38-4.目指せハーレム王
「え――――い! 鬱陶しい!」
利根復活。
今度はクラブの攻撃の届かない場所でビシッとポーズを決める。
紫苑もさりげなく場所移動しているあたり、熟練度を感じるなあ。
「牧野センパイ! いまこそあなたに宣言しよう! あなたを倒し、おれがナンバー1と認めさせてみせる!」
「いや、そもそもおまえのほうがランク高いだろ」
「そういう話をしてるんじゃなあ――――い!」
ダンダンと地団駄を踏む。
「あなたはいつもそうだ! おれを見下し、決して対等だと認めようとしない!」
「いや、そんなつもりは……」
「うるさい! そういうところを言っているのだ! しかし、その屈辱の日々も今日で終わりだ!」
ビシッと指さしてきた。
「おれはあなたより上だと証明し、麗しのアレックス嬢の目を覚まさせてみせる!」
――シィ――――――――ン
場が静まり返った。
利根が訝しげに眉を寄せる。
「……どうしたのだ!? そこはもっとこう、『させるかあーっ!』という感じになるべきだろう!」
「いや、その……」
姫乃さんを見ると、彼女が微妙な顔で聞いてきた。
「……どういうこと?」
「あー……」
おれはため息をついた。
「あいつ、アレックスのこと好きだったんですよ」
「え、そうなの!?」
「ま、まあ、本人は眼中にないって感じでしたけど」
そのせいで、現役のころはトラブルばっかりだったなあ。
やけに突っかかってくると思ったけど、やっぱりそういうつもりだったのか。
「……あの、利根くん?」
「なんだ!?」
「おれ、アレックスとは関係が終わってるっていうか。ほら、こちらの姫乃さんとつき合ってるって美雪ちゃんが言っただろ?」
「…………」
利根がしばらく沈黙した。
そして、目を剥き出しにする。
「……え!?」
マジかこいつ。
「い、いや、それは確かに聞いたが……」
「じゃあ、どうしてアレックスとつき合ってるとか思ってたんだよ」
「まさか、日本はまだ一夫多妻制を導入していないのか!?」
当たり前だろが。
さすがのトワも辟易しているようだった。
「もしかして、こやつアホなのか?」
「まあ、ひとより純粋というか、なんというか……」
向こうで紫苑が恥ずかしそうに顔を手で覆っている。
まあ、気持ちはよくわかるよ。
こちらの会話を聞かずに、利根は勝手に嘆いていた。
「まあ、いい! アレックス嬢はこのトーナメントが終わったら迎えに参上するとして、おれにはまだすることがある!」
「なんだ?」
「あなただ!」
そう言って、なぜか姫乃さんを指さす。
「……わたし?」
「あなたもまた、牧野センパイの毒牙にかかった哀れな姫君のひとり! おれが彼を倒し、目を覚まさせてあげよう!」
「いえ、間に合ってますので」
「こ、このおれの魅力が通じないだと!? ますます手に入れたい!」
「…………」
姫乃さんが軽く恐怖のまなざしを向けている。
「いや、利根。おまえ、アレックスのこと好きなんだろ?」
「問題ない! おれはすでに国籍をサウジアラビアに移しているからな!」
「……清々しいほどのくそ野郎じゃのう」
まあ、このまま言い合ってもしょうがないしな。
「それで、どうやったらおまえは満足するんだ?」
「そうだなあ。ここでエピックを奪い合うのもいいが、それでは芸がない。なにより、他の邪魔が入っては意味がない」
利根が「ふうむ……」と考えていると、ふとその背後に大きな影が。
「あ、利根……」
ウォーター・クラブが、しつこく利根を狙ってハサミを振り下ろした。
なにをしたらこんな狙われるんだよ……。
同時に、利根が閃いたように手を叩く。
「ふむ。これにしよう」
――ズバアアアアアアアンッ!
一刀両断。
分厚い装甲を持つウォーター・クラブが、真っ二つに切り裂かれた。
紫苑が大剣をくるくる回しながら、その巨体の上を飛び跳ねる。
クラブの体内から吐き出されたモンスター核をキャッチし、利根に投げた。
「へい、リーダーッ!」
それを受け取ると、利根がにやりと笑う。
「――これを、おれから奪ってみせるがいい」
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