40-4.幕を開ける


「ていやああああああああああああ」


 主任が雄叫びを上げて、そのモンスターに斬りかかった。


 それはイモムシのようなタイプだ。

 大きさは、バスケットボールほど。

 虫ではあるが、どこかファンシーな色合いだ。


 こちらの攻撃に対して反応すると、そいつはくるりと丸くなった。


 ばいんっと、主任の攻撃でイモムシが弾かれる。

 そいつはドンッドンッと跳ね回ると、防御態勢を解除する。


 内側の本体には傷一つないようだ。


「なかなかの防御力ですねえ」


「むうー……」


 主任が再び、大剣を構える。


「可愛い顔して、なかなかやるじゃない」


「え。これ可愛いですか?」


「な、なによ、可愛いでしょ!」


 ……うーん。

 主任、もしかして美的感覚が他と違ったりするのかなあ。


 そんなことを考えていると、再び主任が攻撃を繰り出す。


「とおおおおおおおおお!」


 しかし結果は同じ。

 その攻撃は、すべて弾力のある表皮によって防がれてしまった。


「なによこれえ!」


「うーん。物理攻撃の無効化スキルのようにも見えませんけどねえ」


 でも、斬撃が効かないというのは解せないな。


 相性として、虫型モンスターに主任の斬撃はよく効くはずだ。

 それがここまで通じないということは……。


「……単純にレベル差があるのかな」


「でも、そんなに強そうに見えないんだけど……」


「まあ、正直、おれもぜんぜん威圧感とかはないんですよねえ。どうも、ここのモンスターは温厚というか、あまり攻撃的な性格をしていないんでしょう」


 でも、むしろそういうのが厄介だ。

 油断していると、いつ逆鱗に触れるかわからない。


「とにかく、ハント方法がわからないやつには近づかないのが鉄則です。こいつも攻撃してくる気配はありませんし、いまのうちに迂回しましょう」


 未練たらたらな主任を連れて、奥のほうへと向かう。

 モンスターともエンカウントせずに、やがて次のエリアにたどり着いた。


「あ、見て。なんかモンスターが……」


 主任が言いかけて、ふと口ごもる。


「な……っ!」


 おれもまた、その光景に絶句していた。

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