とある寿司屋にて

仁志隆生

とある寿司屋にて

ー 開店セールにつきどれでも一貫百円! -


 R氏はとある寿司屋の前に立てられていた看板を見た。

「まあ、百円なら入ってみようかな」

 そう思い引き戸を開けると

「へいらっしゃい!」

 カウンターにいたのは黒覆面の男だった。

 店の中を見渡すとそこは黒魔術でもやってそうな雰囲気だった。


 R氏はここはヤバイ、と無言で戸を閉めようとした。

「待って下さい、見た目はこうですが味は確かですぜ!」

 男がそう言ってきた。

「あのね、そうかもしれないけど凄く気味悪いよ」

「そんな事言わずに。ささ」

「……まあ、話のネタになるかもね」

「ネタならいいのが揃ってますぜ、リエの女体盛りとか」

「危ない事言うなー!」

「冗談ですよ、なんならハギワラの姿焼きってのがよかったですかい?」

「もっと危ないわー! 消されたらどうすんだー!!」

 

 とまあ、R氏は叫びながらも席についた。

「では何にしましょうか?」

「う~ん、にぎり一人前」

 R氏は投げやりがちに言った。

「へい、お待ち!」

 ドゴオ!


「何で殴るんでやすかい!?」

「にぎりってこれおにぎりだろが!」

「見た目で判断しちゃいけませんぜ!これは中に寿司ネタが入ってるんでやすよ!」

「だからそれおにぎりだろがー!」

「ふ、ふん、じゃあこれはどうなのよ!」

「急にオネエになるな! ……お、今度はまともそうな赤身の……うん、美味い。でもこれトロじゃないよね、何?」

「トト◯ですぜ」

 ドゴオッ!


「二度もぶった! 親方にもぶたれた事ないのに!」

「んなもん食わせんな! てか現実にいるのかトト◯が!?」

「禁則事項です♡」

「ゴ◯ゥーザ様に謝れ!」

「全く我儘な客ねえ……」

「あのねえ、僕もう帰るよ」

「待って下せえ! ではとっておきの寿司を出しやす!」

「ん、とっておきのって?」

「ワタルのおいなりさん」



「またつまらぬものを斬ってしまった」

 R氏は血に濡れた刀を持ちながら去っていった。

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とある寿司屋にて 仁志隆生 @ryuseienbu

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