと言うと何故かテーブルの上でお澄まし顔をしてお座りしている。その周りにはポヤァっとした顔のギルドのお姉さんやハンターのお姉さん達が、ミーちゃんを囲んで眺めている。



「クアルトの街のギルドに転勤願い出そうかしら……」


「拠点を移そうかなぁ……」


「この子だけでも、うちのギルドに引き抜けないの?」


「ミーちゃん、ラブリー過ぎるよぉ……」



 不穏な囁きも聞こえますが、無視します。


 宿に帰る前にエバさんに宿について聞いてみた。



「今日はご苦労様。こんなに早く仕事が終わるなんて、パミルのとこの職員じゃなければ引き抜くところね。ミーちゃんのおかげで女の子達も良い顔してるわ。それで、なんだったかしら?」


「宿についてです。食事と洗濯ってどこですれば良いんでしょうか?」


「あら、パミルから聞いてないの? ギルド指定の宿の事」



 聞いて無いです……。


 ハンターギルド職員が他の街に出張した場合、宿代がタダになる代わりに決められた宿に泊まる事になってるそうだ。それが嫌な人は自腹で宿を取るしかない。食事は用意されない、洗濯等は指定の場合にお願いする事になる。もちろん有料でね。クイントの場合は隣の食堂兼酒場にお願いする事ができると教えてもらった。



「本当にあの子は昔から説明不足な所が玉にキズなのよね……」



 ははは……パミルさん、言われてますよ。


 そしていつもの如く、お姉さん達に睨まれながらハンターギルドを後にした。


 知ってる店もないので、宿の隣の食堂兼酒場に行きミーちゃんと一緒に夕食をとった。味はまあまあかな。ウエイトレスに話を聞くと朝も早朝からやっているとの事、その時にいる方に洗濯物を頼んでくださいと営業スマイルで言われた。


 お風呂も入ったし、ご飯も食べた。ちょっと早いけどもう寝ようか。


 ベッドの上で寝られる喜び、モンスターを気にする事なく寝られる喜び、地球では味わった事の無い経験だよ。


 部屋に戻ってミーちゃんをブラッシングして、猫缶とミネラルウォーターを召喚してベッドに横になる。



「ミーちゃん、おやすみなさぃ……」


「み~」




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