第1話

これは僕が中学2年だった頃の話



修学旅行で京都に行くことになっていた。2泊3日で数々の有名な観光名所を巡るというものだった。バスでの移動がメインだったのでとても疲れが溜まったのを覚えている。



よく『京都と言えば~、、〇〇』というような有名な場所を巡りに巡った。


初日の予定を終了してあとは泊まる宿に向かうだけになった。 泊まる宿は京都の由緒ある某旅館。 規模は大きいと聞いていた。






僕『明日は清水寺か~、人の数がヤバそうだな』


友人A『だからめっちゃはやい時間なんでしょ、5時起床ってなんだよ』


友人B『せっかくモンハン持ってきたのにあまり遊ぶ時間はなさそうだね。…恋バナでもするか!』


友人A『いいな、それ!』







と、宿に向かうバスの中、僕は仲の良い友人達と談笑していた。するとそのうちの1人、Cが持ってくるのが禁止されている(当然モンハンも禁止なのだが)スマートフォンを隠しながら使っていた。






僕『C兄貴何調べてんの?』


C『心霊スポットだよ。奈良や京都は心霊スポットが多いんだ。実は今日とまる宿もネットじゃ有名なところなんだよ』


僕『は?そんなん聞いてねーぞ!!(声だけ迫真)』


僕は呪いや心霊現象に興味はあったがビビリだったので、それはあまり歓迎できるようなことではなかった。



C『ホラホラ、見ろよ見ろよ、知恵袋とかでも修学旅行生の心霊体験とか載ってるよ』



A『そう・・・(有関心)』






そんなことをしてるうちに宿に着いた。話に聞いたほど大きくはなかったが、和の感じが溢れる旅館で、内心「こんなとこ、俺らが泊まるようなところじゃねーじゃん!!」と思った。



宿に着いてからは判別行動になるためCとはここで分かれることになった。



一夜を過ごす小部屋は大体8畳の和室とトイレ、風呂、かなり小さい冷蔵庫、当時最新だった薄型テレビ1台だけとシンプルな感じだった。



風呂と食事を済まし、敷布団を敷いてAやBとの夜会の準備は完了した。


A『〇〇!B!準備できたか?』


B&僕『おう!』




そうして夜会は始まった。中学生によくあるクラスメイトの話から始まった。












~・・・・・・


A『俺、最終日Zに告るんだ!』



B『マジ!?俺も!』




僕『は???』



完全に想定外の展開だった。友人達はどちらかというと草食系だったはずなのに。

話は大いに盛り上がった。話疲れたのか、日付が変わる頃には2人ともぐっすりと眠ってしまった。








まだ春先で夜中は冷えるので、僕は深夜1時頃、和室から少し離れたトイレに向かった。



トイレは個室で高そうなウオッシュレットだった。

用を足そうと寝巻きのズボンを下ろした。


その時だった。





僕『『!??』』





突然背中を グイッ とまるで誰かにに掴まれ引っ張られたような感触があった。




僕は反射的に背後を振り返った。



当然だが背後には誰もいない。







漏れそうだった声を押し殺し、急いで布団に潜った。




さっきのは一体何だったのだろうか




布団の中で僕は得体の知れないものに恐怖を覚えていた。



しばらくすると、天井裏からなにかが動き回る音が聞こえ始めたした。




『コツコツ、コツコツ』





その音は次第に大きくなり、天井から壁、壁から床に






『コツコツ!、コツコツ!』






まるで何がが移動しているかのように。







『コツコツ!! コツコツ!!』






まるで僕に近づいてくるかのように。


このとき僕の手足は汗でぐちょぐちょだった。





恐怖





コツコツという音は枕元で止まった。そこには確実に



'何かがいる"



そんな気がした。








「ミツケタ」






ソレは突然布団の中に現れた。




…その後の記憶は全くない。あまりの恐怖に失神し、その後寝てしまったようだった。














翌朝、Bのけたたましい目覚ましの音で目が覚めた。 昨夜の霊(?)の気配は無い。



服を着替え、朝食に向かった。



食事中AとBに昨夜の出来事を話そうと思ったがバカにされると思い、話すことはしなかった。






2日目は予定通り清水寺へ向かった。僕は昨夜のことは忘れて楽しもうと思った。





A『うおー!!全然人いねーぞ!!やったぜ!!!』



B『あとであのデカい土産屋いこーぜ! ……なんだよ〇〇。浮かない顔して、どうかした??』



僕『昨日あんまり寝られなくてさ~、はは、気にしなくていいよw』




A『ほ~う、さては海賊コムでアレしてたなww』



僕『してないわ!!w』



Aは僕が体調が悪いと思ったのか、心配してアホな冗談で励ましてくれた。

僕は精一杯の作り笑顔で応えた。





昨日のアイツは何だったんだろう







2日目の日程はまた多くの観光名所を巡り、最後には伏見稲荷を参拝することになっていた。



・・・・・・・・・


B『Aがさ~、告るとか言い始めるから~~~~~~』



A『はぁ!? それはお前だけだろ!』



D『コイツらほんと仲良いな。 ホモなのかな?w』




A&B『『それはない!』』





楽しく過ごしていると嫌なことを忘れてしまう。


僕は昨夜のことなどこのときは微塵も頭になかった。





・・・伏見稲荷につくころには夕方であたりは暗くなり始めていた。



流石にこの時刻になれば別の学校の修学旅行生がちょこちょこといるだけになっていた。



それでも人気スポットの鳥居には人が集まっていた。



僕『やっぱり鳥居は人気だなァ。』




A『人もいることだし、鳥居は後回しで集合時間に間に合う時間で行こうぜ?』




B『おっ、そうだな』





Aの提案で鳥居は最後にまわることにした。





3人で本殿を参拝し、狐の絵馬も書いた。



僕『受験受かりますように…っと』



B『お前受けるようなところは普通に受かるでしょw 』




A『まぁ、そうやな…』




僕『バカにしてー! フンだ』





実際AもBも模試で県下一の進学校をA判定を貰っているような秀才だった。




一方僕は彼らほど余裕はないので全ての神社、寺で合格祈願をしていた。






集合時間10分前に千本鳥居の入口に着いた。



すっかり陽は落ちて辺りは真っ暗だった。

僅かな明かりしかなく、周りには誰もいないようだった。




「怖い」と思った……が、




B『ここは企業とかがお金を払って鳥居をおいてるところがあるんだとさ、

地元のヤツあるかな?』





A『じゃあ、賭けをしようぜ、1人500円で勝者総取り。誰も見つけられなかったらドローで』





B『あぁ^〜、いいっすね^~』




僕『やめとこうぜ?罰当たりだぞ。』




A『それくらいやんないと10分じゃ帰ってこれないだろ?? もしかして〇〇ビビってる?ww』




僕『仕方ねぇなぁ。とっととやるぞ』



と、Aの挑発に乗ってしまった。





~~~





A『用意はいいか?』



B&僕『いつでも』




A『あっ、そうだ(唐突)どうせなら2組に別れてやろうぜ。途中ですれ違うだろうし。』



僕『正気か!?誰か1人になるぞ!』



B『俺は賛成。スリルが味わえるじゃん?しかもそっちの方が楽しそうだしな!』



A『ハイ、賛成二票だから決~定!〇〇はビビリだから組んでやってもいいけど公平にするからジャンケンな』



僕『えぇ……』




こういうといき限り無類のジャンケンの弱さをもつ僕は案の定1人となった。




A『では†改めて†、、、』



3人『よ~い、スタート!!』




僕達は暗闇を走り出した。





灯はほぼ無いので真っ暗だった。








僕『ハァ、、ハァ、、ハァ』




石畳をひたすら駆ける。









その時



僕『ウッ!?』




夢中で走っていると何かにつまずいて転んだ。





石段につまづいたのか足元を見ると、






'得体の知れない腕"







が足首をしっかりと掴んでいた。











僕『うわぁぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!』




僕は奇声を上げて、腰を抜かした。





僕の奇声はあの2人にも届いたようで、

異変を感じた2人はすぐに駆けつけた。



『で、でででで出たッ!見えたッ!!』






ガタガタ震える歯を見て、僕がただならぬ様子であると判断したようで、二人がかりで僕を担ぎ、クラスメイトが待つバスへとむかった。




この時点で失神してしまい僕の記憶は曖昧だ。




2人は先生に事情を説明したようで、意識が朦朧としている僕は近くの寺でお祓いをしてもらうことになった。








その後僕が目を覚ましたのは2日後の昼だった。







ふと見上げると若い坊さんが見下ろしていた。



僕『ワッ!!』




坊『ははは、そんなに驚かなくても大丈夫だよ。 私はこの寺で住職をしている者だよ。』





僕『あれ、修学旅行…』





坊『あぁ、それは残念だが終わってしまったよ。君1人残してね。』





僕『…皆帰ってしまったのですか?』





坊『あぁ、そうだ。君は2日間熱でうなされていたんだ。でもね、問題は熱ではなくて君に'憑いていたもの"なんだよ。』




僕『憑いていた……もの…?』





坊『あぁ、「水子の霊」と言ってね、お母さんのお腹の中で亡くなった赤ちゃんの霊のことだよ。』




僕『僕には妹はいますが、何か関係あるのでしょうか?』




坊『おや、君は知らないのかい。君には弟がいたんだよ。いくつか下の。』




僕『……』






坊『本堂でお祓いをしているときにね…周りから聞こえてくるんだよ。「オニイチャン、オニイチャン」とね。なんらかの事情でご両親は君にお話してないようたが、君には弟がいたんだよ。』






僕『どういうことですか?』






坊『京都は霊的な場所が多いだろう?きっときみの弟さんはここの環境に合っていて自分の存在を知らないの君に何かしらのアピールがしたかったんだと思うよ?』





僕『そうなんですか…怨恨とかでしょうか?』




坊『その点については大丈夫さ。水子の霊は基本そのような悪霊にはなり得ないからね。むしろ守り神的な存在なんだよ』




僕『守り神……ですか。』




坊『弟さんは君が自分の存在を知らないことを知ったんだろうね。そして自分の存在を君に認めてもらうために現れたのだと思うよ?』





僕『それは可哀想なことをしてしまいました。どうすれば良いのでしょうか?』




坊『シンプルに水子供養をするところで供養してあげるのがベストだと思いますよ。』



~~~~~~~~~



坊『では気を付けて帰るんだよー。達者でな~。』





僕『大変お世話になりました。ありがとうございました』





坊『ちゃんと供養をするんだぞー!』






京都駅にて住職と別れた。





その後両親が迎えに来て



そこでようやく僕の修学旅行は幕を閉じた。





家に帰るとすぐさま地元の寺で水子供養をした。




姿を見ることのなかった弟の為に・・・











その後僕達はそれぞれの進路に向け猛勉強した。



その結果3人とも第一志望に合格した。



現在僕たちは大学受験のため猛勉強している最中だ。




それぞれが幸せな人生を歩むために…






















ふぅ、と息を吐く。





あの時から僕はずっと考えている。














【'誰"が僕の足首を掴んでいたのか】をね































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