40-6.擬態


「たあああああああああああああああ」


 主任が大剣で斬りかかると、フライトラップがびっしりと並んだ牙で受け止めた。

 つばぜり合いの最中、おれがその懐に飛び込む。


 ――ドドドッ!


 その内側から、刺突を浴びせる。

 するとフライトラップがのけ反った。


「主任!」


「でりゃああああああああああああ」


 ――ズバンッ!


 その剣撃によって、フライトラップが真っ二つになる。


「牧野!」


「はい!」


 そのフライトラップにつながれたもふもふが解放される。

 そいつを抱き起こそうとしたとき、地面が盛り上がった。


「危ない!」


「きゃっ!?」


 おれは主任を抱えて飛び退いた。

 するとその場に、再びフライトラップが現れた。


「もう、どれだけ出てくるのよ!」


 ……くそ。


 救出したもふもふは、十体ほど。

 残りは、いま救出し損ねたのも合わせて、あと五、六体といったところか。


 フライトラップが、そのもふもふを根で包むように威嚇してくる。


「…………」


 ……おかしい。

 ふと、違和感を覚えた。


 さっきからこいつ、もふもふを守っている?


 植物型モンスターは、その再生能力が売りだ。

 でも、それには大きな魔力を消費する。

 そうまでして、撒き餌であるもふもふを守ろうとするのか?


 ……なにか、あるな。


 ――探知スキル『トレーサー』発動!


 魔力をこのフロアに反響させ、その構造を探る。

 すると、地面の下に巨大なうごめく影を捉えた。


「主任、こいつらはすべてつながっています!」


「じゃあ、どうすればいいの!?」


「モンスター核を叩くしかありません!」


 でも、だ。


 そのモンスター核が、地面の下に見つからない。


 いったい、どこに――?


 そこでふと、こいつの行動に思い至る。

 再生能力で魔力を消費してまで、撒き餌のもふもふを守ろうとする。


 つまり、こいつのモンスター核は――。


「……このもふもふのどれか、か」

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