6神猫 ミーちゃん、ハンターギルドで面接を受ける。
女将さん達はえらく気に入ってくれたようです。旦那さんは頭を下げてまで、作り方を教えて欲しいと言ってきたくらいだからね。
もちろん喜んでレシピを教えましたよ。間違っても、五連泊以上で夕食もタダにする上、衣類の洗濯をしてくれると言われたからじゃありませんよ……。ありがたやありがたや
それと作った調味料を今後譲ってくれる約束もした。本職が手を加えればもっと味が良くなると思うし、作るのが面倒なので大変助かります。
もうすぐ始まるお昼のランチメニューに、早速ニンニク油を使ったステーキとケチャップを使ったソテーに変更するみたい。折角なのでご相伴に預かろうと思う。
頼んだのはケチャップを使ったソテーの方、まんまポークソテーだった。少しケチャップに甘みを加えたようで、とても美味く頂きました。流石、本職です。
ミーちゃんは猫缶とミネラルウォーターだけどね。食べてみるって言ってみたけど、嫌々されました。
お昼になるとランチを求め、多くの人がやって来る。お客が来れば来るほどお肉を焼く匂いが店の外に流れ、その匂いに誘われてまたお客がやってくる。
女将さんだけでは手が回らなくなったので、お手伝いしました。ミーちゃんもカウンターでお客さんに愛想を振りまいている。看板娘だね。
「おい、坊主。約束忘れんなよ」
ハンターギルドで会った、ガイスさんだっけ? この人も匂いに誘われて入って来た客の一人だ。
「おい、ドガー。おめぇ、腕上がったな。これなら毎日来てやるぜ」
「うるせぇ。ほざいてろ。てめぇが来なくても、うちは繁盛してんだよ」
どうやら、宿の旦那さんと知り合いのようだね。どっちもレスラーのような体格なので、喧嘩でもしたら派手な事になるんだろうな。見てみたい気もする。
お客さんがだいぶ落ち着いてきたところで、女将さんが約束があるなら行きなと言ってくれたので、一旦部屋に戻り下着から服まで全て着替え歯も磨く。じゃないとミーちゃんが触らせてくれないと思ったからだ。洗濯物は女将さんから預かった洗濯袋に入れて、所定の場所に置いといた。
バッグを持ってカウンターで丸くなってるミーちゃんを抱っこして、ハンターギルドに向かって歩く。
ギルド内は朝の混雑とは一変して、静かな雰囲気を漂わせている。若干、併設されてる酒場に屯ってる人達が、この場の雰囲気を殺伐としたものに変えているけどね。
「おい、坊主。ぼさっと突っ立ってねぇで、こっちに来い」
「坊主じゃなくて、ネロです」
「み~」
「そう言う一端の口を利くようになるにはなぁ、十年早ぇーよ」
「みぃ……」
ぐぬぬ……何も言い返せない。悔しいです。ミーちゃん。
「ほらほら、紹介がまだでしょう。この恐いおじさんはガイス、これでもギルドの統括主任なのよ」
「うるせぇ。これでもは余計だ」
「それから私はパミル。受付の主任をしてるわ。よろしくね」
「ネロです。こっちはミーちゃんです」
「み~」
「見た! ガイスさん。この子凄く可愛い。この職場に足りない物は、これだったんだわ!」
「何が足りねぇって?」
「潤いよ。和みよ。癒しよ。そう、モフモフよ!」
パミルさんは金髪の凄い美人さんだ。他の受付のお姉さん達より年ま……お、大人の魅力に溢れた方です……。そんな怖い顔すると美人が台無しですよ。パミルさん。
それにしても、この世界にもモフラーっているんだね。モフモフは万国共通なんだぁ。
「この職場、私を含め美人は捨てる程居るけど、この可愛さはなかったわ。なんて盲点だったのかしら……」
「だれが美人だって?」
このガイスさん凄いな。全体の八割が女性の職場で、それ言いますか? 呪詛を含んだ眼差しが数多く突き刺さっているのが、可視化できるのではないかと思える程感じられますよ。この人は勇者或いは魔王の類だな。注意しておこう。同類には見られらくないね。
「坊主。おめぇ、なんか失礼な事考えてんだろう?」
「いえいえ、ガイスさんは勇者だなと尊敬の念で見ております。はい」
「そ、そうか。て、照れるじゃねぇかよ。ワッハッハ!」
結構、扱い易い人なのだろうか?
「ネロ君。あなたなかなかのやり手ね……侮れないわ、この子」
何を言ってるのかな、このお姉さん? こんな純真無垢な青年、他には居ませんよ。失礼だよね。ミーちゃん?
「みぃ……」
あるぅえ~? ミーちゃんはそう思っていないんだ……そうなんだ……orz。
「それで、ネロ君はここで働く気はあるのかしら?」
「はい。本当はハンター志望ですが、武器屋のオッチャンに鍛えて出直してこいって言われて、途方に暮れていた所に舞い降りた幸運。ミーちゃんの保護者としてニートって言うのも聞こえが悪いですからね。これでニート脱出、喜んで粉骨砕身働かせて頂きます。でもハンターになるのは、諦めてないですよ」
「そ、そう。ニートってのが何かわからないけど良かったわね。それにここで働けば空いてる時間に裏の訓練場も使えるし、教官もいるからハンター目指すなら最高の職場だと思うわ」
「ケッ! この坊主がハンターだって、無理に決まってんだろ! 街の外に出たらおっ
ぐぬぬ……毎度毎度、的確なご意見痛み入ります。見てろよ、いつかギャフンと言わせてやるからな! 俺はやれば出来る子って、散々言われて来たんだ。やれば出来るんだ。きっと……なんか涙が出てきたよ。
「み~」
ありがとう。ミーちゃん。俺はやるぜ! やってやるぜ! たぶん……。
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