この中で一番クズが死ね!!

ちびまるフォイ

呪いもかけられて、閉じ込められて…

『これは録音音声です。みなさんが起きたころに自動で再生されます』


密室に閉じ込められた男女が目を覚ますと、部屋のスピーカーから音が鳴った。


『この部屋はリアルタイムで監視されています。

 そして、この部屋には呪いがかけられており、

 この中でもっとも死んでいい1人が死にます。』


「ちょっとどういうこと!?」

「ふざけんな!! ここから出しやがれ!!」


『だれか1人が死んだらこの部屋から解放します。

 呪いがもっとも最低な人間を決めるまでお待ちください』


スピーカーはそれだけ伝えて消えた。

部屋にはドアがひとつだけで、監視カメラもない。


「この部屋、カメラがないけど、どこで見てるんだ」


「リアルタイムって言ってたでしょ。

 きっとどこかの壁がマジックミラーにでもなってるんじゃない」


「くそったれ!! ぶっ殺してやる!!」


血気盛んな男はスピーカーを壊して、ドアを蹴って、壁を蹴る。

ただうるさいだけっでとても脱出できるような気はしない。


「私たちがまだ死んでないってことは……呪いが死ぬ人を選んでないってことよね」


「みなさん、どうかこの老いぼれを選んでくださいじゃ……。

 みなさんはまだ若い。この中でもっとも年寄りが死ぬべきじゃ」


「おじいさん……」


「ハハハ! そりゃいい! 確かにその通りだ!!

 おい、主催者! このじじいが死ぬってよ!! 早く出せよ!!」



――何も変わらない。



「見てんだろ!! このジジイを殺せばいいじゃねぇか!!」


「無駄よ! 呪いって言ってたでしょ!

 私たちを閉じ込めたやつらも、誰が死ぬかまで操作できないのよ!」


「そ、そうだと思うんだな……ここはやっぱり……、

 み、み、みんなの、ことを話し合って……死ぬべき人を……知るべきかな……」


「んだと、このキモオタ野郎!!」


男が殴りかかるのをなんとか止めて、みんなで自己紹介することに。

でも、それがムダだとすぐにわかった。


「……ねぇ、これ、ムダだと思わない?

 だって、死ぬかもしれないのに自分の悪いところ明かすわけないじゃない」


「おいオタく野郎!! どうせお前、ロリコンなんだろ!!

 だったらこいつが一番クズってことでいいじゃねぇか!!」


「ひぃぃぃ」


「ちょっと止めなさいよ!!」


オタクは男に蹴られまくっていると、青年がひらめいた。


「……そうだ、この呪いを不成立にさせればいいんだ」


「どういうことじゃ? 年寄りにもわかるように言ってくれぃ」


「この部屋で一番悪いやつが1人が死ぬ。

 でも、先に殺したり、みんなが候補者だったらどうなる?」


「……選ぶことができなくなって、呪いが不成立になるかも」



「あぁ? さっきから何言ってんだてめぇら?」


不良だけはまだ事態を飲み込めていなかった。それは好都合だった。

全員の殺意がこもった目が向けられるとさすがに感づいた。


「ま、まさか……てめぇら、俺を殺して……。

 それで呪いを不成立にさせるってハラか……!?」


「みんなで殺せば、みんな同罪。一番悪い奴を決められなくなる。

 そして、お前が一番悪い奴だったとしても、先に殺せば呪いは不成立……」


「ちくしょう!! ふざけんなてめぇら!! ぶっ殺してやる!!!」


不良は最後まで抵抗したが、みんなで力を合わせて倒すことができた。

誰もが安堵の表情をうかべていた。



「なあ、この状況を見てるんだろ? この通り、呪いは不成立だ。

 これ以上ボクたちを監禁していてもムダだ。出してくれ」


壁ごしに見ているであろう主催者に向けて声をかける。

けれど、返事はない。



「もういい加減にしてよ! これ以上私たちを閉じ込めてどうなるの!?

 早く出して! この部屋で見ているんでしょ!」


「もう許してくれんか。わしらはみな同罪。

 誰が一番悪い奴かどうかなんて判定できないはずじゃ」


「げ、ゲームは終了なんだな、な。早くドアを開けるんだな……な」



ドアは開かない。

それどころかなんの反応もない。



やがて、部屋の隅に座っていた少女がぽつりと言った。



「ねぇ、呪いはこの部屋にいる人から選ばれるんでしょ?

 それって主催者も選ばれるってことじゃない?」



「「「 あ゛…… 」」」




壁ごしの観察部屋では、男女を拉致して閉じ込めて呪いをかけた

もっとも死んでいい人間がすでに死んでいた。

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