スシの一生
シャル青井
それでもスシは進む
さあ、前方に見えるは最終コーナー。
そこを超えると、残るはいよいよ
北の海から始まった長い旅も、いよいよ終わりを迎えようとしています。
一周50メートルのコースを五周。それが鮮度の
気持ちだけが加速する
手は伸びるか、伸びないか。
ダメだ伸びない。
苦しい、ここが苦しい。
時間は残酷です。
誰だって
この
あるのは敗者と、敗者にもなれない残骸のみ。
おっと、ここで前の皿が浮き上がり、また一つ視界が
惨めな惨めな残り物。
それぞれの気持ちが交錯する、遥かなる世界の果ての果て。
こんな末期でも、いやこんな末期だからこそ、その差があまりにもハッキリと浮き彫りになってしまいます。
時間は待ってはくれません。
回り続けるこのレーンは、まさにその象徴か。
そこへ少しずつ、終わりが近づいてまいります。
すなわち絶望が近づくということ。
祈りにも似た歩み。
終わりなき旅の終わり。
掬われ尽きたこの命、誰か俺を救ってくれ。
そんな怨嗟の声が前の皿を押し、亡者の列が連なって進みます。
その先になにが待つのか。
彼らは既に、その光景を目の当たりにしています。
直線の終わり、あの暖簾の先に待つ地獄。
落とされ、終わる。
逃れるためには選ばれてください。
回り続けるこの世界で、それだけが希望となるのです。
生まれてきた意味となるのです。
これが
無双できるのは回らぬ世界に生まれたものだけ。
奴隷があのバーを回すように、歯車が回り続けるように、彼らもまた、意味を問うことさえできずに回るだけ。
だがしかし、その時は来てしまいます。
レーンは終わり、暖簾の下を皿が通過します。
終わりました。
おわりました。
これが、
スシの一生 シャル青井 @aotetsu
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