第五十話 収容所防衛戦その1:所長はお姐さん
作戦決行当日。
P市攻略作戦開始の時間である午後9時の15分程前。
アマツは、エネミー地下収容所の入り口の前に立っている。
収容所は飾り気のない真っ白な円柱の形をした建物だ。
地表から出ている部分は高さが6メートルだが、その地下にはエネミーが収容されている巨大な収容所があり、地上に出ている部分はまさに氷山の一角である。
その地上部分の裏側にも、捕獲したエネミーを入れる大きな入り口がある。
「えーと、ここにカードを差し込むっと」
彼は入り口の横にあるカードスキャナーにカードをスキャンさせた。
すると、その入り口の扉がググっと開きだした。
二重になっている扉は左右に開いたあと、その奥の扉が上下に開く。
かなり襲撃を警戒しているのが分かる。
そして、その扉の向こうを見たとき、アマツは萎縮し、一歩下がった。
「うっ」
そこには、ガチガチの筋肉がついている大男が4人、立っている。
顔に傷がついている人もおり、ヤクザのような雰囲気を出している。
「赤城アマツだな」
「は、はい......」
ある男の押し潰すような低く重い声に思わず敬語になってしまうアマツ。
いくらアマツでもこんな奴らが一斉に襲いかかってきたら一溜まりもない。
「あらぁ~、アマツちゃんね?」
すると、その男達の中から、比較的細身の人物が出てきた。
その人物は、明らかに男のような顔をしているのにも関わらず、ロングヘアー、唇にリップクリーム、厚めの化粧をしている。
(え)
アマツはさらに一歩下がった。
一瞬で彼の性格を悟ってしまった。
そう、彼はオカマなのである。
「聞いたわよ、最近活躍しているって!」
彼は手を合わせて彼を褒める。
「あ、自己紹介忘れてたわ! 私、ここの
「あ、ど、どうも、宜しくお願いします......(子.....?)」
「じゃあ、早速貴方の場所を案内するわね!」
と、彼はさっさとアマツを案内する。
アマツは彼についていくため、入り口に入ると、そこには
アマツは大男達に囲まれながら、その階段を降りていく。
この収容所は、地下6階まであり、1と2がレベル1~2のエネミー、3と4がレベル3~4のエネミー、5がレベル5以上のエネミーが収容されている。
各階には尋問室があり、そこで言語が話せる知的なエネミーに尋問をしている。
(この人が本当に恭介さんと互角の強さを持っているのか......?)
と、アマツが疑問に思っているうちに4階に着いた。
そこには、またしてもムキムキな男たちに加えて、すでに到着している戦士もいる。
「......筋肉質な男が好きなんですね」
アマツはその光景を見ながら祐二に質問する。
「ええ、私、ムキムキで強い男大好き! だから私はムキムキな人ばかりを集めてるわけよ。あ、でもアマツちゃんみたいな人も好きよ♡」
と、祐二はアマツにひっつく。
「え......」
彼は突然の行動に戸惑いを隠せず、声を漏らす。
が、彼はそんなことは気にせず、
「さあ、ここのリーダーのところに連れて行くわね」
と、彼はアマツを連れてそのリーダーのところへ連れて行く。
(リーダーって、No.8のことだっけ)
今回の警備は、ディフェンサーズには各階ごとにその集団を纏める『リーダー』というものを配置している。
1階がナンバーズ門番の恭介、2階がNo.16の泰昌、3階がNO.7の黒幕さん、4階がNo.8、最深部である5階と収容所の職員を指導するのが所長祐司である。
そのNo.8というのはスリニア・エアハートという人物である。
彼女の能力はディフェンサーズの中でもかなり凶悪とされており、1年ほど前からナンバーズに入ってからぐんぐんとそのナンバーを上げている。
(確か、スリニアって言ったよな......)
アマツも彼女の名前や能力が凶悪だということについては認識していたが、容姿や凶悪とされている能力の詳細については知らない。
「グオオオオオオ!!」
その時、アマツのすぐ隣で、ネコ科の類とみられるエネミーが叫びだした。
「うわっ!」
突然大声で叫ばれたものだから、アマツは体をびくっとさせて驚いた。
鉄より固い格子の向こうで、鎖でつながれたエネミーが興奮している。
「あら、アマツちゃんのことを歓迎しているようね」
祐司は笑顔でそのエネミーに手を振る。
「じゃあ、アマツちゃんもエネミーに挨拶していきましょ」
祐司に言われて、アマツはぎこちなく、
「.....どうも」
と、少しだけ頭を下げる。
エネミーはいまだにグルルと喉を鳴らしてこちらを見ている。
そのエネミーをアマツ達は後にした。
そしてまたしばらく歩いていると、
「あ、いたわ!」
祐司が4階のリーダーを発見したようだ。
アマツは祐司が向いている方向に目を向けた。
そこには、120センチメートル前後の小柄な女性が、パジャマ服の姿で浮いている。
「ん......あー、祐司さぁん」
その女はこっちを向くと、瞼をわずかに開けた状態で、気が抜けるような口調で祐司の名を呼ぶ。
「......あの人が、No.8の、スリニア?」
「ええ、そうよ」
アマツは肩透かしを食らった気分になる。
(この人が、凶悪な能力の持ち主......?)
アマツはこう疑問に思うのだが、後に彼女は、まさに『凶悪』という言葉が似合うような、恐るべき実力を発揮することになる。
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