38-3.それ面白いと思ってんの?


「ね、ねえ。祐介くん、助けなくていいの?」


 利根が飛ばされたほうを見ながら、姫乃さんが狼狽えている。


「あー、まあ、利根ですからねえ……」


「ど、どういうこと?」


「いや、あいつは……」


 ふと、それよりも気になるものを見つけた。


「……ハア」


 どんよーり。


 なぜか紫苑が体育座りをして、湖のほとりでため息をついている。

 いつもキャイキャイ騒いでる印象だったけど、怪我でもしてるのかな。

 でも利根がいる以上、それはないような……。


「おい、大丈夫か?」


 すると彼女は、ちらりとこちらを一瞥する。


「あ、いえ。わたしひとりになると、基本こんな感じなんでお気になさらずに……」


「え、そうなの?」


「はあ。まあ、いつもは牡丹とリーダーに合わせてテンション高めなんですけどー……」


「……なんで?」


「利根さんのパーティあれなんすよねー。空気読めないやつシネシネって感じなんでー。うちらやっぱ生意気であんまり他のパーティから好かれてないし、実は利根さんとこから捨てられたらやってけないっていうかー……」


「で、でもきみの実力なら、ソロでもやってけるんじゃ……」


 ぐっと涙ぐむ。


「ひとりだと寂しくて死んじゃう……」


「……そ、そう。大変だね」


 うーん。

 世界トップパーティも大変だなあ。


 と、そのときだった。


「ハア――――ッハッハッハ! 牧野センパイ、奇襲とは姑息な手を使ってくれたなあ――――っ!」


「うわびっくりした!」


 茂みから利根が飛び出してきた。

 さっき立ってた場所までやってくると、ビシッとポーズを決める。


「しかあ――――し! この利根を倒すには、少々力不足のようだな!」


 すると一瞬で、紫苑もシュバッとポーズを決める。


「来たね、牧野さん! ここのエピックモンスターは渡さないよ!!」


 うっわー。

 なにこの変わり身の早さ。


 おれが感心していると、ふと利根の背後に大きな影が。


「あ、利根……」


「む?」


 ウォーター・クラブが、左のハサミを振り上げた。


 ガツーンッ!


「ぐはあああああああああああっ!」


 そうして、利根は森の中へ。


「…………」


 おれたちはその方向を見ながら、呆然とする。


「利根えええええええええええええええええええ」


「リーダアアアアアアアアアアアアアアアアアア」


 姫乃さんが呆れながらつぶやいた。


「……これ、まだやるの?」


 ……うん、まあ、次からちゃんと進むんで。

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