ペソ一派殲滅戦

第十六話 なぜか俺は大魔王の幹部を倒す役に任された

 E村の人気が全くない森林に、大きな建物が建っていた。

 野球ドーム4個分の館で、天井10メートルほどである。


 そこには、鎧を纏った大魔王と、2体の手下がいた。


 「これはこれは、お帰りなさいませ、ペソ様」


 4足のピエロのような顔をした手下、マルクは揉み手をしながら言った。


 「どうでしたか? 19区侵攻は?」

 「失敗した」


 ペソは椅子に座った。


 「失敗ですか? 雑魚な手下はどうなされたんですか?」

 「あのディフェンサーズに全て倒されたわ!」


 ペソはその事にイライラした様子で言った。

 マルクはその怒声に萎縮した。


 「ひっ! そ、そうですか......」

 「ディフェンサーズはかなり強力でございますから」


 蛇のような形をし、その頭は大きな目玉が一つあり、頭部近くの横に2本の腕が生えている手下、ユーロは言った。


 「もう一度戦力を集めて再度出撃したら言いかと......あれ、ペソ様?」


 マルクは首を長くし、ペソの方に向かった。


 「どうした?」

 「その、肩に付いているのは一体......?」


 マルクの首は、その物体がついている場所にあった。

 ペソが黒い物体を取ると、何やら機械のようなものが付いていた。


 「なんだこの機械は......?」


 ペソが疑問に思っていると、ユーロは慌て出した。


 「ぺ、ペソ様、それは一大事です!!」

 「どうした、ユーロ?」

 「私達の居場所や声があの人類にバレてる可能性が!!」

 「なに?」


 ユーロは頭を抱えた。


 「その機械は、恐らく私達の居場所等を突き止めるための物でしょう! もしそうだったら、私達の拠点がバレて、攻め込めれてしまいます!!」

 「な、なんだと!? くそぉ、人類め! 卑怯なマネをぉ!!」


 マルクは悔しそうに言った。


 「まあいい」


 ペソは冷静に言った。


 「それなら返り討ちにするまでだ......人類よ、ディフェンサーズよ、来るならこい!!」


 そう言うと、ペソは機械を握りつぶした。



 ※ ※ ※



 「ここ、合ってるかな?」


 アマツは「会議室1」と書かれた表札を見た。


 彼は役員に呼ばれ、1区のディフェンサーズ本部に来ていた。

 その本部のビルは、エネミー対策なのか、かなり頑丈で、窓が無い。

 その中には役員がいる。


 「俺が呼ばれた理由は、多分大魔王の件だろうな」


 アマツは、一回深呼吸をして、その扉を開けた。

 そこにいたのは、アリアスと、No.4のエドナと、No.6のアシュリー、他にもいろいろな人物がテーブルを囲っている椅子に座っていた。

 その人たちは、アマツに視線を注いだ。

 執事の服を着ている人、小学生、忍者の服装をした人、顔を覆面で覆っているひと等がいる。


 彼はその人達に恐れながら残りの1席に座った。


 「遅かったね」


 隣に座っているアリアスが言った。


 「いいだろ、時間には間に合ったし。でさお前、19区防衛に参加したのか?」

 「いたよ?」


 と、アマツとアリアスが話していると、誰かが入ってきた。

 役員だ。


 「......ミカ君は来てないのか? そこの執事」


 彼は執事服を着た青少年に話しかけた。


 「はい。お嬢様に『面倒臭いからあなたが行ってちょうだい』と言われましたのね......」


 と、彼は苦笑いした。


 (あ、本当に執事だったんだ......)


 アマツはそう思った。


 「......まあいい、取り敢えず、よく来てくれた」


 彼は両手をテーブルにつけながら話始めた。


 「みんなをここに集めたのは他でもない」


 彼は、一呼吸置いた。


 「今日、ペソを倒して欲しい」

 「今日いきなりやるのか?」


 目も口も、目が書かれた覆面で覆っている男は、犯人の声を加工したような低い声で言った。


 「ああ、今日だ」

 「でも、居場所はわからないんじゃないのか?」


 アシュリーが質問すると、メガネをかけた男、デリックがそれに答えた。


 「そんな心配は無用だよ、アシュリー」

 「どういうことだ」

 「エドナがわたしの作った機械をペソにつけてきた。だからあいつの居場所が分かるし、ついでに盗聴機能もついている。その役員に頼まれた」

 「そう。私達役員がデリック君とエドナ君に頼んだんだ。ではデリック君、結果をみんなに説明してくれ」

 「了解」


 デリックは、パソコンを取りだし、機械から得た情報を確認し始めた。


 「ペソは、E村の森林に拠点を構えていることが分かった」

 「拠点ですか?」


 アマツが口を挟んだ。


 「そうだ。私が推測するには、かなりの大きさだ。そして、大魔王には、まだ二人の手下がいることが、盗聴で分かった」


 (へぇ、すごいな)


 アマツはデリックの技術力の高さに感心した。

 デリックの説明が終わると、役員は再び話始めた。


 「それで、私達役員は、デリック君が得たデータを元に、こうして君達を召集したんだ。そして今から、その討伐隊の班を発表する」


 そう言うと彼は、書類を見た。


 「えー、班は、大魔王ペソ討伐班と、その幹部のマルク討伐班、ユーロ討伐班があるが、まずはユーロ討伐班を発表する。甲斐佐助とベンガル・マクレン!」


 「俺か」

 「僕は幹部か......」


 No.12の忍者、佐助と、No.11の小学生、ベンガルはそれぞれ言った。


 「次にマルク討伐班は、赤城アマツ、アリアス・ドロワー、榎田恭介!」


 「私はラスボスじゃなくて幹部か......まあ、仕方ないのか」


 アリアスはそう言った。


 「やっぱり俺は幹部か」


 アマツは予想通りだったので、大した反応は見せなかった。


 「......でも、なんで俺みたいな上級戦士が?」

 「君達の実力なら幹部位は倒せるかと思ったからだ」


 (なんだそれ......)


 アマツは役員の理由に呆れた様子だった。


 「大丈夫だ。上級戦士最強の恭介君がついているから、ピンチになったら彼が助けてくれえる」


 「ああ、任せてくれ」


 Tシャツを着ているやる気の無さそうな恭介は、これまたやる気無さそうな声で言った。


 (だ、大丈夫かこれ......)


 アマツが不安に思いながら、役員はペソ討伐班を発表した。


 「ペソ討伐班は、黒幕さん、アシュリー・エイリー、デリック・キャンベル、エドナ・フリント、ミカ・レヴェリッジ!」


 役員は、書類を降ろした。


 「......この構成で行くことになった」

 「あの大魔王にナンバーズを5人か......ちょっと多すぎだと思うなぁ。私一人であいつ押してたし」


 エドナは腕を組んだ。


 「でも、戦力が大きいに越したことはないだろ。下位とはいえナンバーズ4人を倒しているわけだし」


 アシュリーがエドナに対していった。


 「じゃあ、このことはお嬢様に伝えておきますね」


 ショートヘアの執事はメモを取りながら言った。


 「では、会議は以上だ。さっそくE村の森林へ向かってくれ!」


 役員はそういって、会議室をあとにした。


 「......さて、僕らもE村に行くか」


 アシュリーが席を立つと、ほかの人たちも席を立ち、会議室から出ようとした。


 「アマツ、いくわよ」

 「うん」


 二人も立ち上がった。


 もうすぐ、ディフェンサーズが発足されて以来、最大規模の戦いが始まる。

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