5神猫 ミーちゃん、ハンターギルドに行く。
トボトボとミーちゃんを抱っこして街の中を徘徊してると、多くの人が出入りする建物が見えた。気になったので覗いてみると、どうやらここがハンターギルドと呼ばれる場所のようだ。
狩りはできないけど、他に何かできる仕事がないか見ていこう。正直、なりふり構っていられない。何とかしてお金を稼がないと。
建物の中に入ると人でごった返している。受付のような場所は待ってる人で一杯だ。そんな中、一ヶ所だけ誰も並んでいない空いてる所があったので行ってみる事にした。
「なんだ坊主。ここはガキの来るとこじゃねぇぞ」
スキンヘッドのマッチョなオッチャンが、聞き捨てならない言葉と共に出迎えてくれる。ここは断固抗議しなければならない! 俺の沽券にかかわるからね。
「子供じゃないですよ。これでも十八です……」
「み~」
ヘタレって言うな! 目の前にこんな物騒な人間が居るんだぞ。命は大切にしないと……。
「ハァ~? 十八だと……ガキにしか見えねぇぜ。おい、パミルこっち来い!」
「もう、ガイスさん。こっちは忙しいんですよ。何処かの誰かさんが凄んでるせいで、誰もそっちに行きたがらないんですからね!」
「うるせぇ。来たがらねぇって、ちゃんとここに一人来てるじゃねぇか!」
「あら、ホントだ。ご愁傷さまなのかしら、それとも物好きなのかしら?」
「チッ、良いからさっさとこいつを鑑定してみろ!」
「ハイハイ。ネロ、十八才。あら、私と同じ鑑定スキル持ちね。うちで働かない?」
「マジかよ……。本当に十八なのか……採用だ。午後にもう一度ここに来い」
「あのう……」
「わかったら、さっさと消えろ!」
「ハヒッ!」
「みぃ……」
何が何だがさっぱりわかりませんが、なんか仕事が貰えるようです。ラッキー!
午後まで時間があるから、街でも見て歩こうか? ねっ、ミーちゃん。
「み~」
仕事見つかって良かったねって顔で俺を見てくる。ありがとう! ミーちゃん! なんて清々しい朝なんだ! さあ、皆さん今日も一日頑張っていきましょう!
街をズンズン軽快に歩いていると、バザーがおこなわれている場所に着いた。ちょっと覗いて行こう。野菜にお肉、お魚、色々な物が売られている。商業都市と言われる事はあるね。
香辛料や調味料がないか探していると胡椒に砂糖などあったけどは高すぎて手が出ない、代わりに加工すれば調味料などになりそうな物は幾つか見つかった。
そのひとつがニンニク、鑑定でニンニクと出ているから間違いない。これは買いだね。五十レトで五つも売ってくれた。安い! 他にもトマトも見つけた。十個で五十レト、二個おまけしてくれたよ。後は菜種油にワインビネガー、玉ねぎ、、生姜、塩を買った。ついでに小さい蓋つきの陶器の壺も四つ程買っておいた。
宿に戻って厨房を借りて調味料を作ってみよう。これでも、料理は得意。一通りの料理は作れる。
帰り道の一軒の露店の前でミーちゃんが急にテシテシ俺の腕を叩き始めた。武器を売っている露店のようだけどなんだろう? ミーちゃんを見ると自分を見つめ何か訴えているようだ。ここに何かあるのかな?
露店に並んだ武器を鑑定していくと、一本の小汚い短剣が目に留まる。アーティファクトと出ている。確か人工遺物と言う意味だったよな? という事は価値があると言う事かな? 他にはこれといった物は無いし、試しに買ってみるか。
「オッチャン。これいくら?」
「大銀貨一枚だ」
「オッチャン。売る気あるの?」
「小銀貨五枚だ」
「ごめん。帰る」
「小銀貨二枚と大銅貨五枚だ」
「もうひと声!」
「小銀貨二枚でお願いします……」
「買った」
「み~」
小銀貨二枚渡して短剣を受け取った。良い買い物が出来たな。でもこれって本当に価値があるのかな? どーよ、ミーちゃん? ミーちゃんは大人しくなったと思ったら、腕の中でスピスピ寝始めてしまったよ。ねぇどうなのよ!
迷いながらも宿に戻って女将さんに厨房を借りたいと言ったら、厨房は旦那さんが管理してるので聞いてみないとわからないそうだ。女将さんが厨房から戻って来ると、お昼の仕込みの邪魔をしなければ良いとの事だったのでお借りする事にした。
流石にミーちゃんは厨房に入っちゃ駄目と、女将さんに言われ奪われてしまった。女将さん、ミーちゃんを抱っこしてニンマリしている。抱っこしたかっただけじゃないんですか? まあ良いや、お願いしますね。
厨房に入ると、がたいの良いオッチャンと若い男性が大量の野菜の皮を剥いているところだった。
「その辺にある物は自由に使って良いぞ」
「ありがとうございます。お言葉に甘えて、使わせて頂きますね」
鍋に水を入れて沸かす。沸くまでの間に買ってきたニンニクの半分をみじん切りにしておく。フライパンに菜種油を多めに入れて火を付ける。油の温度が上がってきたら、みじん切りにしたニンニクを半分程入れて焦がさないように炒める。良い香りがしてきたら、更に油と残りのニンニクを投入、塩少々入れてニンニク油の出来上がり。冷めたら買ってきた陶器の壺に移しておく。
お湯が沸いたので、トマトを投入。ほんの少し茹でたら笊に開けて水で冷やし皮を剥く、あら不思議簡単に皮が剥けちゃったじゃないですか。残りのニンニク、玉ねぎ、生姜をすりおろしておく。空の鍋に剥いたトマトを入れて火にかけぐちゃぐちゃにする。本当はここで裏ごしするとベストなんだけど、時間短縮でやらない。煮詰まってきたら先程のすりおろした物を入れ、塩、ワインビネガーも入れて煮込む。なんちゃってトマトケチャップの完成。
いつの間にか、オッチャンと若い男性がこっちを見ていた。
「それは何なんだ?」
「調味料?」
言ってもわからないので、卵とお肉をもらって、卵はオムレツにお肉はニンニク油で焼いてみた。オムレツになんちゃってトマトケチャップをかけて差し出す。お肉は一口サイズに切ってお皿に盛る。
オッチャンと若い男性はそれを食堂に持っていき、女将さんを交えて試食している。
「美味いな……」
「初めて食べる味だね」
「親父、これ使えるぜ」
どうやら、お口にあったようだね。
それにしても、ミーちゃんが近寄って来ない。ニンニク、玉ねぎ、生姜匂いのキツイ物ばかりだからだろうか? ミーちゃんに嫌われちゃったかな? 寂しいぞー!
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