26神猫 ミーちゃん、またまた村でゴブリンの襲撃を受ける。

 テントに戻ると、ミーちゃんはすーぴーと寝息をたてながら熟睡していた。余程、疲れたんだね。


 ミーちゃんを起こさないように注意して、隣に座り意識を集中する。出た。目の前に透明な板が現れた。スキル名が羅列されている。


 虚偽、料理、幸運、直感、商才、苦痛軽減、火、投擲、剣技、恐怖軽減、気配察知だ。


 スキルをこの中から選べって事かな? ゴブリンを倒した事で魂の器が成長したんだろうな。一つだけなのかなぁ。これは悩んでしまうな。


 虚偽って……。いろいろ、心当たりが……。


 苦痛軽減、恐怖軽減は一見良さそうに思えるけど、これを今選んだら確実に死期が早まると思う。これは強くなって初めて役に立つスキルだね。


 火スキルは目の前で見てたからだろうか? 使い勝手が悪そうだからパス。


 ここは生き延びる事を前提に考えよう。自分に足りないのは攻撃力だ。剣技を選んでも体力の無い今は役に立たないだろうし、接近戦はする気が無い。中距離攻撃のAFの短剣を活かす為に投擲だろう。


 他には幸運かな、そもそも運がよければ昨日の事は起こらないはず。だけど、運気上昇と同じで未知数なんだよね。そうなると直感の方が良さそうだね。危険を感知してくれる可能性がある。ただ何が起きるかわからないのがネックだ。


 となると、気配察知なのかな? モンスターの気配がわかれば回避できるだろうしね。問題はどのくらいの範囲を感知できるかだ。周りを囲まれてから感知しても意味が無い。


 うーん。悩みますなぁ。


 取り敢えず、投擲は確定だからポチっとな。ん? まだ消えない、まだ選べるみたいだ。どうしようか……。決めた。直感にしよう。幸運と悩んだけど、今の俺には直感の方が役に立つ気がする。


 気分的にちょっとだけ強くなった気がする。実際に気分だけなんだろうけどね。


 ファーレンさん達は、クアルトの街から来たハンターさん達との引き継ぎを終えてテントで寝ているようだ。もう少し俺も寝よう。ミーちゃんの横で一緒に丸くなって眠った。



「み~」



 ミーちゃんの鳴き声で目が覚めた。テントの中が夕陽に照らされオレンジ色に染まっている。


 ミーちゃんにミネラルウォーターを出してあげる。元気良く飲み始めたのでもう体力も回復したのかな? 試しに猫じゃらしを見せたら、プイっと横を向かれてしまった……。余程、トラウマになったと見えるね。当分、猫じゃらしはお預けかな。


 夕飯の時間になると、村の人がまた炊き出しをしてくれたようだ。夕食をみんなととった後、薪と火種を貰いテントに戻りお湯を沸かす。ミーちゃんのお風呂である。ついでに自分の体も綺麗に拭いた。


 ミーちゃんはハンターのお姉さん方に見守られながら、まったりとお湯を満喫してるようだ。お湯から上がったミーちゃんをタオルで拭いていると、一人のハンターのお姉さんがミーちゃんの毛が乾くように風を出してくれた。


 鑑定してみると大気と出ている。風じゃないんだね。大気ってだいぶ大雑把のような気がするけど、考えようによっては凄いスキルなんじゃないだろうか? 要検証かな?


 夜の帳が下がった頃、お姉さん達がミーちゃんをモフるのに満足したようなので寝る事にする。明日は早めに出発するみたいだから早く寝ないとね。目覚ましをセットしてミーちゃんと毛布にくるまった。



 どのくらい眠ったのだろう? 急に胸騒ぎがして目が覚めた。ミーちゃんは夢の中で猫缶でも食べているのか、エアハムハムをしている。俺はすぐに着替えてテントの外に出た。



「どうした? 眠れないのか?」



 ファーレンさんが起きていたようだ。



「いえ、胸騒ぎがして……」


「胸騒ぎ? ネロ君は何かのスキル持ちか?」


「昨日、直感スキルが身に付きました」


「直感スキルか、良いスキルだな。となると、何かあると見た方が良いな。すまないがみんなを起こしてくれ。私はハンター達の所に行ってくる」


「起こして良いんですか?」


「構わんよ。何かあってからでは遅いしな」



 ファーレンさんはそう言って、村の中央に歩いて行った。


 多少気が引けるが、みんなを起こす。そうしている間に村人が走ってきてモンスターの襲撃を伝えて来た。



「またかよ……」



 はぁ、その通りですね。二日連続って……。今日はハンターさん達が大勢いるので安心だけど、なんて思ってたのは俺が悪い訳じゃないと思う。


 報告では昨日より多いそうだ。ゴブリンからすれば昨夜のリベンジなのかもしれない。村の門は修理をしたと言っても簡易的なものだし、俺でも狙うなら今日だろうな。


 また、馬車を村の中央に集めバリケードを作る。大勢のハンターさん達がバリケードの前を固めているので、今日は出番は無いかな。近くにガイスさんが居たので行ってみると酒臭い、だいぶ酔ってるようだ。バッグからペットボトルを出して



「飲みます?」


「い、いらねぇよ!」



 武器を担いで前列に歩いて行ってしまったが、大丈夫なんだろうか? それ以前に何しに来たんだろうね。ガイスさんって。


 昨日の女の子が居たので、寝ているミーちゃんをまた預かってもらった。昨日のように泣いてはいない。村人もどこか昨夜と違って落ち着いている。


 俺も援護くらいはしようと荷馬車の上にあがって準備する。


 遠くで何かが崩れる音がして、警備団の人が走って来る。



「門が破られた!」



 その声がきっかけとなり、ハンターさん達が武器を構える。ゴブリンの姿が見えたと思ったら、多くの矢が放たれバタバタとゴブリンが倒れていく。倒れたゴブリンを乗り越えて更にゴブリンが現れるけど、また多くの矢によって倒されていく。それが何度か繰り返された後、前に居たハンターさん達が走り出してゴブリンに向かって行った。


 昨夜とは打って変わって、組織的な戦いになっている。今日は楽勝なんじゃない?


 村の反対側の門も破られたようで、ゴブリンが押し寄せるけどそちらには盾を装備したハンターさん達と槍を持った人達が防衛線を築いている。なんて心強いんだろうか。これがハンターの力なんだね。


 バリケード近くまで来るゴブリンはそれほどおらず、いても俺の短剣やハンターさんの矢で倒されていく。投擲スキルを取ったお陰でスムーズに投げられるようになってきた。


 後ろから見ていて気付いたんだけど、ガイスさんが大きなハンマーを振り回して獅子奮迅の働きを見せている。あのマッチョな身体は見せかけじゃなかったんだね。たまにゲーゲー吐いてるみたいだけどご愛嬌だよね、きっと……。


 ミーちゃん、見ちゃ駄目だよ。ばっちいから。


 って、ミーちゃん熟睡中だったね……。





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