第十五話 天使は大魔王に敵うのか?

 「よっと」


 彼女が地面に降りると、そういいながら言って麗美を降ろした。

 そして彼女は、このエネミーと戦士の血で染まった光景を見渡した。


 「うわぁ、こりゃひどい」


 茶色と黄色のオッドアイの彼女は、そういった。

 周りには彼女の羽がひらひらと落ちてくる。


 「ナンバーズもこんなにやられるか......いやぁ参ったな」


 彼女は黒い髪をかきあげた。

 白い翼は畳まれてある。


 「ぶ......エ、エドナちゃん......」

 「うわっマルオ!?」


 エドナがマルオが喋ったことに驚きながら、彼に振り向いた。


 「意識まだあったんだ......」

 「あ、あいつだぶぅ、あいつがやったぶぅ......」


 マルオは弱々しくペソを指差した。


 「なるほど......じゃあ、私はあいつを倒せばいいのね? よし、やるか! No.4の名に懸けて!」

 そう、彼女こそが、No.4である。


 「彼女が、No.4......?」


 アマツがNo.4を見て行った。


 「ああそうだアマツ。あの人はエドナ・フリント。『天人てんじん』という種族の人間だ」


 天人は、古くから人類の民族の一つとして栄えていた種族である。

 普通の人と違うのは、寿命が3倍ほどあり、背中には白い翼が生え、さらには手は戦闘時に変形させることができ、それは『天獣手てんじゅうしゅ』と呼ばれている。

 その手からは、『気砲きほう』と呼ばれるエネルギー波を出すことができる。


 天人は、普通の人類を『地人ちじん』と呼び、その地人は天人の能力の強さに恐れていた。

 だが、核戦争により天人のほとんどが死滅し、生存している天人はほんのわずかである。


 そして今生きている天人の中で、エドナは戦闘能力において特に優れた才能を持っていた。

 飛行速度は隼のように早く、彼女の天獣手はほかの天人よりも強い。

 彼女は天人の中では神童ともいうべき存在であった。


 アマツも天人については認識していた。


 「「天人......聞いたことはあります。けど、天人を見るのはこれが初めてです」

 「いや、見てるかもしれないぞ? 普段は翼を隠しているしな」


 アマツとジュールが会話しているうちに、エドナはペソに向かって言った。


 「なかなか派手に暴れてくれたじゃない? そこの鎧」

 「また虫けらが死にに来たか......」


 ペソは剣を彼女に向ける。


 「......さて問題です」


 エドナはいきなり問題を出し始めた。


 「ん?」

 「この戦いで勝つのは誰でしょう? ①私を虫けら扱いしたとっても強い鎧のお前 ②虫けら扱いされたかわいそ~な私」


 エドナはそういうと、手に力を入れ始めた。


 「な、何をするんだ、あの人......?」

 「多分、あれになる......」


 エドナの手はだんだんと黒く、指先が鋭くなっていった。


 「答えは......実際に戦ってはっきりしょうじゃないか!!」


 その後、彼女の肌色だった手は真っ黒になり、指先には獣のような鋭く、黒い爪が出現した。

 直後、彼女は翼を広げると、ペソに向かって飛んでいった。

 彼女がペソに殴り付けると、ペソは剣でそれを防いだ。

 ペソは剣をエドナに向かって振るが、彼女はそれをことごとくかわした。


 戦士たちの彼女を応援する声が聞こえる。


 「気砲を喰らえ!!」


 彼女は手からエネルギー波をペソに出した。

 それは、ペソの上半身に直撃した。

 すると、鎧が傷ついていた。 

 笠置姉妹の攻撃で一つもつかなかった鎧がである。


 「小癪な!!」


  ペソは負けじと光弾を撃ったが、それもエドナにかわされ、背中に回り込まれた。

 そして彼女は、ペソの方を左手で掴むと、右手で鎧を引っ掻き始めた。


 「く、こいつ!!」


 ペソは身体を振り回し、エドナを体から離すと、光弾を彼女に撃った。

 その弾は、エドナに当たった。

 彼女は煙に包まれた。


「エドナさん!!」


 アマツは彼女を心配した。

 なにしろ、その弾の威力はかなり高い。

 あのエドナも大ダメージを負うはずだ。


 だが、煙が白い翼によって吹き飛ばされたとき、アマツの予想は外れたということがわかった。

 彼女は無傷だ。

 天獣手で防いでたのだ。


 「なんだと......」


 これにはさすがのペソも少し動揺しているようだった。


 「がっかりだな......その程度の実力か」


 エドナは少し呆れた様子で言った。


 「もっと強い相手だと思ってたんだけどなぁ......」


 彼女はペソを挑発した。

 が、彼は攻撃してこなかった。


 「少々甘く見ていたか......」


 そう言うと、ペソは紫色の不気味な煙に包まれた。

 直後、ペソは消えてしまった。


 「あ、逃げたか」


 エドナはすたっと降りた。

 そして天獣手は通常の手に戻っていた。

 戦士たちからは、この恐怖から逃れられたことを喜び、歓声を上げている。


 (あのナンバーズ4人を以てしても敵わなかったのに......なんであんなに強いんだ? それに、あの人より強いのが3人も......)


 アマツは、No.4の強さ、そしてその人にまだ3人も上がいるということに一驚を喫っした。


 「逃げられてしまったぶぅ......」


 マルオは割れたメガネを片手に持ちながら言った。


 「なぁに、あいつの逃げ場はもう無いわよ」

 「どういうことだぶぅ?」

 「デリックが作った......GPSだったっけ? そういうのをあいつの身体につけたから、アイツの居場所はバレバレだよ」


 彼女はペソの背中に周りこみ、鎧を引っ掻いたとき、左手でGPSをつけていた。


 「じゃあ、私はもう帰るわ。一応目標は達成したしね」


 彼女はそういって、しゃがんだ直後、空中に飛んで行った。


 「ぶ、ぶぅ......」


 マルオは彼女を見送った。


 「ああ、なんか、俺たち全然活躍してませんでしたよね......」


 アマツはうつむきがちに言った。


 「まあ上級戦士はそんなもんだ......ナンバーズに比べたら、俺らなんか害虫の駆除をしているにすぎないんだよな......」


 ジュールはアマツの肩をポンと叩いた。


 「ぶ、ぶぅ! 要ちゃんも意識がないぶぅ! お前ら、早く病院に運ぶのを手伝うぶぅ!」


 マルオが動ける戦士たちに呼びかけた。


 「アマツ、いくぞ」

 「はい」


 アマツやジュールは、マルオの呼びかけに応じた。


 (俺も、あんな風に強くなれたらいいなぁ......)


 アマツは、倒れている戦士を担ぎながら、そう思った。


 



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