38-7.ポイントの行方


「くそ、やはり手強いな……!」


 チーム【迷宮美食探求会】。

 そのリーダーToshiが出刃包丁を構え、魔力を高めていた。


 狙うは眼前のエピックモンスター。


 これまで長い時間をかけ、三人で体力を削ってきた。

 おそらく、次が最後の一撃。


 その巨体めがけて『飛翔・三枚おろし』を放とうとした瞬間――。


 ――ゴウンッ!


 突然、両者の間に火柱が発生した。

 それはまるで壁のようにエピックを取り囲む。


「な、なんだ、これは……!」


 狼狽えていると、向こうの茂みから人影が現れる。


「おまえは、【どさんこ】の赤髪……?」


「横取りするつもりだ!」


 しかしハナは応えず、無言で手を動かす。

 炎は蛇のように動くと、【美食会】の面々を取り囲んで威嚇した。


「くそ、これじゃあ手が出せない!」


「Toshi! どうするんだ!?」


 そのとき、別の方向からさらに二人が飛び出してきた。


 やはり【どさんこ】の面々だった。

 佐藤がショットガンを構えると、それに源さんがスキルを注入する。


 ――ズドオンッ!


 属性クリティカルが発動した攻撃は、弱ったエピックを一撃で葬る。


「くそ、卑怯だぞ!」


「これ、キルスティールじゃねえのか!?」


 しかし【どさんこ】の面々は、生気のない瞳で、じっとこちらを見るだけだった。


「おい、なんか言えよ!」


「気味が悪いんだけど……」


 すると、ふと彼女らの身体から黒い靄のようなものが抜けていった。


 佐藤が目をぱちくりさせた。

 まるで寝起きのような雰囲気で、ぼんやりと周囲を見回す。


「……あれ?」


「ここ、どこだし?」


「…………」


 と、先ほど葬ったモンスターを見つける。


「あーっ! エピック死んでんじゃん!」


「これ、あなたたちが獲ったんですか!?」


 Toshiが、眉を寄せる。


「それは、あんたたちがやったんだろ……」


「ええ!? なに言ってるんですか!」


 馬鹿にしているのか、と思いつつ腕章の魔晶石に触れる。


「いや、しかし現にポイントが……」


 そしてポイント一覧を見て、目を丸くする。


「……どういうことだ?」



ポイント一覧


 【迷宮美食探求会】――51

 【牧野】――58

 【どさんこ+】――59

 【黒魔術倶楽部】――72

 【ザ・利根!】――285



 そのポイントは、なぜか【利根】にカウントされていたのである。

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