27神猫 ミーちゃん、何があっても熟睡中です。
投擲スキルのお陰で、ゴブリンを何体か倒したところで透明な板が現れた。
今は余裕があるから、幸運でも選ぼうと思ったら選べるスキルの中に大気があった。どうしよう? 俺の考えが間違ってなければ、これは凄いスキルのはずだ。えぇーい、ポチっとな。選んじゃいました。
ちょっとだけ検証してみようかな。目の前にゴブリン居ないしね。
少し離れた場所にあるかがり火に、酸素が集まるイメージをするとかがり火が勢いよく燃え上がった。やっぱりそうか、今度はかがり火の周りの空気を薄く真空状態になるようにイメージすると一瞬火が消えたがすぐに燃えだした。
これは維持するのがもの凄く難しい。一瞬の事なら意外と簡単かもしれないけど、その状態を維持しようとすると体から何かが抜けていく感覚がする。現に今やった事だけで体が重く、額に汗をかいている。
バッグからミネラルウォーターを出し飲んで回復しようとするけど、思った程回復しない。体力や気力とは違うようなので、猫用品召喚と同じものを消費してるのかもしれない。ゲームで言うマジックポイントかな? 鑑定では出てこない項目なんだよね。そう言う系は熟練度が上がれば出て来るようになるのかな?
なんて考えてたら、巨体の影が浮かび上がってきた。ゴブリンリーダーだ。それも、左右から一体ずつ現れた。一体だけでも面倒なのに、二体も……それに、ゴブリンを引かせない。昨夜のゴブリンリーダーの過ちを修正してきたかのような戦い方、本当に修正してきたのならこいつら相当頭が良い事になると思うんだけど。
不味い状況になってきた。盾と槍のハンターさん達が押され始めた。ゴブリンリーダーの持ってる剣はやはり毒が塗られているようで、掠っただけでも倒れてバリケードの中に運び込まれてくる。
せっかくだから身に付けた大気スキル使ってみようと思う。上手くいくかはやって見ないとわからない。輝く聖剣の炎使いのお姉さんの傍に行き協力を仰ぐ。運が良ければ大きなダメージをゴブリンリーダーに与えられるはずだ。俺の直感が上手くいくと言っている。
「あなたが合図したら、あいつの顔に向かって炎を飛ばせば良いのね?」
「はい。上手くいけば、あんなのイチコロですよ」
「わかったわ。どうせもう私あと一回くらいしかできないから、あなたの作戦に乗ってあげるわ」
よし、そうと決まればやってやろう。うろ覚えだけど、空気中の水素濃度を上げって火を着ければ爆発が起きるはず。高校の授業で習ったよね……どのくらいの濃度だったけっか? まあ、五十パーセントくらいで良いか……。ちょと酸素も多くしよう。ぐっ、体から力が抜ける……。
お姉さんに手を上げ合図する。
「了解!」
近くのかがり火から火の玉が、ゴブリンリーダーの顔目掛け飛んで行く。ゴブリンリーダーは盾で火の玉を払い退けようとした瞬間……。
ドーン! と言う爆発音と共に、顔の辺りでキノコ状に炎の爆発が起きた。
敵味方関係なく、その光景を見て固まっている。俺も固まっている。もちろん火の玉を放ったお姉さんも……。
ゴブリンリーダーの頭の無くなった体が崩れ落ち、ハンターさん達が我に返って攻撃を再開した。ゴブリンリーダーの倒れた側のゴブリンは逃げ出している。残りは反対側のゴブリンリーダー達だ。
「ちょ、ちょっと! あれなによ! どーんって、どーんってなったのよ!」
「ちょ、ちょっと落ち着いてください! お、俺限界寸前なんです……」
立ってるのも辛い、荷馬車の上に座り込む。しかし予想以上だ、ちょっとやりすぎ感があるけどね。結果オーライってやつだね。ハハハ……。
片方のゴブリンリーダーが居なくなった事で、ハンターさん達は全て残りのゴブリンリーダー達に対処できるようになり、そのゴブリンリーダーは袋叩きにあっている。
もう、大丈夫だろう。疲れたぁー。
ほどなくして、残りのゴブリンリーダーも地面に倒れ込む。終わりかなと思っていたら、掃討戦に入るようだ。俺は無理です。ごめんなさい……。
荷馬車から降りてミーちゃんを抱っこしている女の子の所に行くと、ミーちゃんは女の子の腕の中でスヤスヤ眠っていた。昨夜と違って周りが落ち着いているので、ミーちゃんも安心してたんだろうね。だとしても、この騒ぎの中よく寝てられるね……大物すぎるよ、ミーちゃん。
女の子の頭を撫でて寝ているミーちゃんを引き取った。
村の男性は門の修理をすべく、準備を始めている。商隊の人達も荷馬車はそのままで各自のテントに戻るようだ。
「明日は予定通り出発します。辛いとは思いますが、お願いしますね」
ゼフさんがみんなに声を掛けていた。
じゃあ、俺も寝ようかな。流石にキツイです。
「ちょっと待ちなさい! さっきの説明はどうなったのよ!」
「朝早くに出発ですから今度にしません?」
「駄目よ! 気になって寝れないわよ!」
ハァ……仕方ない。
「俺は、そっちのハンターのお姉さんと同じ大気スキル持ちです」
「えっ? 私?」
「でも、大気スキルってあんまり役に立たないスキルよ?」
そうなの? 大気スキル持ちのお姉さんに火スキル持ちのお姉さんだけでなく、周りにいたハンターの居残り組の人達もウンウン頷いている。
「良いですか、よく見ててくださいね」
近くにあったかがり火に集中して、火を激しく燃やし今度は空気を少し遮断して火を弱める。
「な、何をやったの!」
さて、どうやって説明しようか? 小中学校の理科レベルだけど、科学の発達していないこの世界で目に見えない物を説明するのは難しいよなぁ。
「この周りの大気中に物を燃やす性質を持った見えない物質があると思ってください。見えないからわからないと言わず、そう言う物があると思う事が大事ですからね。それを火の周りに集めるように意識してください」
大気スキル持ちのお姉さんが、かがり火に手を向け意識を集中させている。わずかにだが火の勢いが増したようだ。
「嘘、できちゃった……」
「今度は逆に火を燃やす性質を持った物を、火の周りから排除するように意識してください」
またお姉さんは手を伸ばし集中する。かがり火の火が弱まっていく。
「す、凄いこんな事ができるなんて……」
「でも! あの、どーんって言うのは何なのよ!」
「考え方は同じです。火を燃やすのでは無く、爆発する物を集めてやれば良いんですよ。危ないですから今やらないでくださいね。ミーちゃんも起きちゃいます」
「でも、私一人だと何にもならないわ……」
「そうですか? 方法はいろいろあると思いますよ……例えば火矢を使うとか。そうすれば、一人でも有効な攻撃手段になると思いますよ」
「弓の訓練始めるわ!」
頑張ってください。俺はもう寝ます……。
ミーちゃんの熟睡が羨ましいよ。
「すぴー」
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