私はイカの寿司が好きだ

まめあじ

第1話

私はイカの寿司が好きだ。

好きな食べ物は何かと聞かれたら「イカの寿司」と答える。

「寿司と答えればいいのでは」と言われることがあるが、イカの寿司は好きでも他の寿司は特に好きではないのだ。

「イカと答えればいいのでは」と言われることもあるが、「イカ」と「イカの寿司」は別物だ。

とにかく私は「イカの寿司」が好きなのだ。


問題なのは大好物のイカの寿司をどのようにして沢山食べるかだ。

遠慮なく好きなものだけ食べられるはずの回転寿司であっても、1人で行ってひたすらイカの寿司ばかり食べようものなら不思議に思われるに違いない。


では、誰かと一緒に行けばよいのではないかと思う人もいるだろう。

だかその場合、もっと酷いことがおこる。

こちらがイカの寿司ばかり食べていると、「なま物が嫌いなら言ってくれればいいのに!」などと相手を怒らせてしまうのだ。

どうやら、生魚が苦手だからしょうがなくイカの寿司を食べていると思われてしまうようだ。

私はイカの寿司を食べたくて食べているんだ、大好物なんだとどれだけ説明しても信じてもらえないのだ。


回転寿司でさえこんな調子なのだから、いわゆる回らない寿司屋でイカの寿司ばかり食べるなんて夢のまた夢だ。

いつか、高級な寿司屋のイカの寿司がたらふく食べてみたい。

方法として思いつくのは、寿司屋の娘と親友になり、「この子、イカの寿司が大好きなの」と伝えてもらい、イカの寿司ばかり出してもらうことぐらいだ。

だが、もしその親友に真実がバレてしまったら、「イカの寿司をたらふく食べるために近づいてきたのね」と悲しむに違いない。

これじゃあまるで、詐欺じゃないか。

イカイカ詐欺、イカ寿司詐欺だ。


やはり、イカの寿司ばかり食べることが許される時代ではないのだ。

いつか、イカの寿司ばかり食べることが受け入れられる、そんな自由な時代が来ることを私は切に願う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

私はイカの寿司が好きだ まめあじ @matty0321

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ