後輩と私

流布島雷輝

第1話


その日、ベッドで眠っていたら、インターホンの音がした。

玄関を確認すると学校の後輩の顔が見えた。


「元気してました?せっかく近所まで来ましたので顔を見ておきたいと思いまして」

「元気も何も昨日会ったばかりでしょう」


私があきれたようにいった。毎日顔を合わせているのだ。

そんなことは確認するまでもないことだろう。


「いいじゃないですか。急病ということもありますし、それに先輩の顔ならいくら見ていても飽きることがないんですよ、私」

「大したことないわよ。私の顔なんて」

「そうでしょうか。十分美人ですよ」

「貴方の方がかわいいじゃない。モテるし」


実際、私たちが所属する部活動では彼女は入部したときから人気が高い。

彼女に近づきたいという男子は両手の指でも足りないだろう。


「あっ、嫉妬ですか?嫉妬ですね」

「違うわよ」

「怒らないで下さいよ。あっ、そういえばお昼食べました?その様子ですとまだでしょうか」


まだだと答えると、目の前にどこかのお店の袋らしきものを差し出してきた。


「ほら、お寿司買ってきたんですよ。一緒に食べましょう」


特に断る理由もなかったので、彼女を家にあげるとテーブルの前に案内する。

彼女は袋の中から割り箸とパックを取り出すとそれを机の上に置いた。

そして、割り箸で寿司の一つを掴むとそれを私の口の前に差し出した。


「はい。召し上がってください先輩♡」

「自分で食べれるわよ」

「遠慮しなくていいですから」

「もう」


仕方がないので彼女が差し出した寿司を食べることにした。

結構美味しい。


「あっ、ご飯ついてますよ」

「えっ、どこ?」


私が戸惑っているうちに後輩がぺろりと舌で私の頬を舐めあげた。


「おいしい。あっ、間接キスですね」


嬉ししそうに彼女が言った。

私は顔を真っ赤にして抗議する。


「いいじゃないですか。減るわけじゃないですし」

「そういう問題じゃないわよ」


彼女はいつもそうだ。

まあ私もそんな彼女のことが嫌いわけではないのだけれど。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

後輩と私 流布島雷輝 @luftleiter

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ