荷馬車でGO!!・三

「うーん…この荷馬車…何を運んでたんだろ。」

「まあ大体想像はつくけどね…」

 

荷馬車の積み荷を確認するため、俺は荷馬車の中に入った。

箱を覆っていた布を剥ぐ。 

 

「よっこらせ…どれどれ、食糧品と…銀貨?」


ジャラジャラと鳴る銀貨が箱の中には積まれていた。

 

「あら、大儲けね。討伐した盗賊の品は全部私たちの物だし、これで豪遊できるわよ?」  

「や、止めてくれ!!それは私が商売をするための資金なんだ!!そ、それが無くなったら…」

「知らないわよ。人の事、殺そうとしておいて都合の良いことね。」

「くっ…」

「とりあえず頂いていくぜ。」

「そうね、丁度良いし、馬車も貰いましょうか。」

「や、止めてくれぇ~!!」

 

俺達は、そう叫ぶ男を無視して馬車に乗り込んだ。

運転するのは俺だ。

雇われで御者を勤めたことがあるからな。

 

パシッと手綱を振るうと、馬はゆっくりと前進し出す。

 

「よし、出発だ。」

「え~と…地図によれば…あそこに岩があって、そこに木が生えてて…うん、そのまま東に向かえば良いわね。」

「うひょー!あいつらたんまり食料を持ってやがったぜ!肉に酒に金!!ヒャッハー!!」 

「その台詞は色々とアウトだから止めて…。」


○○○○○○

 

ゴロゴロと空が鳴り出した。

見れば雲行きもかなり怪しくなっており、このままでは降りだすのも時間の問題かもしれない。

 

「うーん、一雨来そうだなぁ…」

「大丈夫よ。ここは雨に濡れないから。」

「いや馬車の中の話だろそれ。」

「グー…すぴー…」

 

もう半日ほど馬を走らせれば町には到着するかも知れないが、馬にも疲れが目立ってきている。

 

「一回休憩しよう。」

「そうね、食事にでもしましょうか。ほら、起きて。」

「ん、何?着いたの?」

「ダリル、食事にするぞ。」

「あ、はいはい。」 

 

熱を伝えにくい陶器製の携帯釜を馬車の中に設置し、アリスの道具で火を入れた。


「便利だなぁ…」

「ああ、全くだ。」

 

鍋を火にかけ、中に薄めたラム酒を注ぎ、干し肉と野草を入れて煮詰める。

 

既に干し肉には塩味が着いているので、暫く放置する。

 

「おお…」

「良い匂い…」

 

アリスのナイフでパンをスライスすると、炎を纏ったそれは、パンの表面をこんがりと焼いた。

パンのトッピングにチーズを乗せ、ナイフの熱でとろりとなるまで熱する。

 

鍋も良く煮えたようだ。

ラム酒のクセが野草の香りに打ち消され、そこに肉の旨味が追加されてとても飲みやすく、そして深い味わいのスープとなった。

 

「よし、『ラム酒と野草のスープ』完成だ。」

「ほーっ、相変わらず、クリスは料理が上手いなぁ!」

「ええ、出会ったときから思ってたけど、あなた、料理人の才能があるわ。」


そんな二人の賛辞を背に受けつつ、俺は軽い金属製の器にスープを注ぎ、パンと一緒に渡した。

 

「「いただきまーす!!」」

 

旨いものは正義。

彼らの夜は、どんどんと更けていくのだった。



 

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