第六十六話 心の準備

えー、曉と対峙しているエネミー、クインの名前についてですが、名前と口調を変更することにしました。

名前は『クイーン』からとったクインから、『キング』からとったキグにしたいと思います。

あと、口調はオネエ口調だったのですが、男の口調に変更しました。

勝手な変更ですが、ご理解お願いいたします。

前書きは以上です

 

※ ※ ※


 「て、天人......!?」


 キグはたじろぐ。

 周りのメンバーもどよめきが起きてる。

 

 「その驚き方、完全にノーマークだったようですね」


 曉は天獣手となった手でネクタイをキュッと締める。


 「......さて、心の準備はよろしいでしょうか?」

 「何......?」


 曉は微笑しながらキグ達へ向かってゆっくりと歩いていく。


 「用は済ませましたか? 走馬灯を見る準備は出来ましたか? 地獄への切符は......ちゃんと持っていますでしょうか?」


 彼のその挑発にキグは反応した。

 顔が隠れているので表情は分からないが、恐らく鬼の形相をしているだろう。


 「く......言わせておけば! やれ!!」


 キグは手下に指示をするが、彼らは怖じ気づいて、その指示に従わない。


 「やれっていってるんだああ!!」

 「ひっ!!」


 廊下に響き渡るくらいの彼女の叫びでようやく曉に向かって盾で身を隠しつつ、剣の刃先を突き出して、曉に突撃してきた。


 「哀れですねぇ......」


 と言いつつつつ曉は左腕を前に出し、掌を広げ、右腕を添える。

 

 「気砲、発射」


 と呟くと、曉の掌から気砲が手下に向かって飛び出してきた。

 彼の柔らかそうな髪がフワッと浮く。

 気砲は手下の盾を容易く貫き、彼の体にも穴を開け、さらにその後ろの手下にも当たり爆裂した。


 「盾なんて無駄ですよ」


 手下は怯んで足を止めたが、


 「何止まってる! 行かんか!!」


 キグの命令で嫌々動き始めた。


 「ぬおおおおおお!!」


 手下が曉の目の前まで来た。

 顔にしわを作っており、恐怖に怯えているような、そんな表情だった。


 「面白い顔をしていますね」


 しかし、曉は躊躇いもせず天獣手で手下の顔を輪切りにする。

 また一人、今度は盾で彼の動きを止めようという作戦なのか。


 「だから言ってるじゃないですか」


 彼は手を真っ直ぐにし、手下の盾を突く。


 「盾なんて無駄ですよ......」


 手は盾を突き破り、手下の胸にめり込む。


 「ブッ」


 彼は血を吐き、苦しそうな表情を浮かべる。

 その顔は、曉を恨んでいるようにも見える。


 「恨むなら、あそこの気持ち悪いエネミーを恨んでください」


 と言いながら下の体から手を素早く抜く。

 手下はドサっと倒れこんだ、


 「......自動小銃!!」


 キグがそういうと、銃を持った手下が6人、曉の前に現れ、彼に銃口を向ける。


 「銃ですか......」

 「撃て!!」


 キグが合図すると、銃から一斉に銃弾が放たれた。

 銃弾が壁や床に着弾する音が絶えないくらいに弾幕は濃かった。

 しかし、曉はそれに被弾する様子は一切なく、何と銃弾を避けたり、天獣手で防いでいる。


 「なんで当たらない!?」


 クインがそう嘆いていると、一人、また一人と銃撃を止めた。

 

 「何を止めている! 銃を放て!!」


 しかし、それでも撃つ様子はない。

 キグが不審に思い、そのうちの一人の肩を叩くと、その上半身が崩れ始めた。

 切断面からは血があふれ出る。


 「!!?」


 ほかの人たちも同じように崩れ始め、血だまりを作っていく。


 「なに、どうなってんだ......」

 「銃弾を避けつつ、一人ずつ始末しただけでございます」


 暁がハンカチで赤く染まった天獣手を拭きながら、キグに歩み寄っていく。


 「そんなこと、出来る訳が――」

 「できますよ。銃弾なんて、銃口の向きを見れば、弾道を予測して簡単に避けれますよ」


 曉はそれが当然だとでもいうかの如き口調で、キグに銃弾の避け方を説明する。


 「えー、貴方の手下はみんなを通りましたが、あなたはどうするのですか? 顔を真っ赤にして逃げますか? 無様に抗って死にますか?」

 「くっ......貴様はいったい何者なんだ!」

 「私ですか? 私は、新谷曉――ミカ・レヴェリッジお嬢様の、忠実な執事でございます」


 曉はキグに一礼する。


 「おのれっ!!」


 キグがムカデのような下半身の先を上げると、そこから大きめの棘が出てきた。

 キグはその棘を曉に飛ばす。


 「お」


 曉はそれを軽くかわす。

 すると今度は、腰に備えてある二つの大剣を抜いて、曉に斬りかかってきた。


 「遅い」


 曉は大振りしている剣をスルッと無駄のない動きでかわす。


 「ふんっ!!」


 キグは剣を同時に降り下ろす。

 しかし曉はそれを手で簡単に受け止める。


 「大振りな上に重みもない、脅威でも何でもありませんよ」


 そして曉が両手に力を入れると、その剣にはヒビが入り、とうとう砕けてしまった。


 「んなっ!?」


 キグが折れた剣を見て驚く所を、曉が上半身に向けて至近距離で気砲を放つ。


 「うがぁっ!!」


 キグは大きく後退させる。

 曉は両かかとを着けながら立っている。

 

 「悪足掻きはもう止して、楽になりなさい。手下が待っていますよ。貴方が来てくれたら、さぞ喜ぶでしょう」

 「く......まだ、まだ終わらんぞ!!」


 すると、キグの上半身の装甲にヒビが入り始めた。


 「はぁ、悪足掻きはするものじゃ有りませんよ......」


 と、装甲がどんどん剥がれていく姿を見ながら、曉は溜め息をついた。

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