21.5-8.迷子の迷子の


「くそ、ダメか……」


 三度目のチャレンジ。

 おれたちは、転移装置の前に立っていた。


「三番目の分かれ道までは行けたんだけどねえ」


「もう疲れました……」


 女子大生コンビが音を上げている。


「分かれ道って、いくつだっけ?」


「確か六つかな」


「じゃあ、まだ半分も攻略できていないな」


 時間もだいぶ経った。

 たぶんお昼過ぎくらいか。


「よし、行こう」


「えー。もう疲れたよー」


「わかったよ。戻ったら、おいしいもの食べに行こう」


「よっしゃー! 言質取ったからねー」


 あれ、これハメられた?


 おれたちはとりあえず、左の道を進む。

 濃い霧がおれたちを包み、それが晴れると次の分かれ道にたどり着く。


 ここは三本道だ。

 さっきから試した結果、真ん中の道が正しい。


 そうして同じように、三番めの分かれ道にたどり着いた。


 ここは四本道だ。

 分かれ道のたびに、一本ずつ増えていく。


「さっきはどこだったっけ?」


「確か、右から二つ試した」


「じゃあ、左のどっちからね」


 うーん、と考える。

 いやまあ、考えても意味ないんだけど。


「……二手に分かれたら一発じゃないんですか?」


「まあ、その手もあるけどね」


 間違えば転移装置の場所に戻るのだから、合流は簡単だ。

 モンスターもいないし、悪い手ではない。


「じゃあ、その手で行こうか」


「オッケー。とりあえず、ここは左に行ってみるよ」


 二手に分かれて、先に進む。

 霧を抜けると、転移装置の場所だった。


「……ハズレか」


 ふう、と二人が戻ってくるまで一休みする。

 カーペットを下ろして、例の部分を眺めた。


 この調子じゃ、帰るのは夜になりそうだ。

 できれば、今日のうちに掃除とか買い出しとかしていたかったな。


 ……おれがちゃんとしていれば、こんなことにはならなかったんだけど。


 ダメダメだなあ。

 結局、映画もどれにするか決められなかったし。


 しばらく経ったころ、分かれ道の向こうから美雪ちゃんが戻ってきた。


「ふう。あ、マキ兄。お待たせー」


「どうだった?」


「五本めまで行けたよー」


「え。マジで?」


「うん。四本めのところで二手に分かれたんだけど、わたしが当たりだったらしくてさあ」


「へえ。……あれ?」


 いま、なんて言った?


「四本めで分かれた?」


「うん。どうしたの?」


「いや、あの……」


 おれは、ふと辺りを見回した。

 四本めで分かれたということは、あの眼鏡ちゃんはハズレを引いたことになる。


 でも、戻ってきていない。


「…………」


「…………」


 おれたちは、顔を見合わせる。


「……エスケープを使ったってことは?」


「ど、どうだろうね。そもそも、使い方、わかんないと思う」


 しばらくの静寂――。


「どうして一般人を一人にしたの!?」


「だ、だって、ここモンスターいないじゃん!」


「いや、でも、だって、……ああ! とりあえず、はやく追おう!」


 そう言って、おれたちは道を走りだした。


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