淆兔

第1話

あるところに空が好きな少年がいた。

少年は自分が好きな空を飛びたいと思い、

一生懸命飛行士になるための勉強をした。

しかし時代は残酷で、戦争という嵐で少年を追い詰めていった。


優秀なパイロットとなった少年は、

誰よりも速く誰よりも高く空を飛んでいた。

夢が実現し嬉しいはずなのに、少年は喜ぶとこはできなかった。

大好きな空を銃弾が飛び交い、

沈みゆく敵艦と敵機の黒煙で

美しい空はだんだんと汚されていった。


次第に少年の祖国は、劣勢になっていった。

戦いに出る兵士は次第に幼くなっていき、

燃料が段々少なくなっていった。

そしてついには、特攻を命じられるようになった。

少年はいつも敵の弾を避け、

誰よりも多くの弾を撃ってきた。

だがついに、そんな少年にも特攻を

命じられてしまった。


空を飛ぶようになってから、

常に「国の為に戦い、国の為に死ね」と

言われ続け、死と隣り合わせの戦場を

生き抜いてきた。

今までで生きてこれたのは、

家族を思う気持ちもそうだが、

この空をいつまでも飛び続けていたいと

己の夢を忘れずにいたからだ。


だが、もうその必要がなくなってしまった。






そして少年は覚悟を決めた。

「大好きな空で死ねるのなら、

死ぬことも怖くないだろう。」そう思い、

最後の戦場へと飛び立っていった。





しかし現実は、少年に恐怖を与えた。

大好きな空のことを思うことなく、

死への恐怖を抱き、少年は最期を迎えた。








これは、とある一人の少年の話。

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淆兔 @haruya

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