その4 結婚式場

なおちゃんは大学生になった。


大学はクソ田舎で、なおちゃんはバイトを探せるだろうかと不安になった。すると、大学の坂を降りたところにバスが止まっていて、バイトをしたい人はそれに乗ればいいという。

人足…?しかし、背に腹は変えられない。

なおちゃんはバスに乗った。一時間ほど走り、着いたのは大きな結婚式場だった。なおちゃんは売られずにほっとした。


結婚式場は県の中でも大きなホールで、予約はいっぱいだった。いつも人手不足なのであちこちの大学にバスを出しているのだった。

制服のメイドワンピースとエプロンはちょっといいなと思った。しかしそんな余裕も一瞬、結婚式場勤務はマジで激務だった。

大量のグラスや熱々の皿をお盆で運ぶのも、パンを取り分けるでかいフォークを片手で操作するのも筋肉痛になるほどだった。

大安の日は同じ会場で4回転することもあり、鬼のよーに食事を出し、会場を片づけた。ぐちゃぐちゃだった会場が魔法のようにまた新しく次の披露宴を迎えるのが不思議だった。


6月のある週末、なおちゃんは疲労困憊のあまりグラスの水をお客さまにぶっかけてしまった。社員さんが飛んできてお詫びをしてくれ、事なきを得たが終わった後、なおちゃんは呼び出されて怒られた。「困るんだよな!ワインじゃなかったからよかったものの…しっかりするずら!」

しっかりするずら…!初めて聞く方言に、面白すぎて吹き出しそうだったがこれは絶対にこらえるべきだ!と耐えた。何とか持ちこたえたなおちゃんは、引き続き働いて8月にはちょっぴり出世(?)し、スポットライト係になった。

スポットライト係といっても持ちテーブルもあるので、お盆を運びながら猛ダッシュでケーキ入刀とか両親への挨拶のときに配置につくのだ。


いつも両親への挨拶は感動した。見知らぬ人の見知らぬ親なのに不思議だが、なおちゃんはついつい涙ぐんでしまう。ライトへの集中力が切れてグワンと動いた時にはめちゃんこ怒られた。


総じて、毎日が文化祭のようなこのバイトはなおちゃんに合っていた。激務だが楽しく働いていたが、何しろ通勤1時間以上だったので近所にバイト先を見つけてやめた。


なおちゃんが結婚式場でで学んだこと

・笑ってはいけない方言

・両親への手紙はどんな他人のものでも泣けるということ


なおちゃんが結婚式場で学べなかったこと

・スポットライトの動かし方

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なおちゃんのバイトクエスト 宮原にこ @Goro56

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