31神猫 ミーちゃん、依頼の荷を受け取る。

 翌朝、四の鐘で目が覚める。二度寝しました……気付いたら八の鐘が鳴っていた。


 ミーちゃんも起きたので、着替えて朝ご飯を食べに隣の食堂に行ってみる。


 朝食を頼み、昨日聞いた通りに洗濯も頼んだ。明日の朝に取りに来るようにと、番号の書かれた木札を渡される。朝食の味もまあまあかなって程度。どこか美味しい店探した方が良いかも。ミーちゃんは猫缶だから気にしてないようです。



「み~」



 ミーちゃんが食べ終わるの待って、本来の目的である荷物の引き取りに行く事にする。地図を見ながら目的の工房になんとか着いたよ。周りは同じような建物ばかりなので、迷ったら俺では出て来れないかもしれない……。



「すみませ~ん。誰か居ますか~」


「み~」



 奥から眼鏡を掛けたドワーフとみられるおじさんが出て来た。



「どうした坊主。お使いか?」



 ま、また坊主って……。



「クアルトのハンターギルドの職員です! こ、れ、で、も!」


「お、おう……そ、そうか。それで何の用だ?」



 引き取り証と職員の証明書を渡した。



「ふむ。そう言えば、そんなのがあったな……ちょっと待ってろ」



 そう言って、居なくなってしまった。


 しばらく、ミーちゃんと戯れていると、箱を持って戻って来た。



「これが頼まれてた物だ。確認してくれ」



 箱を開けてみると、メガホンだ。鑑定したら拡声器と出ている。やっぱりメガホンだ。


 簡単な説明書も入っているけど、物を見る限り地球の物と大差ないように見える。


 取り出して見ると動力用のコアも既にセットされている。スイッチを入れて音量目盛りと思われるものを最小にして声を出してみる。



「あー、あー、マイクのテスト中。本日は晴天なり、本日は晴天なり」


「うるせぇ!」



 目盛りを最小にしたのにかなり大きな音がした。音割れもしていない。かなりの高性能のようだよ。



「坊主、これが何か知ってたようだが、どうしてだ? ギルドの人間だって知ってる奴なんて限られているんだぜ」


「以前に見た事がありますよ? これって珍しい物なんですか?」


「なんてこった……俺より先に考えた奴が居るのかぁ……」



 あれ? なんかドワーフのおじさん落ち込んじゃったね。この世界の事じゃないんだけど、不味かったかな?



「確かに受け取りました。性能も良いですし、破損もありません。完璧な仕上がりです」


「そ、そうか? 自信作だからな、テヘ」


「みぃ……」



 ミーちゃん、おやじのテレ顔、俺も嬉しくないですよ……。



「それで、腕の良い職人さんを紹介してほしいんですが」


「ぼ、坊主……あげて落とすってのは酷くねぇか……。目の前に居るだろうがよ……」


「いえ、探してるのは鍛冶職人なんですよ」


「これでも鍛冶職人の端くれだが、何を作りたいんだ?」



 なら、見てもらおうか、メモ帳に書いた絵を見せる。



「なんだこりゃ? 用途がわからんな」



 確かに、見ただけだと用途はわからないよね。



「用途は別として、作れますか?」


「これと、これは難しくないと思うが、こっちのは複雑だからな簡単にはいかんな。それに金が掛かるぞこれは」



 成程、オートマチックは厳しいか……。



「これと、これは幾らぐらいで作れますか?」


「用途がわからんからなぁ。使う材料によっても変わるだろうが、多く見積もって十万レトと二十万レトと言う所だな」



 おっ、思ったより安く済みそうだ。



「用途がわかれば、作ってくれますか?」


「急ぎか?」


「期間は十五日前後ですかねぇ」


「ふむ。良いだろう引き受けよう」



 と言う事で、ドワーフ職人のゼルガドさんを連れ近くの空き地に来た。


 来る前にゼルガドさんの工房から一枚板を貰ってきている。それに拾った石を載せ、空き地にある土の山に向け大気スキルで撃ち込んで見せた。



「ほう。何のスキルだ?」


「大気スキルです」


「大気スキルだと……」



 流石に驚いている。なので、地面に絵を描いて説明する。



「成程、圧縮した空気で押し出したのか、それでこれは圧縮空気を中で作って飛ばすと言う事だな」



 おぉー、流石自称腕の良い職人さんと言うところか理解力が凄いね。



「となると、中は相当な力が加わるな……」


「圧縮した空気を更に後ろで膨張させる事により、更に威力を増すでしょう」


「どのくらいの物を飛ばすつもりだ?」



 ホローポイント弾と尖ったライフル弾の絵を描いて見せた。大きさは六ミル(一ミル=一ミリ)、長さ一セン五ミルくらいかな。



「面白い。これが上手くいけば、大気スキル持ちにとっては朗報だな。取り敢えず、今日、明日で試作品を作って見る。二日後にまた来い」



 なんか、めちゃくちゃやる気になってるよね。頑張ってください。また来ます。


 メガホンは箱ごとミーちゃんバッグに収納してもらう。持ち歩いたら必ず壊す自信があるから、これ大事。これでクアルトに持ち帰れば依頼完了だね。


 時間もあるので少しでも金策する為に、バザーの場所に行ってみる事にした。


 いろんな人、物が溢れているね。ミーちゃんも興味津々って感じで肩にのぼって周りを見ている。


 少し鑑定の熟練度が上がったおかげで、品物の価値が前よりわかるようになっている。


 途中で小豆を見つけたときは買うか迷った。餡子が作れるじゃないかってね。でも、砂糖が異常に高いんだよ。一般に出まわってるのは黒砂糖で、白砂糖はまだ見てない。それに黒砂糖を買うより蜂蜜の方が一般的な甘味料として使われているようだ。蜂蜜で餡子って作れるのかな? 結局、小豆は買ったけどね。


 他にも、アクセサリーなどを数点、毎度の武器防具漁りをやって数点買った。どこで売るかが問題。今は、まだお金に余裕があるから良いけど、銃の作成にお金が掛からないかがもっぱらの悩み。予備の銃や弾も必要だと思うんだよ。


 お金は幾らあっても困らない。ミーちゃん、わかってもらえるかな?



「み~」




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