40-3.冒険の始まりだ!


「へえ? これが例の新エリア?」


 おれたちは美雪ちゃんに呼ばれて、『KAWASHIA』へとやってきた。

 そこで見せられたのが、中層あたりにある新しい通路のマップだった。


「どうしてまた?」


「いやさあ、この前、マキ兄が『魔境』で暴れたじゃん? そのせいで、壁の薄いところが割れちゃったらしいんだよねえ」


「うっ」


 まあ、あのモンスターは、直接、地形に変化を与えるからな。

 おれのせいじゃない……よね?


「そ、それで、生態系とかに影響は?」


「いや、そんなにないかなあ。寧々さんが探索したけど、モンスターも弱いやつばっかりだって。こっち側に出てくることもないし。ただ、これまで見たことないタイプのやつもいるから、注意しておけってさ」


「ふうん。いつから公開するの?」


「一応、二週間後に一般向けに解放する予定かな」


「なるほどね」


 おや。

 ということは?


「……おれたち、一番のり?」


「そだねー」


「え、いいの?」


「いいのいいの。お父さんの許可ももらってるからね」


 そうして、おれたちは美雪ちゃんから送り出された。


「いい情報、期待してまーす」


 ……うーん。

 これ、プロへの探索料金を浮かせてるだけじゃないの?



 …………

 ……

 …



 例のエリアへと向かった。


「ははあ。これはまた……」


 その入口を眺めながら、おれは声を上げた。

 通路を塞いでいた一枚岩が砕けて、その向こうに狭い通路が広がっている。


 非常にかび臭く、陰湿な空気が漂っている。


「なんだか冒険って感じがするわね!」


「そうですね」


 当然ながら、主任もわくわくしている。


「もしかしたら、宝箱とかあるかもしれませんよ」


「え、そうなの!?」


「まあ、寧々が見つけていなければ、の話ですけど」


 その点において、おれたちがあいつの上を行くとは思えないけど。


「よーし、やるわよ!」


 まあ、主任はやる気まんまんだから、別にいいか。


 そうして、その新エリアに足を踏み入れた。


 ……おれたちはこのとき、予想もしていなかった。


 これが、『KAWASHIMA』の存続を脅かすほどの大事件に発展しようとは――。

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