任務:取り残された冒険者を救出せよ!!

「助けてください!!」

 

俺たちが報酬の額に舞い上がっていたその時、すぐ隣のカウンターで、女の子の悲痛な叫びがきこえた。

見れば、年の瀬はアリスと同じくらい。

身長は高めで、髪は金髪、目も碧眼で、花が咲いたように可憐な少女だ。

しかも色々とビッグサイズだ。

 

「お、落ち着いてください。まずは事情を-----」

「パーティの方々が取り残されたのです!!私は彼らに逃がされて、何とか危機を知らせに参ったのですが…」

 

緊張の糸が切れたのか、彼女はふらつき倒れてしまう。


「おっと。」

 

すかさず俺が彼女を抱き抱えた。

アリスとはまた違った、汗と甘い香りが混ざったような匂いが鼻腔に届いた。

 

「あ、ありがとうございます…急に足が縺れて…」

「気にしないでくれ。咄嗟に手を伸ばしただけだから。」

 

受付のお姉さんが俺達の様子を伺いつつ話し掛けてきた。 

 

「よろしいでしょうか?ここでは何ですから、あちらの席へ…」

「い、いえ。ここで構いません。」

 

彼女の話をまとめると、こうだ。

 

①自分達はたまたま一緒になったパーティ。

 

②奥へ進むうちに、どんどん魔物が強くなっていった。 

 

③気がついたら周りは魔物だらけ、いつのまにか大ピンチ。

 

そうして、さっきのような状況になったと言うわけだ。

 

「…なるほど、事情は了解致しました。でしたら、今から冒険者の方々を募り、救助隊を組むことと致します。」

「はいっ、ありがとうございます…!!ああ…!!我らが地母神よ!!この出会いに感謝いたします…!!」

 

受付のお姉さんが声を張り上げて冒険者達を募るが、『深層』と言うワードを聞いた瞬間に、皆が黙りこくってしまう。


先程まで希望に満ちた表情をしていた彼女も、時が経つにつれその顔には不安が満ちてきた。

 

このまま誰も名乗りを挙げることもなく、取り残された冒険者達は犠牲となってしまうのか、そう誰もが思った瞬間。 

 

「あの、俺達が行きましょうか?」

 

そう、俺達は名乗りを挙げた。 

 

○○○○○○

 

「ありがとうございます…!!ありがとうございます…!!」


地面に頭を擦り付けそうな勢いで俺に感謝を捧げる彼女。

 

「いや、気にしないでください。困ったときはお互い様と言うし…」

「そうだぜ。困ってる人を助けない理由なんて無いだろ?」

「そうよ。でも、こうやって話している時間も勿体ないわ。早く行かないと。」

 

俺達は途中だった食事もそのままに、必要な荷物だけを背負い、彼女を連れダンジョンの入り口へと向かうのだった。




【セトの墓所】。

その入り口は、まるで神殿のような建物の内部に設置されていた。

普段なら敬遠な教徒達が己の神に祈りを捧げるその場所も、今は俺達四人の足音で騒がしい。

 

「なあ!その冒険者達はどの辺りに居るんだ!?」

「し、深層の第二区画です!!」

   

セトの墓所は、比較的難易度の低い上層、少し上がった中層、そして未踏破区域の深層に分かれており、さらに各階層は5区画に分けられているのだ。

 

深層は現在も踏破中の階層なので、中層より下の階層は全て『深層』と言うアバウトな区切りになっている。

 

 

  

 

 

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