21.5-9.結界


 四本めの分かれ道までたどり着くと、おれたちはその分かれ道を睨んだ。


 ここには六本の通路がある。


 ……おかしい。

 本当なら、ここには五本の通路しかないはずだ。


 そこでふと、足元に大きな石の装置が埋まっているのを見つけた。


「……これは」


「ど、どうしたの?」


「結界だ」


 それには大きな魔晶石が埋め込まれている。

 しかし本来は青く光るはずのそれは、真っ白のままだった。


「これ、故障してるじゃん!」


「たぶん、この通路のどれかを封印してたんだろう。それが誤作動を起こして、隠していた通路が出てきたんだ」


 ……これはまずい。


 普通、ダンジョンは一定のレベル帯が存在する。

 しかし稀に、安全なエリアの中に局所的に危険な空間が生まれることがある。


 そういうときに、出入りを禁止するために施されるのが結界。


 軽いものだと、壁の幻影をつくりだして視覚的に塞ぐだけ。

 しかし重いものになると、防壁をつくり出して一切の行き来を封じるものがある。


 これが、そのどちらかはわからない。

 でも、どちらにせよ、結界が使用されるのは相当なことのはずだ。


「あの子はどっちに行ったの!?」


「え、えっと、確か、えっと……」


「思い出して!」


 美雪ちゃんが、びくっと震える。


「そ、そんな怒んないでよ……」


「ご、ごめん。でも、はやくしないと、なにがあるかわからないんだよ」


「う、うん。えっと……」


 美雪ちゃんが、右の二つの通路を指さす。


「確か、このどっちかだよ」


「わかった。じゃあ、こっちを二手に分かれよう。彼女を見つけたら、即、エスケープで」


 そうして、おれたちは洞窟の先へと足を踏み入れた。


 やがて霧を抜けたとき、そこはこれまでとは違った。

 空気が湿り、魔素が重く感じる。


「……当たりか」


 警戒しながら進んでいく。

 すると壁に白い糸が張ってあるのに気づいた。


「蜘蛛の糸か……」


 どうやら、悪い予感は当たりのようだ。

 でも、これはある意味で幸運だった。


 ……この手のモンスターは、獲物をすぐには捕食しない。


 武器を取りに戻るか。

 いや、さすがにそんな余裕は……。


 おれが考えているときだった。


「きゃあああああああああああああああああ」


 眼鏡ちゃんの、つんざくような悲鳴が響き渡った。

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