38-2.利根えええええええ


ポイント一覧

 

 【迷宮美食探求会】――39

 【牧野】――31

 【どさんこ+】――59

 【黒魔術倶楽部】――63

 【ザ・利根!】――175



 牡丹に気を取られている隙に、ポイントに大きな変動が起こっている。

 エピックを仕留めた【利根】が一位なのは当然だけど、気になるのは【どさんこ】の失速だ。

 まさか【黒魔術】にも抜かれるなんて、なにかあったのだろうか。


「それより祐介くん! どこに向かってるの!?」


「このフロアで一番の大物のところです!」


 利根がエピックの一体を獲得した以上、ゆっくりしていられない。

 ここは予選と同じように、競争率の低いものを狙っていく。


「でも、最後のエピックを放っておいていいの?」


「利根のチームは、すでに牡丹が離脱しています。人数差がある以上、他のチームの妨害をかわしながら二体目を狩るのは難しいでしょう」


 だからこそ、こっちのエピックは避けるはずだ。


「……なあーんか、フラグっぽいのう」


 おいトワ、余計なこと言うんじゃないよ。


 と、そうこうしている間に、エピックの生息するフロアにたどり着いた。


 ここにいるのは『ウォーター・クラブ』。

 水属性を持つ、大型の甲殻類型モンスターだ。


 森を抜けると、やつの生息する湖が見える。


「見えました!」


 と、その前に立つ影を見て、慌てて足を止めた。


「……くそ!」


「どうしたの!?」


 うしろから走ってきた姫乃さんたちが、慌てて止まる。

 目の前の状況を見て、目を丸くした。


「おんやあー? 牧野センパイじゃないか。奇遇だなあー?」


 憎らしい口調で言うのは、もちろん利根だった。

 まるで待ち構えるように、湖の前に立っている。


「……トワ」


「わ、わしのせいじゃないじゃろ!」


「いや、でもさあ……」


 こちらのリアクションに満足したのか、利根が高笑いする。


「ハアーッハッハッハ! どれだけおれがあなたを研究していたか、わかっていないようだなあ! あなたの作戦など、この美しい湖よりも透けて見えるぞ!」


「あぁ、うん。そうだな」


 どっちにしろ、いずれ正面からの対決は免れないか。


 ……あれ?


「あ、利根」


「なんだあ? 命乞いなら、地面に額をこすりつけながら、この靴を舐め……」


「いや、おまえ、うしろ……」


「え?」


 利根が振り返った。


 ――ザバアーンッ!


 そこには、巨大なカニのようなモンスターがいた。

 エピックモンスター『ウォーター・クラブ』だ。


『グオオオオオオオオオオオオン』


 そいつが右のハサミを振り上げると、そのままブンッとフルスイングする。


 ドカァンッ!


「ぐはあああああああっ!?」


 利根がそれに弾かれて、ぴょーんと森の中に突っ込んでいった。


「…………」


 一瞬の静寂――。


「利根えええええええええええええええええええええ」


 姫乃さんが、口元を引くつかせながらつぶやいた。


「え、これどうなるの?」


 ……どうなるんでしょうねえ。

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