ジパング・スシ
漂白済
王様とスシ
「陛下、国中で評判の二人の料理人が揃って御座います」
「うむ! 余をあまり待たすなよ? 余はかのスシが食べれるとあってここ最近は何も手に付かないのだ!」
「えぇ、えぇ。そうでしょう。ただちに調理を始めさせます」
冒険家マルコ・ポーロが著した『東方見聞録』。
その文中に、金が溢れるジパングなる島があるらしく、建物は全てが金で出来ているとか。
他国の王達は挙ってジパングの金を求めるが、余は違う!
何を隠そう、余はヨーロッパの諸王の中にあって非凡なる美食のセンスを有しているのだ。
「金なんぞどうでも良い。快も悦も、舌の上で感じるものよ…ナッハッハ! ゴホッ! おい、早くスシを出さないか!」
「陛下、準備が整ったようです。一人めの者、入りなさい」
「ははぁ!」
入ってきた一人目の料理人。手には赤と白の二層の食べ物が皿に盛られている。
「私、城下町でケーキ屋を営んでいる…」
「お前の素性などどうでも良い。して、それがスシなのか?」
「はい陛下。どうぞ」
一人目が余にスシを差し出す。近衛が味見をしようと割って入るが余はそれを許さない。
「スシは余だけが食べるのだ! 近衛は下がっておれ!」
余は一人、スシを手に取って口に運ぶ。
口の中でベリーとミルクの異なった甘さが広がって鼻を甘美な風が通り過ぎる。
「おい。東方見聞録にはスシは鼻に痺れが来る緑の薬味があると書かれていたが、これはただ甘い。ただの甘味ではないか! 死刑だ!」
「そんな!?」
「次の者をここに」
二人目の料理人が王座の前に進み出た。その手にはやはり赤い食材と白い食材………待て、間に緑の層がある。これは三層構造だ!
「陛下、どうぞ。スシで御座います」
「うむ! これぞ本物のスシであるな!」
余はスシを口の中に投げ入れる。
痺れるような味が口、舌、喉とどんどん体内を駆け巡っていく!
「こ、これがスシ…! 手足が動かなくなるほど痺れるぞ!」
「えぇ陛下。じきに全身が痺れて動かなくなりますよ」
ジパング・スシ 漂白済 @gomatatsu0205
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます